セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

フラッシュメモリの新市場に向け、システムを考慮し標準化を推進する東芝

|

先週、システムLSIを推進するメーカーにとって絶対に見逃すことのできないニュースが一つあった。それはシステムLSIメーカーがシステムを理解し、そのシステムを顧客が構築していく中で、システム作りにどう貢献できるかを考える、とてもよい教材となる出来事だったからだ。日経新聞などでは取り扱いは非常に小さかった。

それは、6月22日に東芝がプレスリリースで、Wi-Fi(無線LAN)機能を内蔵したSDカードの普及を狙うための団体「無線LAN内蔵フラッシュメモリカード協同企画策定フォーラム」を立ち上げたことだ。フラッシュメモリ単体やフラッシュカードなどを東芝は手掛けてきたが、さらにフラッシュメモリをたくさん使ってもらうための仕組みとして、無線LAN内蔵のフラッシュカードを普及促進するための団体を、シンガポールのトレック2000インターナショナル社と共に29日に設立する。

フラッシュメモリの応用先をメモリメーカー自ら広げるために働きかけたこの活動は高く評価できる。それは、1)フラッシュのシステムを理解していることから始めていること、2)標準化するために外国企業と手を組んで始めたこと、3)市場の拡がりを読んでいること、などである。

この仕組みを東芝のセミコンダクター社が仕掛けたのであれば、システム指向に向かう素晴らしいアイデアだと思うが、セミコンダクター社でなければごく当然で、さほどのことではない。ただ、こういったアイデアが日本の半導体メーカー、システムLSIメーカーから出てくれば決して「日本敗戦」にはならない。フラッシュメモリを使うさまざまなシステムを理解した上でさらに成長させるための、広い意味でのユーザーインターフェースやサブシステムこそがフラッシュメモリをさらに伸ばしていく方法となる。

2)のシンガポールの企業と手を組み標準化を進めていくことは、日本側のネットワークに加え、シンガポール側のグローバルネットワークを活用できるというメリットがある。シンガポールのような都市国家は、パートナー=海外企業、と考えるのは当たり前で、彼らは米国だけではなく欧州とのネットワークも極めて強い。従業員数90名で63億円(2009年)を売り上げたこの企業と組むことはベンチャー精神、グローバル精神の習得にはとてもプラスになる。

3)市場の拡がりとして、Wi-FiはiPhoneやiPadのおかげでサービススポットがかなり広がってきている。通信料金の高い3GやHSPAネットワークを使うのではなく、無料に近いWi-Fiを使って写真や重いビデオ、音声などの重いデータをWi-Fi内蔵の携帯電話やスマートフォン、PC、ネットブックなどに送ることができる。一般消費者にとっては極めてインパクトが大きい。

東芝のニュースリリースによると、Wi-Fi内蔵のSDカードはデジタルカメラなどで使用可能です、と書いているが、本命はデジカメではない。ケータイやスマートフォン、デジタルフォトフレームなどだ。持ち運べるカメラ付きのケータイ、スマートフォンなどは写した映像を3Gなどで送るのには重すぎる上、ネットワークでの負担が大きすぎる。携帯ではSIMカードとして内蔵する方向に持っていけば誰でも使いやすくなり、知らぬ間に大ヒットするだろう。

6月22日には、もう一つ「ベンチャー投資が4割減」というニュースは、やはりそうか、と思った。2009年度における日本のベンチャーキャピタルは世界不況の影響で、起業段階にはほとんど出資しなくなった、と聞いていたからだ。ある程度ベンチャーが軌道に乗ると出資するというローリスクの方向に向かった。残念ながら、将来成長する起業に投資しなくなると、企業もさることながらVCだってシュリンクしていく。「危機はチャンス」とVCや大手の経営者は口にしてきたが、口だけだった。実行した所は残念ながら私は知らない。

(2010/06/28)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.