セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

IBMが30億ドル投資する計画第1弾のニューロチップが開発される

|

IBMが今後5年間に渡り30億ドルを投資するというニュースの背景を7月14日のこの「週間ニュース分析」(参考資料1)で伝えたが、その第1弾として研究開発フェーズの新型チップとして、人の脳をまねたチップをIBMが開発したというニュースが8月8日の日本経済新聞に掲載された。現実のフェーズでは、車載半導体の動きも活発である。

IBMのニュースは、100万個のプログラム可能なニューロンと、2億5600万個のプログラム可能なシナプスを備えた、最初のニューロシナプティックコンピュータICが開発されたというモノ。今後5年間に30億ドルを次世代半導体プロジェクトに投資するという計画を7月にIBMが明らかにしたが、そのプロジェクトでは100億個のニューロンと100兆個のシナプスを集積したチップを目標としている。今回のチップはこの目標に向けた第1弾のICになる。

開発されたニューロシナプティックチップは54億トランジスタを集積しており、全体の消費電力がわずか70mWだとしている。計算速度は1W当たり1秒間に460億シナプティック演算を行うとしている。この演算は、物体認識や超並列演算などに必要な非ノイマン型のアーキテクチャで動作する。公共の安全性や盲目患者のための視覚支援、住宅の保守点検、交通輸送などに利用されるとしている。

新しい非ノイマン型アーキテクチャは、ニューロシナプティックなコアのネットワークからなり、分散されたコアが超並列で動作する。コア内はクロックレスのイベントドリブン方式で動作する。一つのコアにはメモリと演算器、通信回路を持つ。コアが1個たとえ間違った結果を出しても、脳のようにアーキテクチャ全体の機能は崩れない、フォールトトレラントなシステムである。1チップに集積されたコアは、チップ内のイベントドリブンネットワークを通じて互いに通信する。チップ間の通信もインターフェースを通じて、大脳皮質のようにスケーラブルな脳神経形態のようなシステムを作り出す。

このスケーラビリティを実証するため、IBMは16チップをつなぎ、1600万個のプログラム可能なニューロンと40億個のプログラム可能なシナプスを試作した。チップはSamsungのファウンドリサービスを通じて、28nmプロセスで製造された。消費電力は、このプロセスと、同期-非同期ハイブリッド設計を用いることで、最新のマイクロプロセッサより4桁も小さい20mW/cm2を得ている。チップ全体の消費電力から、切手大のチップであることがわかる。

IBMは、従来のノイマン型コンピュータが言語や解析的な思考を行う左脳と、今回のニューロシナプティックなチップは感覚やパターン認識などを担う右脳、と考え、今後、両者を組み合わせることで総合的なコンピューティング知能になりうると期待している。

車載半導体の動きも活発化している。デンソーは東京品川に開発センターを設置したと6日発表した。7日の日経産業新聞によると、設立当初10名から始め、1年後に30名、2020年度には100人体制に拡充する計画だと報じている。高周波センサとその信号処理回路ICの開発を手掛ける。

応用指向に戦略を変えてきたルネサスエレクトロニクスは2014年度第1四半期(4月〜6月)の業績を発表、クルマ用半導体が堅調で、6四半期連続で営業黒字(269億円)を達成した。売上高は、前年同期比5%増の2092億円。半導体部門の売り上げ2012億円の内、自動車用は同10%増の798億円と自動車用半導体が同社の業績全体をけん引している。

住友ベークライトは、車載用モジュールを従来のアルミに代わりプラスチック樹脂を用いて封止し、車体の軽量化に役立てようとする計画を推進している。6日の日刊工業新聞は、同社が樹脂封止剤の供給を始めたと伝えた。センサやECUなどのモジュールに適用する。まずはセンサモジュールから始め、2015年度からECUにも広げていくと報じている。プラスチックモールド化により、体積、重量とも3割以下に減るとしている

参考資料
1. IBMが30億ドルを投資する背景は何か (2014/07/14)

(2014/08/11)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.