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AIをもっと身近に−CEATEC 2017(2)

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CEATEC 2017(参考資料1)は結局、4日間の来場者数が15万2,066人と前年比4.7%増となった。2015年に従来の5日間から4日間になって以来、初めて15万人を超えた。ちなみに過去最高の来場者数はリーマンショック直前の2007年の20万5859人(5日間)。主催者はIoTを強く推していたが、企業の発表はIoT端末からシステムへと関心が移っていた。

図1 幕張メッセのCEATEC会場の一コマ 撮影:津田建二

図1 幕張メッセのCEATEC会場の一コマ 撮影:津田建二


IoTビジネスは、端末のハードウエアよりもデータに価値がある。しかもセンサからの生データではなく、多数のデータを意味のある情報へ変換したデータである。これまでは日立製作所やNEC、富士通などIoTシステムメーカーがデータを情報に変換することに強い関心を持っており、デバイスメーカーはシステム側の単なる下請けの部品屋にとどまる恐れがあった。デバイスメーカーはIoTセンサ端末やモジュールを展示してだけにとどまっていたからだ。

今回、村田製作所は、オフィスやレストランなどの空間に配置したセンサからのデータを収集・解析して、空間にいる顧客やホスト側の人間の人数や配置の見える化を提供するプラットフォーム「NAONA」を提案した。これを使えば、例えばオフィス内の雰囲気や生産性、快適性、満足度などの現象を空間的にとらえることができ、オフィスでの働く環境を改善することを目指す。具体例はまだないが、今回はセンサ端末メーカーもデータを価値のある情報に変えサービスを提供していくという新ビジネスモデルを見せたもの。


図2 ムラタの提案するIoTプラットフォーム 出典:村田製作所

図2 ムラタの提案するIoTプラットフォーム 出典:村田製作所


ムラタが想定するクラウドベースのIoTプラットフォームですでに実績のあるAyla Networksは、これまでドアロックやエアコンなどの稼働状況や気温などのセンサデータなどを収集・解析してIoT端末側へデータあるいは情報をフィードバックするソフトウエアプラットフォームを提供してきた。このCEATEC 2017では、スマートフォンをIoTのゲートウェイとして使い、IoTデバイスとBluetoothで接続し、クラウド上でデータ解析した結果をスマホで見える化するPaaS(Phone as a Service)を提供している。

IoTのデータの解析に一役買うのがAIだが、IoTシステムはまだそのレベルに至っていない。ただ、AI(ここでは機械学習やディープラーニングを指す)は様々なところで試され始めた。このCEATECで見られたいくつかの事例を挙げると、National Instruments、Ayla Networks、北海道大学、三菱電機、UEI、太陽誘電などが機械学習(マシンラーニング)やディープラーニングを利用していた。

IoTのデータを機械学習で解析し、予知保全に適用した例をNational Instrumentsが見せた。実際にこのシステムを開発したのは、集塵機を製造するアマノ。アマノがNIのテスト用ソフトウエアLabVIEWを使って、集塵機のモーターの予知保全を行うことに成功した。IoTを使ってさまざまな機械を予防保全すると言っても、実際に何を異常として検出するのかその閾値を決めることが難しい、また正常を異常と誤判定することも多い。そのための解析アルゴリズムの開発がそうたやすくはない。いったんIoTに飛びついたものの、あきらめたところも多いと言われている。

そこで、アマノはモーターの異常値を決めるために、統計的な手法を用いた。まず、モーターの異常を音(マイク)で検知し、音のデータを大きさ(振幅)と音色(周波数)の2次元グラフを描いた。周波数は音の周波数成分をFFT(高速フーリエ変換)で求められる。この2次元座標内に音をサンプリングしてプロットするわけだが、正常値の集団を求める必要があるが、ここに統計的に振幅と周波数の平均値と偏差値(平均値からのズレ)を求め、それぞれの相関係数を算出する。そして、2次元座標での平均値(重心のようなもの)とそこからの距離(偏差と相関係数)を統計的な手法を元に境界線を引く。

LabVIEW画面(図3)では、左の画面がノイズを含むモーター音の生データで、モーターを1000回転くらいさせデータを取得する。真ん中の上はFFTで、周波数に変換している。右の画面が統計データとなる。赤い線は正常値からの偏差が1%、黄色が5%の軌跡曲線となる。赤い線で表した境界よりはみ出た赤い点が異常値とみなす。赤い点が多くなると異常の警告を出す。この方法だと、異常値を求めるための学習アルゴリズムを考え出す必要がない。あくまでも統計的な手法に従って偏差値を求めるだけであり、LabVIEWで簡単に求められる。


