セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

ルネサス、閉鎖中の工場建物を再利用、300mm生産ライン構築へ

|

ルネサスエレクトロニクスは、山梨県甲府にある空っぽの建屋を改造し300mmウェーハの生産ラインを作ることを発表した。元々甲府工場は150mmと200mmウェーハの生産ラインの工場であったが、工場の売却先が見つからず、2014年10月に閉鎖された。半導体不足がまだ解消されないこの折、ここに半導体生産ラインを作ることを決めた。

図1 ルネサスの甲府工場 出典:ルネサスエレクトロニクス

図1 ルネサスの甲府工場 出典:ルネサスエレクトロニクス


旧150mmの工場はすでに更地になっており、200mm工場の建屋だけが残っていた。今回残された工場(図1)に300mmウェーハの設備が入れられるかどうかを検討してみたところ、搬入・設置できることがわかった。もちろん、使われてない工場の建屋なので、クリーンルーム、水や電気、ガス、薬品などの施設を一から作り直さなければならないが、幸い土地はルネサスの所有であるから、ここに300mmウェーハラインを作ることはできる。むしろ200mmライン向け製造装置は入手困難で中古でも取り合いになっている。

新工場で生産するのは、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やパワーMOSFETなどのパワー半導体。日本で300mmウェーハのパワー半導体生産ラインの設置を正式に発表しているのは、東芝の加賀工場(加賀東芝エレクトロニクス)だけで、今年の2月に発表し2024年度内の稼働開始を予定している。加賀工場は200mmウェーハラインを稼働させているが、同じ敷地内に300mmライン工場を設立する計画だ。ルネサスの300mmラインはこれに次ぐもの。

パワー半導体も経済産業省の補助金対象となる製品分野に採り上げられている。ルネサスは古い甲府工場を再生させるために900億円程度を投資し、経済産業省とも緊密に連携し、2022年中に実施する予定である。クリーンルームの面積は1万8000平方メートル。

海外のパワー半導体メーカーとして、ドイツInfineon Technologiesや米ON Semiconductor、スイスSTMicroelectronics、オランダNXP Semiconductorなど欧州勢が強いが、全て半導体専業メーカーであるのに対して、日本のパワー半導体メーカーはほとんどが親会社の電力部門に製品を収めるキャプティブマーケットだ。外販が少ないため、200mmラインで十分だった。ルネサスとロームだけが半導体専業メーカーだけである。

これまでパワー半導体は工業用、産業用が多く、クルマ用といえども制御系に使われるだけで年率4〜5%成長に留まっていた。それでも期待は大きく、市場調査会社はパワー半導体の予想を毎年下方修正していた。しかし、クルマが今後EV/HEV、燃料電池車などモーター駆動やオンボードチャージャー、DC-DCコンバータ、バッテリ管理システムなどパワー半導体が新たに使われる回路(ECU)が多い。工場でも多関節ロボットが活躍するようになると共に工場でのモーターなどの精密な制御が求められる時代に入りつつあり、やはりここでもパワー半導体が欠かせなくなる。

ルネサスは半導体専業メーカーだが、パワー半導体、入力ゲートを駆動するドライバIC、ドライバに指令を出すマイコンなど、パワー半導体を駆動するためのチップセットソリューションとして製品ポートフォリオを持っている。これがルネサスの強みとなる。そして米国シリコンバレーの経営陣たちと共に世界市場に製品を売れる体制を持っている。

甲府工場への投資は今の所、建屋の再利用だが、更地も多い。このため、さらにパワー半導体生産への投資を増やして増強する場合でも、拡張は容易になりそうだ。

(2022/05/19)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.