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Maxim、90nmプロセスプラットフォームを構築、製造拠点を多数持つ

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アナログとデジタル混載半導体のMaxim Integratedが90nmデザインルールを基準とするプロセスのプラットフォーム戦略を採ることを発表した。一つのプラットフォームでロジックからメモリ、高耐圧、アナログへと対応する。市場によってデバイスを追加する。ヘルスケア・産業向けには36V耐圧のP90D、自動車向けには80V耐圧のP90Uなどと使い分ける。

図1 Maxim Integratedの自動車事業部門担当のバイスプレジデントでジェネラルマネージャーのRandall Wollschlager氏(右)と、技術・製造グループ統括でバイスプレジデントのVivek Jain氏(左)

図1 Maxim Integratedの自動車事業部門担当のバイスプレジデントでジェネラルマネージャーのRandall Wollschlager氏(右)と、技術・製造グループ統括でバイスプレジデントのVivek Jain氏(左)


これまで、アナログ半導体はカスタム化の傾向が強く、プラットフォーム化は難しかった。ロジックが最小寸法7nmまで微細化しているのに、アナログでは90nmや180nmまでしか微細化できていなかったからである。ここにきてカーエレクトロニクスの台頭によって、パワーマネジメント分野は最小寸法が近づいてきた。Maximはもともと、パワーマネジメントIC(PMIC)と高速データ転送(SerDes)に強いミクストシグナル半導体メーカーである。クルマのカーエレクトロニクスが複雑になり、データセンターの電源のように近付いてきたため、効率のもっと高いチップが求められるようになってきた、と同社自動車事業部門担当のバイスプレジデントでジェネラルマネージャーのRandall Wollschlager氏 (図1) は語る。このため、パワーICでは90nmプロセスが最も効率が高くなったという。

例えば、自動車のフロントライトは、欧州では通常運転でハイビームを使い、対向車が来る時だけロービームに切り替えることが多かった。このため、光センサで対向車を検出すると自動的にロービームに切り替えるようになったが、それも一時的だった。今では、CMOSイメージセンサのカメラで対向車や人を見つけると、ドライバーや人の部分だけロービームに落とす、というビームステアリングが可能になってきた。この場合、瞬時にライトを落とさなければならないため、高速シリアル通信インターフェースのGMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)でカメラ画像を送り、その画像に相当するマトリックス状のLEDビームだけを自動的にローにする。LEDドライバやGSMLチップなどを手掛けているMaximには得意な分野である。

自動車用半導体では、これまで28社のOEM(自動車メーカー)、70車種に採用され、バッテリマネジメントICは4500万個販売されてきた。クルマでは全てのECUにはPMICが必要であり(図2)、使用電圧も12V、65Vなどさまざまある。クルマでは例えば真冬の寒い時期に12Vのバッテリでエンジンを始動させると、ECU電圧の5Vにも満たない4.5Vまで下がると、ECUが動作しなくなり、クルマは動かない。このためDC-DCコンバータではブースト(昇圧)とバック(降圧)の両方のコンバータが必要となるが、Maximはコスト的に高くなるため、2Vまで下がっても大丈夫な構成にしているという。


図2 クルマのECUの数だけPMICは必要 出典:Maxim Integrated

図2 クルマのECUの数だけPMICは必要 出典:Maxim Integrated


アナログパワーマネージメントプロセスの90nm化は、古いプロセスの450nmや180nmと比べると、チップ面積の減少は著しい。加えて、自動車向けLED照明ではこれまでのディスクリートのパワー半導体やゲートドライバと比べると、500nmのSP50プロセスでさえ、ボード面積は47%、部品点数も40%にそれぞれ減少した。ディスクリートだと、マイコン、ゲートドライバ、パワーMOSFETなどから構成されていたのを1チップ化したためだ。この場合のSP50もP90をプラットフォームとしたものだという。

プロセスのプラットフォーム化は、自社、ファウンドリ両方を使えるセカンドソースも兼ねることができる。製品需要が急に高まった場合にはファウンドリを追加しなければならないが、P90は日本の富士通セミコンダクタの三重工場だけではなく、台湾UMCでも同じプロセスで製造できる。まさにコピーエグザクトリ(Copy Exactly)戦略である(図3)。地震や洪水など自然災害が発生して工場ラインが止まってしてももう一つのラインを稼働させることができる。


Continuity of Supply ~ Dual Source Including P90

図3 同じP90プロセスをUMC(Fab102)と富士通セミコンダクタの三重(Fab103)に移植 不良率はほとんど変わらない 出典:Maxim Integrated


Maximは、元々IDM(垂直統合メーカー)であり、2007年には自社工場での生産が製品全体の95%を占めていた。2012年には55%に落とし、2018年には17%しかなくなった。つまり、自社工場への設備投資を抑え、ファウンドリを使う方向に変えた。日本でも2006年にはエプソンをファウンドリパートナーとしていた。そして、今回、富士通の三重工場もファウンドリパートナーに加えた。90nmプロセスを持っているからだ。ただ、富士通の三重では2017年12月に最初のサンプルを出荷し、18ヵ月後の最近になって量産化できるようになった。

P90のプロセスプラットフォームは、Maximの米オレゴン工場で開発し、それをグローバルに展開する(図4)。これまで400nmプロセスのS4や、180nmプロセスのS18は世界のファウンドリパートナーにそれぞれ2工場、4工場に移転している。パートナーとなっているファウンドリは、米国テキサス州のTowerJazz、台湾のPowerchip、そして日本の2社とUMCである。TSMCは独自に開発したプロセスプラットフォームPDKがあり、MaximのプロセスではないためTSMCをファウンドリではなく、マーチャントパートナーと呼んでいる。


Flexible Manufacturing with Geodiversity

図4 世界に多数のファブを持ち実質的なセカンドソースになる 出典:Maxim Integrated


Maximは車載用半導体に力を入れているため、自動車品質を追求しており、これまでのppm(part per million)レベルから、不良品混入が10億分の一を示すppb(part per billion)レベルへと不良率は毎年下げている。2019年に初めてppmを割り、ppb台となった。同社は、ZD(Zero Defect)運動を推進しており、常にゼロを目指す、とVivek Jain氏は語る。

(2019/07/23)

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