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燃料電池車で新たなカーエレクトロニクスの機会増える

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3月26日の日本経済新聞は、ホンダとトヨタがそれぞれ燃料電池自動車(FCV)を1000万円以下の価格で2015年に発売すると報じた。最近、電気自動車は航続距離の短さからやや人気が低下している。FCVは電池というよりも発電機の機能を持つため、水素の充填が必要になる。

現在1台1億円以上もすると言われるFCVだが、年間1000台規模で生産すれば1000万円以下の価格で販売できるという訳だ。FCVは航続距離の点で電気自動車よりも勝っている。トヨタの例では1回の水素充填で830km走るという(参考資料1)。現在、商用の電気自動車では、1回の充電で航続距離は250〜300km程度にとどまっている。試作レベルでは400kmのクルマが発表されている。電気自動車で出遅れたトヨタ自動車と本田技研工業(ホンダ)はFCVでの巻き返しを図る。もちろん、日産自動車もFCVを開発しており、燃料電池システムの低コスト化を進めている(参考資料2)。

26日の日経によると、ホンダは2015年中の発売を目指し、5人乗りセダン型FCVの開発を進めるという。1回の水素の充填で航続距離500kmを得ている。5年間で5000台を生産し、順次欧米に輸出していく。ホンダは米GM(ゼネラルモーターズ)と燃料電池システムの共同開発で13年に提携し、20年に低コストのシステムを実用化する考えだという。トヨタは年1000台の生産体制を築き、2020年には年数万台の規模に増やすとしている。

燃料電池車ではガソリンスタンドに代わる、水素スタンドを全国に設置する必要がある。岩谷産業やJX日鉱日石エネルギーは今夏以降、水素スタンドの整備に本格的に着手すると日経は報じている。JXエネは主にガソリンスタンドに併設する形で整備するとしており、関東を中心に2015年までに40カ所開くとする。

FCVは、基本的に発電機であるから、モータで車輪を回す。このため電気自動車と同じ電動系をFCVにも使う、と日産は言う。電気自動車では、モータのトルクを上げ、細い配線で重量を少しでも軽くするため、高電圧が必要である。電気自動車では3.5V程度のLiイオンセルを直列接続して90〜100個程度使うが、FCVでは0.7Vのセルをやはり300〜400枚スタックして同様な電圧を発生するため、パワー半導体の耐圧には600V程度が求められる。現在のシリコンのIGBTでもこの程度の耐圧は得られるが、電流容量と高速スイッチング(DC-DCコンバータの周波数を上げると、インダクタやキャパシタを小さくできる)をさらに改善するという点で、SiCへの期待も大きい(参考資料2)。

燃料電池車のコストを決める重要な部品の一つに、触媒となる白金材料がある。白金は元々高価なので、出来るだけ減らしたい。九州大学のチームは、表面積の大きなカーボンナノチューブ(CNT)の表面に白金微粒子を付着させる技術を開発したと25日の日刊工業新聞が伝えた。白金微粒子の粒径を小さくしたり、微粒子間の距離を調整したりすることで、質量活性は従来よりも8倍上がったとしている。

3月24日にはルネサスエレクトロニクスは、自動車向けのエンジン制御やトランスミッション制御向けのマイコンとパワーマネジメント(PM)ICを製品化したと発表した。このIC製品は、燃料電池車用ではないが、従来のガソリンエンジン車の排ガスを減らすための、より細かい制御が必要なパワートレイン機器(ECU)に向けている。これによりプログラム行数が増えるため、内蔵のフラッシュメモリ容量を最大4Mバイトとし、さらに動作周波数も320MHzと高めている。そのために40nmプロセスを利用している。

自動車向けには半導体だけではなく、電池やモータなどの開発も重要になる。パナソニックは車載事業に力を入れていく方針だが、18年度には13年度に対して82%増に伸ばす、と28日の日刊工業は伝えている。住宅事業での伸びは同54%増と見ており、車載事業に最も大きな成長を期待している。


参考資料
1. 燃料電池車、トヨタホームページ
2. 飯山明裕「燃料電池自動車からみたE-PowerTrainへの期待」、第1回グリーンイノベーションシンポジウム(2014/02/26)

(2014/03/31)

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