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特集コロナ戦争(4):世界中が医療支援にハイテクを提供

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新型コロナウイルスに対して、ハイテク業界は手をこまねいているだけではない。自分たちができる医療支援は、機器の開発、ツール、医療従事者への通信サービス提供、医療機関への寄付などもある。テレワークの支援も進む。最新情報を本文と、「2020年4月上旬海外の動き COVID-19」(参考資料1)でレポートする。

図1 Johns Hopkins大学が提供している感染者数の順位 出典:Johns Hopkins大学

図1 Johns Hopkins大学が提供している感染者数の順位 出典:Johns Hopkins大学


2020年4月16日現在、米Johns Hopkins大学(https://www.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6)によると、新型コロナウイルスの感染者は206万4000名、死者は13万7000名、回復者は326万名を超える。感染者が最も多い国は米国で63万9000名以上と依然としてトップを行く。日本はまだ8626名と少ないものの、相対的には増えていることに注意しなければならない。9日前の4月7日には30位だったが(参考資料2)、4月16日には24位に上昇しているからだ。4月に入りほぼ2日で1000人増のペースになっている。

医療支援はテクノロジーの面からも進んでいる。新型コロナウイルスは接触が最大の問題であるため、非接触のリモートで患者の状態を医師が診られることは重要だ。電磁波はこのテクノロジーのカギになる。ミリ波のような短波長の高周波を利用して、非接触で患者の心拍数や呼吸数を測ることができる。これまでは、半導体チップメーカーやエレクトロニクス機器メーカーからの提案が多かったが、医療機関が電磁波による非接触で患者の呼吸波形や心拍波形、さらに患者の歩行状態までさえリモートでモニターするシステムが有効であることを発表した(参考資料3)。

MIT(マサチューセッツ工科大学)のCSAIL(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory:コンピュータ科学&AI研究所が開発、Dina Katabi教授がスタートアップしたEmerald Intelligence社がこの無線センサデバイス「Emerald」を商品化した(図2)。商品の外形はWi-Fiルータほどの箱で、ここから電波を発し、動いている人からの反射波を検出、その人の呼吸波形、心拍波形、さらに歩行状態まで検出する。センサを取り付ける必要がないため、患者の負担はなく、かつプライバシーも守られる。


図2 MITのDina Katabi教授が開発したEmerald Wi-Fiルータのようなデバイスで、スマホにデータを送信できるため遠く離れた医師も確認できる 出典:MIT CSAIL

図2 MITのDina Katabi教授が開発したEmerald Wi-Fiルータのようなデバイスで、スマホにデータを送信できるため遠く離れた医師も確認できる 出典:MIT CSAIL


Katabi教授が当初、このデバイスを発明したのは独居老人の見守りデバイスとして開発したのであるが、コロナウイルス患者のモニターにも使えることをボストンの医療機関が報告した。デバイスEmeraldを患者の自宅におき、Emeraldは患者の呼吸数や心拍数などを測定し、その結果をセルラー回線などで医師の元へ送信する。医師は患者の呼吸波形のデータを毎日チェックする。例えば、4月7日には呼吸回数が毎分23回だったが、11日には同18回に下がり、さらに患者の睡眠の質も改善され、自宅の周りを歩くことさえできるようになったという患者の挙動がこの装置でわかる。挙動に関しては、AI(機械学習)も活用し、ミリ波のイメージングとスケルトン表示で表した。

Emeraldを実際に使ってみたHarvard Medical SchoolのIpsit Vahia准教授は、「Emeraldは患者と一切触れあわずに、患者の生体情報が得られるため、医師や看護師が感染するリスクを最小にできる」と述べている。

このように新型コロナウイルス退治に直結するような応用はまだ多くないが、IT企業による医療従事者たちを支援するプロジェクトは多い。KDDIは、新型コロナウイルスを解析するためのプロジェクトに自社のサーバを提供した。Verizon Media(旧Yahoo)は4万4000もの医学論文を検索できるエンジンを立ち上げた。IoT専用ネットワーク業者のSigfoxはコロナ対策に医療従事者のためのSigfoxベースのトラッキング&モニタリングシステムを提供し、ネットワーク接続料金を無料で提供する。AT&Tは病院の通信回線を確保するため、病院近くに基地局を設置することが認められた。

また、シミュレーションベンダーのOnScale社は、一人ひとり異なる肺をデジタルツインで表現し、人工呼吸器の使い方の精度を上げるためのコンソーシアムを立ち上げた。患者一人一人の呼吸器の最適な使い方を10%でも改善すれば数千人の命を救えるという。

半導体関係でもSEMIは、半導体産業を「Essential Business」として各国と全米16州の政府に働きかけていたが、国内でも半導体産業は事業を継続対象事業者に認定された、とSEMIジャパンが発表した。SEMIは今年のシリコンウェーハの成長見込みを、新型コロナの影響が今年前半で終わる場合と終わらない場合とのシナリオを想定し、それぞれによってウェーハ数がやや伸びるか、落ち込むかという見積もり予想を描いた。

新型コロナウイルス情報は、ここで紹介した情報だけではなく、海外にもたくさんある。ここで紹介しきれなかった情報は、「2020年4月上旬海外の動き COVID-19」(参考資料1) を参考にしてほしい。

参考資料
1. 2020年4月上旬海外の動き COVID-19 
2. 緊急事態宣言発令後のコロナ感染を防ぐハイテクニュース相次ぐ (2020/04/13)
3. CSAIL device lets doctors monitor COVID-19 patients from a distance

(2020/04/16)

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