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半導体ベンチャーへの投資が急に活発に、シリコンバレーの大変化

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シリコンバレーで大きな地殻変動が起きている。このカリフォルニアでも日本と同様、半導体ベンチャーが生まれにくくなってきており、大手は買収を繰り返し、業界再編を進めていた。ところがこの第2四半期になって、半導体ベンチャーへの投資が急激に伸びてきたのである(図1)。

Funding per Quarter ($M)

図1 半導体ベンチャーへの投資がこのQ2に急増 出典:GSA


米国カリフォルニア州のサンフランシスコベイエリアをシリコンバレーと言っているが、シリコンという名の割りには半導体ベンチャーが生まれにくくなってきており、ここ7〜8年くらいはずっと半導体ベンチャーへの投資が減り続けていた(図2)。ところが、2018年第2四半期には前年同期比13.5倍、前四半期比6.4倍とこれまでと比べ、飛びぬけて多くの半導体ベンチャーへの投資が急増し、16億8710万ドルに高まったのである。これは、多くの半導体メーカーが加盟しているGSA(Global Semiconductor Alliance)が最近発表した、「Market Watch - Q2 2018」の資料による。


Funding for Rolling 12-Month Period JUL to JUN ($B)

図2 1年ごとの半導体ベンチャー投資額は毎年減少していたが直近は急増 ここでは毎年7月から翌年6月までの統計を取っている 出典:GSA


なぜ半導体か。2018年4月から6月までの第2四半期において資金を調達したベンチャー企業は20社あったが、そのうちの10社がAI(人工知能)に関するメーカーだった。自動運転車向けのディープラーニングネットワーク(DNN)ソフトウエアを開発しているDeepScale社、ニューラルネットワークを利用するAIチップのSyntiant社、エッジAIソリューションを提供するKneron社はカリフォルニアを拠点とするベンダーだが、SenseTime社やAISpeech社、Cambricon Technologies社など中国のAIベンチャーも多い。

また、カリフォルニアだけではなく、イリノイ州を拠点とするディープラーニングのスタートアップAllegro.AI社はシリーズAラウンドで1100万ドルを調達し、カナダを拠点とするAlgolux社は自動運転車向けの機械学習のスタックを提供するスタートアップでやはり1000万ドルを調達している。また、イスラエルを拠点とするHailo社は、エッジデバイス用のディープラーニングチップを開発しており、この四半期に1250万ドルを得ている。

AIでは、ディープラーニングなどを実行するために必要な半導体回路は積和演算(MAC)でニューラルネットワーク内にあるニューロン1個の入力にデータと重みをかけ、それらを足し合わせる計算を行うため、MAC演算を含む回路がAIに向いている。GPUには多数の小さな積和演算のコアが超並列に集積されているため、NvidiaのGPUが学習するのに適していた。またDSPも積和演算だが、32ビットを基本として64ビットの倍精度演算など、並列度は少なくしかも高精度な演算であるため、AIチップとしては無駄が多かった。AIには8ビット、せいぜい16ビットの精度で十分なので、ニューロ演算に適したチップを開発せざるを得なかった。このためAIチップメーカーが現れている。

AI以外の半導体ベンチャーでは、高速不揮発性メモリのNantero社、ワイヤレス技術用マイクロ波チップのGuerrilla社、データセンター用ネットワークソリューションチップのInnovium社、IoTのEspressif Systems社、ARディスプレイのDigLens社、レーダー通信のMetawave社、自動運転向けのソフトウエア開発のSilexica社、半導体設計ツールのMovellus社などが新たに資金を調達した。

変わったところでは、カリフォルニア大学バークレイ校が開発したライセンスフリーCPUコアRISC-Vを集積するチップベンダーのSiFive社がシリーズCラウンドの5060万ドルの資金調達に成功している。

調達資金の金額が多いところは、SensTimeの6億2000万ドル、続いてCambriconの1億ドルだった。共に中国をベースにするベンチャー。一般に1000万ドル台の資金調達が多く、1億を超える出資は少ない。

(2018/07/19)

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