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インテリジェントカーが事故を減らす−カーエレ展から(前編)

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ネプコンジャパン2018と併設された「第10回カーエレクトロニクス技術展」(図1)では、クルマをインテリジェントにする様々な技術が続出した。交通事故はドライバーの不注意が原因で起きることが多い。ドライバーの不注意を防ぐ技術の一つがインテリジェント化だ。ドライバーに全面的に頼らず「クルマ側でも事故を防ぐ」をテクノロジーが担う。

図: 入場を待つ参加者

図1 2018年のカーエレクトロニクス技術展には人が殺到した


ADAS(先進ドライバー支援システム)や自律運転の根底にある考え方は、単なる利便性の追求ではなく、事故を防ぐことである。自動車メーカーにとって事故を起こさないクルマ作りこそが最大の関心事だ。自動車メーカーに提案できるような半導体チップメーカーからの技術がこの展示会で紹介された。

まずはクルマの周囲に幼児がいないかどうか検出する駐車支援装置として超音波センサを利用する技術が新日本無線(NJR)やON Semiconductorから展示された。新日本無線が提案するのはMEMSを使った超音波の受信機(センサ)。超音波の送信機には従来のPZTを使い、対象物に反射して戻ってきた超音波を拾うセンサはMEMSである。MEMSだと、わずか4.25mm×3.55mm×1.1mmの大きさに4個の超音波センサを集積できるため、指向性を強めるビームフォーミングができる。受信性能としては、検出周波数範囲は100Hz〜100kHzで、受信感度は1kHz時に-42dBV/Pa。

ON Semiは、超音波を受信するためのIC「NCV75215」を展示した。これは、検出距離が0.25m〜4mであり、受信可能な周波数範囲は35kHz〜95kHzとなっている。受信感度に関係する受信利得を0.5dBステップで設定できる。送信電流は50mA〜350mA。距離がそれほど長くないため、超音波技術は駐車支援が主な用途となる。

走行中に周囲にある車両を検出したり、あるいは駐車場での車の有無を検出したりする場合には、TOF(Time of Flight)やレーダーによる検出が効果的。NJRは、24GHzの準ミリ波を利用した測距センサを2種類展示した。図2左のボードは2ペアの測距センサで、測定できる距離は5m、図2右の8ペアの測距センサはビームフォーミングを使うことで30mまで測定距離を伸ばしている。


図: マイクロ波 測距センサ 左がNJR4234AV/NJR4234AW 右がNJR4234BV/NJR4234BW

図2 24Hzの準ミリ波レーダーを使う新日本無線の測距システム


2次元画像にTOF測距センサを加えたソリューションで3次元の奥行きも測定できるTOFイメージセンサ用チップセットをベルギーのファブレス半導体のMelexis社が展示している。スクリーンの解像度はQVGA(230×240画素)と低いが、立体形状を可視化できる。ドイツのファウンドリX-FABが製造し、欧州ではBMWがジェスチャー入力に採用しているという。

運転手を支援するシステムとして、スマートライティングがある。クルマのヘッドライトやリアライトにLEDを使うケースが増えており、STMicroelectronicsもヘッドライト用のLEDドライバにおいてクルマ用のAEC-Q100の認定を取得した。CMOSセンサを利用してハイビームとロービームを切り替える適応型ドライビングビームと呼ばれるフロントライトの採用が欧州で始まっている。ロームはそれに応えるべきチップセットをそろえ始めている。LEDドライバだけでなく、マトリックススイッチコントローラと呼ぶICも開発している。CMOSカメラで撮った画像のうち、対向車の運転手を含む周囲のライトだけをロービームにして、残りはハイビームのまま走行する。欧州では、夜間走行は通常ハイビームを使い、対向車が来るときだけロービームに切り替えていた。この作業を電子的に切り替え、対向車の運転手がまぶしくならないように配慮する。

今回は、NJRが運転手の声のみを拾う音声のビームフォーミング技術をデモしていた。これは、音声でコマンドを入力するシステムの音声認識率を上げるために、必要な音源だけを入力できるようにするもの。2台のマイクを使って運転台にいる人からの声だけを強調して他からの音を分離し、さらにフィルタをかけて除去する。このために運転台の前方上の天井部分にマイクを設置する(図3)。


図: NJRのビームフォーミングデモ

図3 運転台の天井に設置した2個のマイク 運転手からの音声だけを拾う


今回NJRのデモでは音声認識ソフトウエアとしてAppleのSiriを利用したが、設定次第ではGoogle Assistantも可能になるとしている。

Xilinxは以前からクルマのIT化/エレクトロニクス化に関する展示会には出展しており、FPGAを使ったADASシステムや自動認識システムを紹介してきた。今回は現状に実績を踏まえ、最新のソリューションを見せた。FPGAの良いところは、最新のアルゴリズムが開発されたならすぐにハードウエア回路に組み込むことができるという点だ。

今回、ハイエンドの「Zynq UltraScale+」MPSoCを発表したが、このチップを搭載した開発ボードを展示した。このボードを使えば、1km先を180度見通すために、8Mピクセルと30fps以上のセンサを3眼使うフロントカメラ映像をサポートする。3眼は冗長度を考慮するため。高解像の映像には、高速シリアルインタフェースのサポートが必須になる。ここではLVDSに代わり、Maxim Integratedが提供する最大3GbpsのGMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)をサポートしている。また、CMOSイメージセンサやLiDARなどの各種のセンサからの信号をまとめるセンサフュージョン用途にもFPGAでサポートする。


図

図4 磁気センサによるジョイスティック型の入力デバイスをInfineonが試作


変わったセンサの応用も現れた。Infineon Technologiesが磁気センサを使って、3次元の動きをコマンドに変えられることをデモした(図4)。N極とS極からなるディスク状のセンサを回転すると磁気の強さが変わるため、その変化量を電気信号に変える。またセンサを磁石に近づけると磁気の大きさが変わるので、その信号も利用すると考え、同社はジョイスティック型の入力デバイスをデモ用に作製した。X、Y、Zの3方向を分別することで、数十のコマンドを設定できる。

クルマでは大小のモータが多数ある。EVには大きな出力が必要で、そのためのモータドライブ回路が必要で、ハイパワー半導体が登場する。後編では、IGBTからSiCダイオード、トランジスタなどの最新の動きを伝えていく。

参考資料
1. インテリジェントカーが事故を減らす−カーエレ展から(後編) (2018/02/02)

(2018/01/25)

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