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AMDが正式にXilinxを買収へ、両者が合意

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AMDがFPGAメーカーのXilinxを買収するという噂でもちきりだったが、10月27日(米国時間)AMDは正式にXilinx買収を発表した。買収金額は350億ドル。このニュースはAMDがPC市場からデータセンター市場へ本格的に乗り出すことを示している。

図1 AMD CEOのLisa Sue氏 出典:AMDホームページ

図1 AMD CEOのLisa Sue氏 出典:AMDホームページ


この正式発表(参考資料1)によると、AMDとXilinxの両社のそれぞれの取締役会が買収に合意した。買収金額の350億ドルは全額株式で支払う。株式交換のレートはXilinxの1株はAMDの1.7234株とする。ちなみに現時点(米10月27日)でのAMDの株価は78.9ドル/株、AMDの時価総額は926億ドルである。2021年末までの買収完了を目指す。

新会社の経営陣は、AMDのCEOであるLisa Su氏がCEO、XilinxのCEOであるVictor Peng氏はPresidentとなり、Xilinxグループを統括する。さらにXilinxの2名の取締役がAMDに加わることになる。

AMDは、この1〜2年、PC向けCPU市場でIntelのシェアを奪ってきた。Intelは数年前からPCからデータセントリック(データ中心)な企業を目指していた。PC市場はもはや飽和していたからだ。短期的には新型コロナウイルスによるテレワーク需要でPCが昨年よりもプラス成長しているが、Intelの眼はデータ中心の市場へと向けられていた。データセンターやIoTゲートウェイ、ストレージクラスメモリ(Intelはパーシステントメモリと呼んだ)、クラウド需要などを含む、エッジからクラウドまでのデータ中心とする市場を狙っており、Alteraを買収したのはデータ中心市場を狙うためだった。ここ数年、AMDはPC市場へ、Intelはデータ市場へ、とすみ分けてきていた。

ところが、AMDもこのことに気が付いたようだ。PCだけではなく、データセンター需要も取り込もうとしてXilinxに目を付けた。データセンターでは、CPUだけではなく、自分が欲しい専用回路を自在にプログラムして設計できるFPGAは特に入出力回路では必須だ。また、AMDがIntelよりも強いのは、GPUを持っていることだ。GPUはレンダリング(色塗り)機能のために大量に並列に動かす積和演算器を備えている。このため、さまざまなアルゴリズムを高速に数値計算できるだけではなく、ニューラルネットワークのモデルとも共通するためAI(機械学習やディープラーニング)にも使える。実は、AMDはGPUのファブレス半導体メーカー、カナダのATIを2006年に買収しており、ゲーム機PCで活用してきた。ゲーム用PCでAMDが強い理由でもある。

ソフトウエアで機能を構成するCPU、行列演算が得意なGPU、好きな専用回路を設計できるFPGAと3拍子揃った。加えて、最近のXilinxは、一つのパッケージ内にこれらのチップを2.5Dに集積し、さまざまな機能を変えられるアダプティブSoCとそれらのヘテロマルチプロセッサを効率良く動かすための配線切り替え技術SmartNICも持っている。これらを使えば、アムダールの法則(マルチCPUの並列度を上げても性能は飽和する)を超える超並列演算が可能になる。

Xilinxを手に入れれば、AMDはIntelの向かっているデータ中心市場でまともに競争することになる。

参考資料
1. AMD to Acquire Xilinx, Creating the Industry’s High Performance Computing Leader (2020/10/27)

(2020/10/28)

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