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バイデン大統領、500億ドルの半導体製造計画など議会へ提出

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米国のバイデン政権は、約2兆ドル(約220兆円)という巨額をインフラと雇用のために投資する計画を発表、議会へ提出した。その内、半導体製造に500億ドル、電気自動車に1740億ドル、1000億ドルを高速ブロードバンド通信ネットワークに投資する。これを受けてSEMIはすかさず歓迎の声明を発表した(参考資料1)。

FACT SHEET: The American Jobs Plan

図1 バイデン政権が発表した新投資計画 出典:ホワイトハウスホームページ


SEMI会長のAjit Manocha氏は、「この20年間で米国の半導体製造能力が50%も落ちてしまったため、これを上向きに逆転するためには力強い行動が不可欠。バイデン政権が『アメリカの雇用計画』を策定し、その中の半導体製造産業を強化するための資金支援は、前進するためにとても重要だ。CHIPS for America Act法令が承認され資金が提供され、米半導体サプライチェーンにおける投資を支援する税制控除は、米国を世界と同じ土俵で競争するための設備投資がようやくできるようになる。この計画は、労働力の開発にも取り組んでおり、産業界を勇気づけている。優秀な人材獲得競争が成長を促進するからだ」と述べている。

バイデン政権が議会に提出した『アメリカの雇用計画』の概略を簡単に紹介しよう。前書きは省略するとして、この計画は全体で約2兆ドルを10年間で投資するもので、アメリカ製商品を作る企業への税制優遇と共に、議会を通過することが期待されている。投資は今後15年間実際に支払われることになり投資回収はその後になる予定だ。この法案は現在、審議に入り、野党である共和党が反対意見を述べており、現時点では可決されたわけではない。

この雇用計画は、製造業だけではなく、道路交通や水道などのインフラから教育にまで及ぶ壮大な計画であるが、その中心は製造業の強化である。製造業は、全事業の研究開発コストの70%を占め、生産性向上する部門の30%、輸出業の60%を占めている。経済を成長させるためには、製造業が極めて重要だと指摘する。製造業への総投資額は3000億ドルとなる。

重要な製品を製造するサプライチェーンを強化するために、商務省内に米国内の生産能力や投資状況をモニタリングし適切に使われていることを確認する部門の設立に500億ドルを投資する。さらに超党派で提出した「CHIPS法案」に呼応して、半導体の製造と研究に500億ドルを投資する。

さらに今後のパンデミック対策として、医療関係の製造や研究開発、今後の未知のウィルスに対する備え、バイオセキュリティなどに300億ドルを投資する。また、クリーンエネルギーの製造を促進するため連邦政府が積極的にクリーンエネルギーを調達し460億ドルを投資、2050年までのCO2排出ゼロを目指す。

イノベーションと生産性向上のために、約10カ所の地方にイノベーションハブと地域活性化基金の設立に200億ドルを投資する。技術開発を促進させ、都市と地方の経済をつなぎ、現在のハイテクセンターを超えるような新規ビジネスを創出する。加えてNIST(米国標準技術研究所)に140億ドルを投資、産官学共同開発体制を構築する。

国内の製造業に520億ドルを投資、地方の製造業とクリーンエネルギーをサポートする。ここでは自動車産業で見られるサプライチェーンを近代化するためのサポートや税制控除などを含む。

米国における全製造業の98%は中小企業であることから、中小企業向けのインキュベータやイノベーションハブとのネットワーク、ベンチャーキャピタル、研究開発に310億ドルを投資する。

電気自動車(EV)に対しては、米国のEV市場は中国の1/3しかないことから、ここでも1740億ドルを投資して、原材料から部品、特にバッテリやEV製造への投資だけではなく、消費者にもEV購入補助金を導入する。さらに充電ステーションを2030年までに50万ヵ所設置する。

そして全米全世帯をカバーする高速のブロードバンド通信をアクセスできる体制に1000億ドルを投資する。都市部と地方とのデジタル格差を解消すると共に、白人家庭の方が黒人やラテン系家庭よりも高速インターネットを使っている割合が高い、という実態のデジタル格差を解消する目的もそこにある。このために高速ブロードバンドのコストを下げ、普及を促進する。

寒波によるテキサス州の停電で見られたように、電力網の近代化を図るために1000億ドルを投資する。これまでは停電による経済損失が毎年700億ドルにも達していたとエネルギー省の調査でわかった。このため電力品質の向上や新規雇用の創出、さらにカーボンフリーの電力を2035年までに作り出すために使う。

これらは全て雇用創出につながることから「アメリカの雇用計画」と題したプランになっている。法案全てを読みたい方は、3月31日にホワイトハウスが発信している「FACT SHEET: The American Jobs Plan」で全容を見ることができる。

参考資料
1. SEMI Applauds Initiatives to Bolster Semiconductor Manufacturing and Research in American Jobs Plan (2021/04/01)

(2021/04/06)

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