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NI戦略に見る、多品種少量品を安く作る方法

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DRAMのような大量生産品に集中していたかつての国内半導体企業は、大量生産すると安いが、少量多品種は高いと考えていた。IoT時代の端末は超少量多品種になる。これをいかに低コストで作るかが問われている。その解の一つをソフトウエアベースの測定器メーカーNational Instrumentsが示唆している。日本NIの代表取締役に就任してほぼ1年半になるコラーナ・マンディップシング氏にNIの戦略を聞いた。

図1 日本ナショナルインスツルメンツのコラーナ・マンディップシング氏

図1 日本ナショナルインスツルメンツのコラーナ・マンディップシング氏


NIは、1976年創業時の専用測定器しかない時代に最初からプラットフォーム手法を使った測定器を開発してきた。共通のハードウエアシャーシにボードを差し込むとオシロスコープができ、別のボードを差し込むとスペアナができる。測定データはパソコンで見てデータを処理する。テストプログラムやテスト回路の設計にはソフトウエアのLabVIEWを用いる。現在のハードウエアプラットフォームがPCIeバスを持つPXIシャーシ。

こういった考え方は半導体設計・製造にも通じる。今や、顧客の望むシステムはますます複雑になってきているから、ASICのような顧客ごとの個別設計はコスト的に見合わない。しかも少量多品種だ。だからこそ、さまざまな顧客に共通の仕様を見つけ、それをプラットフォームとしなければならない。顧客ごとの違いはプログラムで変える。ハードウエアのプログラムならFPGA、ソフトウエアのプログラムならCPU、を使えばよい。

自社でソフトウエアを書いていられないのなら、ソフトウエアを書いてくれる仲間を募るしかない。また、そのソフトウエアプログラムを簡単に書くためのツールを作ってくれる仲間も欲しい。つまり、さまざまな仲間からなるエコシステムを構築するのである。CPUコアのARMの最大の強みは1000社もの仲間がいることだ。NIもエコシステムの広がりに力を入れている。「代表に就任したころは40社だったが、今は50社の仲間がいる」とコラーナ氏は言う。

エコシステムを拡大するための前提はまずオープンであることが不可欠。また、餅は餅屋ということわざのある通り、各社は深さを追求し、自社の強みを際立たせることも欠かせない。

そして世の中の大きな流れ、すなわちメガトレンドがIoT、クルマ(自動運転や電動化)、5G、クラウド、機械学習やディープラーニングなどへ向かっている。しかも使われる技術に共通項も多い。例えば、クルマの自動運転で前方の物体を判別するための機械学習は、クラウド上でIoTシステムのデータ解析にも使われる。しかし、IoT端末からのデータを人間がどう判断するか、しきい値の設定次第では、正常でも異常と判断してしまうことが多い。逆に、人間がしきい値を緩めると何を測っているのかわからなくなる。そこで、機械学習を使おうとしてもどのような学習アルゴリズムを使うべきか、を決めなくてはならない。そう簡単ではない。NIは、集塵機メーカーのアマノと共に、モーターの異常値のしきい値を決めるのに、統計的手法(タグチメソッド)を使った(参考資料1)。機械学習に、統計的な手法を使うことで学習アルゴリズムを開発しなくて済んだ。

また、命に係わる自動運転やADAS(先進ドライバー支援システム)となると、テストカバレージをどこまで広げられるか、が問われている。いわば、システムが複雑になっている中でどのようにして検証するか、コストアップを抑えながらそのテストカバレージを広げていこうと業界全体で議論されている。

半導体のテストでもそのテスト手法を見直す動きもある。これまで多くの半導体企業はファブレスもIDM(設計から製造までの垂直統合半導体メーカー)も後工程をOSAT(後工程からテストまで請け負う業者)にアウトソースしていた。しかし半導体デバイスが複雑になるにつれ、外注していたテストの最適化あるいはテスト手法を自社で開発する必要性を感じ始め、テスト手法を自社で開発する動きが出ているようだ。

ただ、テストカバレージを広げる場合、NIは顧客の課題を一緒に解決し、顧客の成功を見届けていきたいとコラーナ氏は言う。この顧客のサクセスも強化していく。このため、LabVIEWをベースに顧客やパートナーのトレーニングにも力を入れる。時には顧客のオンサイトにも行き、顧客ごとのニーズに応じたカスタムトレーニングにも対応していくという。

またNI自身の強みであるプラットフォームの更新にも力を入れている。今年はLabVIEW 2017だけではなく、LabVIEW NXGも発表した(参考資料2)。ハードウエアとしても顧客がカスタマイズできるようにするため、XilinxのFPGAも数年前に導入し、LabVIEW上でFPGAの内容をプログラムできるようにした。加えて、ハードウエアモジュールも少しずつ追加しており、先月のNIDays 2017では(参考資料3)、大量のセンサ信号をシミュレーションするため、24チャンネルのSMU(Source Measurement Unit)を新製品発表している。


参考資料
1. AIをもっと身近に−CEATEC 2017(2) (2017/10/12)
2. NIWeek 2017、コンバージェンスが進むIoT・AI・ADAS・5G・クラウド (2017/05/26)
3. NIが明示した5つの技術トレンド (2017/10/31)

(2017/11/15)

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