JEITAのIT調査から見えてくる、必要な半導体チップ

従来IT投資といえば、企業内の基幹システム用のサーバや業務用パソコン、さらには関連するソフトウエアなどへの投資を指していた。IT/システム部門の業務は保守と運用が主だった。今回のJEITAの調査は、2013年に行った調査からITに対する企業人の意識調査がどう変化したかを知るためのもの。2013年は国内調査に加え、米国の企業でも同じ質問を行った。対象としたのは、従業員300名以上の中堅から大企業の非IT/システム部門の人たち。

図1　IT投資が極めて重要と考える企業が増えた　出典：JEITA

2013年の調査では、IT投資の重要性について聞いたところ、極めて重要が米国75%に対して日本は16%しかなかったが、2017年の調査では26%に増えた(図1)。今回の調査では米国はほとんど変わらないと考え、行っていない。また重要という答えは米国20%、日本53%だったが、今回は50%になった。どちらともいえない、およびあまり重要ではない、と答えた人は米国6%だったが、2013年の日本は31%、今回24%となっている。すなわち、IT/システム部門以外ではIT投資を重要と考えるビジネスマンが増えたといえる。

このことは事業部門をはじめとする非IT/システム部門の人たちがIT投資に対して理解を示すようになってきたといえるが、それだけではない。ITの中身がハードウエアやソフトウエア、サービスも含めて、これまでのサーバや業務用パソコンから、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末やIoTデバイス、クラウド、AI/コグニティブ、ビッグデータ、AR/VRへと広がってきているのである。クラウドはIT部門が利用するだけではなく、事業部門が直接パブリッククラウド業者（アマゾンやマイクロソフトなど）と話をして導入するとか、IT部門を経由しないITの利用が増えてきたという。

例えば、クラウドを「利用を検討している」〜「全社で使っている」まで使うことをポジティブにとらえる人たちは全体の7割強おり（図2）、ビッグデータに関してもポジティブな回答は7割、IoTへの利用でも2/3が前向きと答えている。企業内でのモバイルはもはや常識に近く、8割弱が利用を検討している以上である。

図2　クラウドに積極的な企業は7割も　出典：JEITA

半導体ビジネスは1980年代から常にITの動向に従って成長してきた。このためITの動向をつかむことは半導体ビジネスの行方を左右する。今回の調査結果から、ハードウエアはクラウド向けのサーバやストレージ、パソコン、モバイル、IoT、AIチップ、VR/ARなどのグラフィックスチップ、さらには全く新しい回路あるいは既知のシステムを高速化するためにソフトウエアからハードウエアへインプリメントするためのFPGAなどの需要が増えることが予想される。

例えば企業内コンピュータは従来無駄な投資が多く、メールサーバ、ウェブサーバ、給与計算専用サーバなどまるでサーバのサイロだと揶揄されたため、仮想化技術へと進んだ。この結果ハードウエアとしてのサーバの台数は減少したが、ITは企業内のオンプレミスからクラウドへシフトし、サーバの需要は高まりつつある。加えてモバイルの進展はスマホやタブレットをIoTのハードウエアプラットフォームとしての地位を確立しつつある。これらの動向は、必要な半導体チップを浮かび上がらせてくれる。

図3　IT投資から必要な半導体が見えてくる　出典：JEITA

今回の調査で攻めのIT投資の一つとして、働き方改革がある。そのために必要なハードウエアは、サーバやパソコンなどのコンピュータ以外にも多い。テレビ会議システムやモバイル機器、IoT、AI/ビッグデータ、ロボット、VR/AR、ドローンなどが候補に上っている(図3)。これらの心臓部は全て半導体が握っている。