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コロナ禍での通信量の増大を裏付けたEricsson Mobility Report

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新型コロナウイルスによって生活や仕事の形態が変わった。通信技術は人々に大きく貢献し、回答したスマートフォン利用者の83%が、ICTは大きく役に立ち、中でもオンライン教育に利用した、と答えている(図1)。6月発行のEricsson Mobility Reportが伝えた最新のモバイル通信事情だが、今年末には1万9000名の5G加入者を見込んでいる。

パンデミック下でのICTの利用

図1 最新のEricsson Mobility Report日本語版の一部 出典:Ericsson Mobility Report


世界のいくつかの都市でのロックダウン(都市封鎖)によって通信トラフィック量が20〜100%増加しており、音声通話も20〜70%も増えた。最も顕著な動きは、固定ワイヤレスアクセス(FWA)が大幅に増えたことで、家庭からの固定通信ネットワークが20〜70%も増えている。

日本では2000年ころにカラオケ業者が光ファイバを敷く安価なビジネスモデルで始め、国内では2019年9月末現在で3200万件を超えている(参考資料1)。しかし欧米では光ファイバはそれほど多くない。特に欧州では、電線が地下に埋め込まれているため、光ファイバを敷くには地面を掘り起こさなければならず、コストが高くつくからだ。日本では、美観よりも便利さを優先してきたために、光ファイバは電柱にしっかり張りめぐらされている。この結果、欧米ではいまだにADSLやケーブルモデムを使うケースが多い。光ファイバの幹線から家庭までのラストワンマイルに5GのFWAを使い、その利用が増えているのである(図2)。


固定無線アクセス(FWA)の見通し -2025年に全データトラフィックの25%に-

図2 固定ワイヤレスアクセスが世界では増加している 出典:Ericsson Mobility Report


米国の大手通信オペレータであるVerizon Wirelessが28GHzのミリ波を世界で先駆けて使ったのは、実はモバイルではなく固定のFWAであった(図3)。ラストワンマイルで美観を損ねず、かつ高速のブロードバンド通信を低コストで供給できる手段として5Gを利用したのだ。このため、幹線から家庭のアンテナめがけて送信するという手法を使っており、5Gモバイルのミリ波で開発が進んでいるダイナミックなビームフォーミング技術はまだ使われていない。Verizonは39GHzの回線も利用してFWAサービスを始めている。


ベライゾン:世界初5G FWAとモビリティサービス

図3 Verizonの固定ワイヤレスでラストワンマイルを実現 出典:Ericsson Mobility Report


すでにミリ波を使っているからと言って、Verizonが日本のNTTドコモやKDDI、ソフトバンクと比べて決して進んでいる訳ではない。

5Gの特長の一つである多接続に関して、IoTのネットワークにもセルラーIoT接続が、LPWA(Low Power Wide Area)と同様、増えていくと見られている(図4)。IoT専用の通信ネットワークであるLPWAはセルラーネットワークでも利用できるようになっており、その需要は大きく伸びそうだ。


セルラーIoT接続デバイスは2025年に52億個

図4 セルラーIoT接続数が52億個に増える 出典:Ericsson Mobility Report


5Gのセルラーネットワークそのものではもちろん、動画、それもフルHDや4K動画を送受信する場合に威力を発揮し、ブロードバンドIoTとして伸びていく。医療用の画像伝送やセキュアな基幹システムの動画伝送のようなミッションクリティカルなIoTも同様に伸びると見られている。さらに、低消費電力だが低速のデータレートを使う大量のIoTもこれから伸びていき、2025年には52億個のIoTデバイスがセルラーネットワークで使われると予想されている。ちなみにIoTデバイス全体は、2025年に246億個にも膨れ上がるとみている。

5Gが必要な最大の理由は、IoTやスマホのデータトラフィック量が伸び続けているからだ(図5)。2020年第1四半期までのデータの伸びは年率平均で56%という増加率である。これに対処するためには高速大容量のセルラー通信ネットワークを構築する以外にはない。特にオリンピックやワールドカップなどスポーツイベントではスマホやタブレットを使ってSNSに流すシーンが増えてきており、世界のデータ量は2019年の33EB/月から2025年には164EB/月に増えると見込まれている。しかも動画が占める割合は19年の63%から76%にもなると予想する。


世界のモバイルトラフィック量の推移

図5 モバイルトラフィックは伸び続ける 出典:Ericsson Mobility Report


必要な回線を収容するための手段が5Gであり、動画視聴アプリによってデータ量は拡大の一途にある。このため5Gの立ち上がりは4Gよりも急速になると見ている。2025年にはモバイルトラフィックの内の45%が5Gになると予想する。Ericsson Mobility Reportはこちらから入手できる。

参考資料
1. 光ファイバー回線とは 通信基幹インフラ、日本経済新聞 (2020/01/21)

(2020/07/14)

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