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TIが日本語サイトを充実させる理由

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日本テキサス・インスツルメンツ社は、オンラインストアから製品を購入しやすくするため日本語のウェブサイトを拡大、利便性を上げた。日本でこれまで50年を超えるプレゼンスを持つのにもかかわらず、なぜ今、日本語のウェブサイトtij.co.jpを充実させたのか。

日本TI webサイト

図1 日本TIのトップページ tij.co.jp


日本TIが設立されたのは1968年。日本という市場は、昔は民生用半導体が強く、総合家電が半導体市場をけん引していた。20年以上前から総合電機が強かった民生市場は小さくなり、アジアの企業に負けていった。同時に多くの国内半導体メーカーも弱体化した。今、日本が強い半導体ユーザーは実はクルマしかいなくなった。日本の製造業はクルマ産業を頂点としてティア1、ティア2、ティア3サプライヤへとその構成ピラミッドは広がっている。産業用分野はティア2、ティア3メーカーを中心につながっている。

TIは自動車用半導体ではさほど強くない。今、強化しようとしている。しかし、クルマ産業に納めるティア1サプライヤに半導体を供給するのがティア2になる半導体メーカーだ。また、こういった垂直統合型の産業は極めてドメスティック指向になりがちで、日本語化が乏しいウェブサイトにやってくる日本人の機械技術者は少ない。

半導体エンジニアには、先進の米国業界に追いつき、追い超せ、でやってきたため英語になじみがあるが、一般に機械系のエンジニアはドメスティックな環境で仕事ができたために、英語へのなじみは比較的薄い。TIは、クルマ向け半導体を強化したいが、日本語が少なければエンジニアはウェブサイトにやってこない。そこで、クルマと日本語を同時に強化しよう、ということになる。日本TIのウェブサイトはまだ完全に日本語化されているわけではないが、支払いは円ベースで可能だとしている。日本TIによると外資系半導体企業の中で、円で支払いができるのは日本TIだけだと言う。クレジットカードもVISAだけではなくJCBも使える。

TI製品は標準アナログやロジックのICが多く、ディスクリートはほとんど扱っていない。車載用といっても、SiCやIGBTのようなディスクリートのパワートランジスタは扱っていないが、パワーMOSFETを集積したパワーICに加え、GaNトランジスタを集積した48V系回生ブレーキ回路向けの半導体を扱っている。

TIは先月、48V系の回生ブレーキおよび始動ドライブ回路向きのGaNパワーIC「DRV3255-Q1」を発表している。簡単なロジック回路も集積しており、集積化によって基板面積を30%縮小できるとしている。このICは48Vの3相ブラシレスモータードライブ用で、GaNパワーMOSトランジスタを内蔵しているため、外付け部品が不要で、最大30kWのモーターをドライブできる。48V系のシステムは、始動時にモーターとして車両を内燃エンジンと共にクルマを駆動し、停止時には回生ブレーキでバッテリに充電するため、マイルドハイブリッドと呼ばれている。

このGaNパワーICは、EVのようにもっと大きなモーターをドライブする場合にはSiC MOSトランジスタのゲートをドライブするゲート回路としても動作する。EVの充電時間を長くせずに走行距離を伸ばすために、充電速度の速いオンボードチャージャーを搭載することがその解となる、とTIは述べている。通常、充電時間を短くしようとするとハイパワーの充電器が必要になるが、その分重くなり体積も大きくなる。そこでTIは、GaNを使えば効率は高まり、高速スイッチングが可能になるため、外部部品を軽くすることができる、としている。

(2021/03/12)

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