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買収劇が止まない半導体産業

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半導体メーカーの企業買収提案が今年は多い。9月に入ってもまた一つ提案があった。英国のDialog Semiconductorが米国のマイコンメーカーAtmelに買収提案を仕掛けた。Dialogは2013年にパワーマネジメントICの米iWattを傘下に収めており、事業を拡大している。9月25日に発表されたIC Insightsの調査を元に今年の買収案件をまとめた。

表1 2015年9月までの半導体企業の買収の動き
表1 2015年9月までの半導体企業の買収の動き 出典:IC Insightsの発表をベースにセミコンポータルが加筆


9月25日現在の主な半導体メーカーのM&Aを表1にまとめている。このほか世界トップのOSAT(半導体後工程の製造請負サービス業者)である台湾のASEが同業第2位のSPILに対して敵対的買収提案を仕掛け、鴻海精密工業も乗り出し、三つ巴の様相を示していたが、先週SPILの株式の25%をASEが手に入れたことを発表した。

IC Insightsによると、今年前半の企業買収に合意した提携総額は726億ドルに達した。これは過去5年間における年間の平均買収総額の6倍にも達するとしている。表1には買収金額が1億ドルに満たないようなM&Aは含んでいない。例えば、ロームがアイルランドのデジタル電源ICメーカーPowervationを7月に7000万ドルで買収し、QualcommがIkanosを4700万ドルで買収する計画だが、いずれも1億ドル未満と小さい。

さらに、昨年買収を提案し、今年買収完了した事例を列挙してみると、次のようになる;
1. 2015年はじめにRF Micro DevicesとTriQuint Semiconductorが合併しQorvo社となった
2. 2015年8月にQualcommの英CSR社買収が完了した。CSR部門はQualcomm Technologies Internationalと名前を変えた。買収金額は24億ドル。
3. 3月にCypressのSpansion買収が完了した。株式による買収総額は50億ドル。
4. 1月にInfineon Technologiesが同じくパワー半導体のInternational Rectifierを30億ドルで買収を完了した
5. IBMがMicroelectronics事業を7月にGlobalFoundriesへ300mmおよび200mmウェーハファブの移転を完了した

今年は、やはり買収が活発になっている年といえそうだ。その背景には、二つの理由があるだろう。一つは、製品開発コストや先端技術開発コストの増大がある。経営基盤をしっかりとさせ、投資に向けていくための買収である。もう一つは、これからIoT(Internet of Things)の市場が広がっていくことに対して、その市場に向けた半導体を開発するために抜けている分野を補強するためでもある。例えば、IntelのAltera買収は、ソフトウエアによる差別化はCPUで可能だが、ハードウエアによる差別化にはFPGAが欠かせない。Intelが狙うIoT市場は、当初ゲートウェイから上のレイヤー(サーバーやストレージなどクラウド系)と見ていたが、最近ではSPIフォーラム(参考資料1)で話があったようにIoT端末側でエッジコンピューティングが望まれるようになってきており、高速ハードウエアによる差別化市場が増大してくる。

また、表1における特徴的な動きは、中国の政府系ファンドの買収が活発になってきていることだ。中国は、かつて地場の半導体産業の育成に失敗しており、半導体に再び力を入れてきた。今度は、2兆円強を投資できる政府系投資会社を作り、買収によって半導体企業を手に入れようとしている。中国には地場の半導体メーカーで世界的に太刀打ちできるところがSMICくらいしか存在しないため、育てるのではなく買収で半導体を強くしようとしている。

ただ、既存の半導体メーカー同士の買収合併は産業が成熟してきたことの裏返しでもある。一方で、ファブレスあるいはIPベンダーとしてユニークな技術を売りにする新しい半導体ベンチャーの設立は相変わらず衰えていない。

参考資料
1. SPIフォーラム「IoT時代の半導体」、パネルディスカッション「IoT実現に必要なモノやサービスとは?」

(2015/09/28)

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