図3 IoTのデータ解析に機械学習を利用 National InstrumentsのLabVIEW画面

図3 IoTのデータ解析に機械学習を利用 National InstrumentsのLabVIEW画面


図3のデモでは、実際にファンを回転させ、マイクで音を拾い、まずは統計的な回転のデータを入力し、平均的な音のデータを収集する。そのあと、ボールペンのような細いモノでマイクとファンの空間を横切らせ、異常な音になるように操作した。これによって、異常な波形データや統計データを作り出し、図示している。

家庭用機器をクラウドとつなげて、エアコンや玄関ドアの履歴や稼働状況などを把握し、次の商品企画に生かすためのデータを収集・管理・解析するためのプラットフォームを提供するのがAyla Networksだ(参考資料2)。同社はこれまでPaaS(Platform as a Service)業者と言っていたが、BluetoothデバイスとつなぐスマートフォンをゲートウェイとみなすPaaS(Phone as Service)でもあると最近言い出している。家電製品をインターネットにつなぐ場合に、直接インターネットにつなぐIoTデバイスを取り付けるのではコストがかかる。このため安価なBluetoothデバイスでスマホとつなぎ、スマホからインターネットにつなぐ方が安く、普及するとみているからだ。

Aylaは昨年、セミコンポータルで紹介した(参考資料2)後、日本の顧客も増えた。昨年の富士通ゼネラルに加え、リンナイや日立製作所などとも取引を始め、さらに名前を出せない企業もあるとしている。日本に限らないが、顧客が増えたのは、セキュアで安定、スケーラブルだからだという。顧客は米国、中国に多いとしている。スマホ利用だとユーザーの利便性が高まり、カギをかけたかどうか、エアコンのスイッチを消したかどうかのチェックが簡単にできる。スマホでみるためのアプリケーション開発ツールAMAP(Agile Mobile Application Platform)も提供する。セキュアなのは、デバイスからクラウド、さらにスマホへと送るデータには全て暗号をかけており、それも1回ごとにカギを変える方式だという。

このほか、会期中、三菱電機は1本のマイクで同時に3人まで話をしても聞き分けられる音声分離にディープラーニングを用いた。話者を事前に登録しないが、100名の音声を予め学習させておく。言葉ではなく音声の質と内容のパターンを入力するという。また北海道大学は、小型パソコンボード「ラズベリーパイ」を組み込んだボード上にCNN(畳込みニューラルネットワーク)のアルゴリズムを組み込み、テキストにした男女の会話(英語)のやり取りを自然に行うスピーカーを流した。合計100ニューロンの2層のニューラルネットワークを構成している。目的はあくまでもオープンプラットフォームのハードウエアとソフトウエアを作成し、広く使ってもらうことだとしている。

人工知能の開発企業を謳うベンチャーのUEIは、AIのアルゴリズムを実行するハードウエア(ハイエンドサーバー)と、ダッシュボードなどのソフトウエアをバンドルで提供しているが、ディープラーニングを使った文字認識をほぼ100%で読み取れる、と発表した。ただし手書き文字ではなく、プリントアウトした紙で例えば、タクシーの領収書で文字がかすれていても読み取れる。これは紙に書かれた情報を日付や料金などの位置のレイアウトを認識し、その領域内の文字を認識し、きれいな文字に出力する。数百枚の学習で多少レイアウトが違う領収書でも判別できるという。

CEATECの期間中、「一般社団法人 日本ディープラーニング協会」(図4)の設立発表が、幕張メッセの会場であった。東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊氏を理事長とする協会設立の活動目的は、産業活用促進、人材育成、国際連携など。様々なカンファレンスやワークショップの開催を通して、産業が必要とする情報を提供し、資格検定制度を設けて2020年までに3万人の技術者を育成することを目標に掲げている。


図4 日本ディープラーニング協会設立

図4 日本ディープラーニング協会設立


パターン認識や「巡回セールスマン問題」の得意なAIと似た超並列処理技術として量子コンピューティングがある。富士通は量子アニーリングをCMOSデジタルLSIで実現した。量子コンピュータは極低温の0.001K程度まで冷却しなければ量子効果を観測できないが、量子アニーリングはいわば最適化問題を解くためのアルゴリズムであり、冷却する必要はない。ポテンシャルの山と谷を描くと、局所最小値が現れるが本当の最小値を求めるためには近くの低い山を越えたりトンネルさせたりする必要がある。そのために磁界を加えたり温度を加えたりする。適度に揺さぶりながらポテンシャルの本当の最小値にたどり着いた点が最適値となる。この量子アニーリング回路では1024ビットの量子ビットを使う専用のCMOS回路を作った。

参考資料
1. さらば民生、こんにちはビジネス応用−CEATEC 2017(1) (2017/10/05)
2. ビジネスになりつつあるIoTシステム (2016/05/20)

(2017/10/12)

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