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パワー半導体の材料からデバイスまでのニュースが多い先週

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先週は、パワー半導体関係の記事が多かったように見受けられた。パワー半導体は日本の得意とする分野の一つであるため、もっと伸ばしていくべきだろう。一方で国内半導体メーカーが再構築に向けて苦労している中、米グローバルファウンドリーズが日本の半導体工場を物色しているというニュースも伝えられた。

1月20日の日経産業新聞は、市場調査会社の矢野経済研究所が2013年~2017年のパワー半導体の成長率を10%と見込んでいる、と報じた。2011年は前年比10.4%増の156億7000万ドル、12年は2.2%増の160億2000万ドルになると見積もっている。今年は、欧州不安による景気後退、太陽光発電の投資抑制などで成長率はやや鈍化すると見ている。2017年には261億2000万ドルに成長するとしている。

富士通セミコンダクターがパワー半導体に参入し2013年4月から福島県の工場でGaNパワー半導体を量産すると、18日の日本経済新聞が報じた。富士通の半導体部門は、かつてRET(リングエミッタトランジスタ)と名付けたバイポーラのパワートランジスタを量産していた。今回の参入は正確には再参入ということになる。15年度までに100億円の売り上げを目指す。GaNデバイスは富士通研究所で開発されていた。このパワートランジスタは富士通研がかつて開発したHEMT構造をしており、ノーマリオン型である。空乏層を調整してノーマリオン型にすると電流があまり採れず、パワー半導体には向かなくなる。しかし、近年、ドイツのインフィニオンがHEMTと同様、ノーマリオン型のJFETでもカスコード接続という回路的な工夫により、初期化するとノーマリオフ型トランジスタと同様に使えることを明らかにしており(参考資料12)、ノーマリオン型であってももはや欠点とはならない。

パワー半導体を実装する材料を開発する動きもある。日立化成工業はエポキシ樹脂にBNを混ぜた絶縁シートを開発した、と18日の日経産業新聞が伝えた。絶縁シートは、ドレイン(あるいはコレクタ)がパワートランジスタの金属製パッケージを兼ねるため、放熱フィンとは絶縁して設置する必要がある。昔はマイカ、最近は熱伝導率の高いセラミックを使っていた。一般材料では熱伝導率が良いものは電気伝導も良い(絶縁性が悪い)ため、熱伝導性が良く電気伝導性の悪い材料を作り出すことが難しかった。しかしパワートランジスタを放熱フィンに実装するのには電気を通さず熱だけ通す材料が望まれてきた。日立化成の開発した材料の熱伝導性は40W/Kmと従来同社製製品の4倍優れているとしている。セラミックよりも低価格にできる可能性がある。

日本触媒はガラス転移点が250℃と高い熱硬化性樹脂を開発、SiCやGaNなど高温に耐える半導体の封止材としての用途を狙う。これは19日の日刊工業新聞が伝えたもの。樹脂の有機成分に、無機のナノ粒子を混ぜることで転移温度を高めたとしている。

パワー半導体材料として第3の材料であるGaOを使う研究についての記事が19日の日経産業に掲載されている。ただし、新聞にはGaOパワー半導体の特性については全く触れられていないため、トランジスタとしての性能は未知数である。

最後に、米グローバルファウンドリーズ(GF)がルネサスエレクトロニクスと東芝の工場買収を打診していると、23日の日刊工業が伝えた。ルネサスの鶴岡工場と東芝の大分工場がその対象だとしている。この情報は、業界メディアの一部は知っており、買収が成功するまでは密かに見ていた。しかし今回、日刊工業が検討段階で明らかにしたことは勇み足ではないだろうか。半導体関係のメディアがこの情報を持っていて表面に出さなかったのは、何とかうまくいってほしいと願っていたからだ。

日本のプロセスエンジニアは優秀だが、各半導体メーカーのファブライト戦略により開発のモチベーションが下がっており、企業としても活力をそいだ形になっていた。彼らを活用することは彼らのモチベーションが上がり、GFとしては良い買い物になる。というのは、日本以外の国で優秀なプロセスエンジニアを大量に探すことはほとんど困難だからだ。プロセスエンジニアにとっても、プロセス開発の仕事が続けられる良いチャンスなのである。GFが工場を買収し、エンジニアはプロセス開発を続けられることを願う。

最後にエルピーダが苦しんでいることについてあまり触れたくはないが、いよいよマイクロンまで巻き込まざるを得ないことが報じられている。マイクロンの技術はエルピーダとは相いれないくらい異なるものだ。それまでして産業再編するのはなぜだろうか。今一つ未来が見えない。

参考資料
1. 最初の商品SiC JFETを使ったEasy1Bパワーモジュール−前編 82011/08/18)
2. 最初の商品SiC JFETを使ったEasy1Bパワーモジュール−後編 (2011/0819)

(2012/01/23)

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