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WSTSの半導体市場予測から見えてくるロジックの減少と組み込み系の上昇傾向

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WSTS(世界半導体市場統計)が2010年、2011年の半導体市場の伸びをそれぞれ12.2%増、9.3%増と予測した。2009年は11.5%減だと見積もっている。今年のマイナス成長は特に日本と欧州の落ち込みが大きく、それぞれ21.2%減、24.2%減と見積もっている。今回の不況を脱出すると半導体市場は元の成長曲線に乗ると予測する。

WSTSが発表した2010年、2011年の予測

WSTSが発表した2010年、2011年の予測


2009年に関しては、米国が最も軽く1.4%減にとどまるが、2008年に10.5%減と大きく後退した。米国の回復が早く、2009年の落ち込みは地域別では米国がもっとも軽微だ。この予測は、11月3〜6日間、世界の半導体主要メーカー24社から30名参加したWSTSの会議において議論され結論付けられたもの。

2010年、2011年の10%前後の伸びを牽引する応用は、企業向けパソコンである。ここ数年のパソコンは個人用途が引っ張ってきたが、企業のパソコンなどのコンピュータシステムがいよいよ買い替え期を迎える。このための需要を見込んでいる。パソコンのOSが最近マイクロソフトからリリースされたWindows 7が搭載されるための需要ではないとみている。これまでも実はOSによってパソコンの買い替え需要が高まったことはないからだ。

2007年にリリースされたWindows Vistaの評判はすこぶる悪かった。「ユーザーの使い勝手を無視した」といわれたこのOSの影響が表れたせいか、Windows 7がリリースされても大きな反響はなかった。Windows 95以来、おそらく初めての小さな反響だろう。

企業向けパソコンの買い替えサイクルは実は2010年ではない。元々2007~2008年だといわれていた。ところが今回は世界同時不況の影響でIT投資を企業が抑えたため、その買い替え時期がずれ込んだのである。

半導体需要を製品別に見てみると、2010年にMOSメモリーが18.6%増、マイクロプロセッサやマイコンなどのMOSマイクロが15.9%増、であり、アナログは11.4%増であるのに対して、ロジックは4.4%増しかない。この傾向は2011年になってもMOSメモリーの12.1%増、MOSマイクロの9.2%増に対して、ロジックはもっとも低い7.3%増しか伸びを示さない。アナログでさえ、8.1%増の伸びを示すと予想されている。


製品別の市場予測
製品別の市場予測


ロジックの伸びが小さく、MOSマイクロの伸びが大きいということは何を意味するのだろうか。WSTSが統計をとっているロジックには専用ロジックと標準ロジックとがある。その比率は3:1だという。このうち標準ロジックの伸びはもはや期待できないとし、専用ロジックはここ数年、強い伸びを示してきたとしている。ただし、スタンダードセルは伸びが弱いという。今後となると、専用ロジックのうち、無線通信向けチップの勢いが弱く、回復は次世代携帯ネットワークが普及し始める2011年ごろになろうとみている。

しかし、大きなトレンドとしてASICやASSPの設計件数が毎年減少しているという事実、半導体チップに焼き付けるソフトウエアの行数が長くなっているという傾向、さらにはセットの回路の一部がコンピュータ機能へとシフトしているというWSTS協議会の見方、などを総合すると、ハードウエア回路から組み込み系回路へとシフトしているといえよう。ASICに代表されるハードウエア回路は性能こそ高いものの、変更するには全面的に設計し直さなければならない。組み込み系はソフトウエアを書き換えるだけですむため、開発期間の短縮にはもってこいだ。

MOSメモリーは2009年にはNANDフラッシュが回復を推進するとみている。「実績ベースでフラッシュはプラス成長かもしれない」とWSTSの委員は述べる。2010年はパソコンの買い替え時期と併せてフラッシュとDRAMが一緒に伸びるが、2011〜2012年はNANDの方が伸びは大きくなるとしている。DRAMは32ビットのアドレス限界があるため高集積化はもはやあまり期待できない。

(2009/11/20)

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