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PTCのARを駆使、検査やモノづくりの伝承に活かす

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移動制限がなされるコロナ禍で、遠く離れた海外工場や取引先との現場での対応にAR(拡張現実)が使われる事例が増えそうだ。ARは工場内にある装置の実測値やデータを装置の動画の上に表示させたり、工場と研究所との間で実物のつまみやバルブ、操作パネルなどを見ながら会議したりすることもできる。こういったARツールをソフトウエアベンダーのPTCが積極的に展開している。

図1 PTCの最新のARツールVuforia Instruct製品 このイメージでは8個のガスケットカバー用のボルトの閉まり具合を確認せよ、という指令と共に8個のボルトをオレンジ色で示している 出典:PTC

図1 PTCの最新のARツールVuforia Instruct製品 このイメージでは8個のガスケットカバー用のボルトの閉まり具合を確認せよ、という指令と共に8個のボルトをオレンジ色で示している 出典:PTC


3次元CADやPLM(Product Lifecycle Management)ソフトに強いPTC社がIoTのデータ収集・管理・保存・解析・可視化までをやってくれるプラットフォームソフトウエアThingWorxを買収によって手に入れてから、AR(Augmented Realty)に力を入れている。当初、ThingWorxのソフトウエアの一部としてAR表示できる機能を搭載していたが、ARの作成やインストラクターとして社内外の研修などの用途に応じたARソフトウエアVuforiaシリーズを充実させてきた(図1)。

当初のAR用ソフトはスマートフォンやタブレットなどにインストールし、工場内の機器に張ってあるQRコードを読み込ませれば、機器でのデータをARグラフィックとして可視化できた。例えば、ポンプの流量や圧力などのデータを、ポンプの映像の横に表示するARグラフィックとして見ることができた。

VuforiaはARをさまざまな利用シーンで使われることを想定して、シーンに合わせてPTCがリリースしてきた製品である。工場での検査、設計・製造の研修を意識したVuforia Instruct、Vuforia Expert Capture、Vuforia Studio、Vuforia Engine、Vuforia Chalk、Vuforia Spatial Toolboxなどがある。

例えば、Vuforia Expert Capture(図2)は、文字通りベテラン技能者の知恵なり技能なりをARとして見ながら作業するためのソフトウエアである。ベテラン技能者の作業をビデオで撮り込み、手順や目の付け所などを記録しておき、それをウェアラブルデバイスやタブレットなどで映し出す。記録した手順は、Microsoft Wordにエキスポートされ、文書としても記録できる。このようにしてベテラン技能者のノウハウを伝えるツールとして活用する。


図2 ベテランの作業手順を初心者でもすぐに理解できるように可視化している 出典:PTC

図2 ベテランの作業手順を初心者でもすぐに理解できるように可視化している 出典:PTC


またVuforia Chalkは、撮り込んだ映像の中の指示したい部分をチョークで印をつけるように手書きで丸い円を書き込むことができるツールである。工場内にある多数の配管のバルブをカメラ映像として撮り込み、その中でどのバルブが問題なのかを指示することで、オフィスにいる本部や遠隔地にいる社員とも情報を共有することができる。もちろん、画面を見ながら会話できるため、本社、工場、遠隔地の工場などと情報共有でき問題を素早く解決できる。

6月に発表された最新のツールは、Vuforia Instructと呼ばれる製品で、3D-CADデータを取り込み、現場でそれを見ながら検査や製造に活かそうというもの。例えば、半導体製造装置の3D-CADデータを取り込み、それをチャンバ内のウェーハステージやプラズマ領域などの部品を検査したり、3D-CADデータから別の部品を取り込むとどうなるかなどを可視化して見せることができる。部品やモジュールの受入検査のトレーニングや品質管理検査に使うことができる。製造装置の検査では、どのような手順で検査するか、従来の紙の代わりにタブレットで見ながら検査できるので視覚的にわかりやすい。


図3 Vuforia Instructの三つのモジュール 出典:PTC

図3 Vuforia Instructの三つのモジュール 出典:PTC


Vuforia Instructは、Editor、Vantage、Insightsという三つのモジュールからなる(図3)。Editorでは、CADデータの装置のどの部分を検査するかを指定し、Vantageでは3Dプリンタで部品を作る手順を示したり、動画で検査する部分を指定したりする。Insightsは文字通り分析するソフトウエアモジュールだ。検査工程で不具合が見つかればそれをフィードバックしてInsightsに入力する。

PTCがこれまで得意としてきた3D-CADソフトウエアを活かす、あるいは製品の開発アイデアから量産工程、製品生産終了まで製品の一生を一貫したソフトで管理できるPLMソフトウエアともうまく連携することで、設計から製造、検査工程などでVuforiaシリーズ製品は、現場での作業効率向上に効果を発揮しそうだ。さらに海外工場や国内工場と本社との情報共有に活かせるというメリットも大きい。

(2021/7/14)

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