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「半導体テスターは好調、IDMからファブレス、OSATへも」、NIのSTS

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National Instrumentsは、ソフトウエアベースの測定器メーカー。デバイス技術者はPXIなどの筐体(シャーシ)をハードウエアとして使い、測定器の設定や測定すべきデバイスや回路を描くツールLabVIEWを表示するパソコン機能でデバイスを評価する。デバイス評価だけではなく量産にも使えるSTS(Semiconductor Test System)テスターを出荷してきた同社のSTSの現状をレポートする。

NIが半導体テスターに参入したのは2年前。STSと呼ぶ量産向けのテスターを世に問いた。STSは実際には売れているのだろうか。日本の半導体産業を見ていると、ムーアの法則は飽和し始めた、ムーアの法則は死んだ、だから半導体産業は行き詰ってきた、などネガティブな報道が多い。しかし、これらは、メモリやプロセッサなどのデジタル製品のみ。「アナログやミクストシグナル製品はむしろ、この8〜9年安定に成長してきた」とNIの半導体テスト部門主席市場開発マネージャーのJoey Tun氏(図1)は言う。

現実の半導体製品は、これまでの民生、産業用などから社会インフラ(電力やガス・水道・通信)や宇宙航空、医療・ヘルスケア、金融、農業、教育、建機などさまざまな分野へと広がってきた。しかもCPUを使った「組み込みシステム」に使われるようになって以来、各分野での現実の世界とコンピュータを結ぶアナログ回路やミクストシグナル分野も拡大している。その結果、半導体産業は従来の設計・プロセス技術のハードウエアに加え、ソフトウエア技術やアナログ技術の重要性が高まってきた。


図1 NI製品マーケティング担当VPのKevin J. Ilcisin氏(左)と、半導体部門主席市場開発マネージャーのJoey Tun氏(右)

図1 NI製品マーケティング担当VPのKevin J. Ilcisin氏(左)と、半導体部門主席市場開発マネージャーのJoey Tun氏(右)

NIが注力する半導体テスターはメモリやプロセッサのようなデジタル分野ではない。アナログやミクストシグナル、RFなど社会とのインターフェースとなる分野だ。「全てのデバイスがもっと複雑になり、I/Oもたくさん持つようになったため、A-D/D-Aコンバータなどのミクストシグナルやアナログは増えている」と同社製品マーケティング担当VPのKevin J. Ilcisin氏(図1)は語る。「さらに、変換デバイスが自動車や安全性、ADAS、レーダー、IoT、5G、などの時代にもアナログやミクストシグナルのICはさらに増えてゆき、半導体産業は、健全な成長をしていく。アナログやRFのテストでは、半導体デバイスは高速化がさらに進む」とみている。

半導体研究者はムーアの法則は飽和気味になっているというが、このこともNIは理解している。2012年のITRSではMore MooreやMore than Mooreといったコンセプトが登場し、アナログやRFの集積度はもっと上がるだろう。「同じパッケージ内でもっと多くのトランジスタやICの数が増える。すなわちパッケージ技術自身にもイノベーションが起きている。FOWLP (Fan-Out Wafer Level Packaging) や先進プロセッサのパッケージには、個別トランジスタやキャパシタなどの部品も多数内蔵するようになった」とTun氏は言う。

デジタルLSIのテスターに参入する予定があるか、との問いには、「参入するつもりはない」ときっぱりと否定する。「ハイエンドプロセッサや高集積のアプリケーションプロセッサ(SoC)テスターには参入しないが、8/16ビットの組み込みCPUコアやマイコンなどには、参入することを昨年アナウンスした」とアナログに近いICのテストに力を入れる。それは「カスタマに対する価値が、RFやアナログにあるから」である。

ムーアの法則のその後に関しては別の観点もある、とIlcisin氏は語り始めた。「コンピューティングに関して、従来の(1チップ上の平面に関する)スケーリングではムーアの法則によるCMOSデバイスの限界が来ることはわかっているが、高集積化は求められており、さらなるイノベーションにも期待している。また、コンピュータの歴史は、メインフレームから分散処理やミニコン、オフコン、パソコン、ノート、タブレット、スマートアシスタントなど多様なコンピュータを生み出した。また高速のI/Oバンド幅も求められるようになってきており、データセンターやクラウド化なども強化されており、アーキテクチャの革新が起きてくる。NIは次世代の高速バンド幅のコンピューティング、例えば5Gや6Gさえもサポートする。ムーアの法則が飽和しても、これから高速のバンド幅が強く求められ、データを異なる場所に転送する応用で半導体が多く使われるようになる」。

Tun氏は、「5Gはこれから半導体にとって、主要な破壊的なテクノロジーとなるだろう。例えば将来の5Gチップでは、アンテナも1つのパッケージの中に搭載することになろう。おそらくアプリケーションプロセッサにメモリ、さらにRF、アンテナなどが1パッケージに入るかもしれない。RFテスト技術では、アンテナがトップに搭載され、RFやデジタル回路などがコンバージェンスすることで、1パッケージに入ったICをテストすることになる」と未来のRFチップのテストを思い描く。

NIWeek2017の基調講演では、アナログICの大手Analog Devices社(ADI)の計測・宇宙・防衛担当VPのLeo McHugh氏がゲスト出演していたが、ADIはMEMSデバイスのテストにPXIベースの測定器を使ってきており、そのメリットについて述べている。「(PXIベースのSTSを使ったことによって)、測定器への投資は1/11に減少し、重量は1/66、体積は1/15、消費電力は1/16に減った」。この結果、量産テスターSTSにそのまま移行できるというメリットも強調していた。量産用テストプログラムのコードを再利用でき、試作品での評価をそのまま使え、修正も簡単、と述べている。STSテスターがPXIベースなので、アップグレードも容易である。

STSテスターの売り上げは着実に増えており、プラス成長が続いているという。具体的な顧客の名前は言えないが、IDMやファブレス、OSATといった半導体メーカーに収めているとしている。

測定器に使用する半導体デバイスにも言及する。パソコンボードの核となるCPUとして、
NIはIntel製を使ってきており、またプログラマブルなハードウエアとしてXilinxのFPGAも使ってきた。IntelはAlteraを買収したため、FPGAはこれからどうなるのか。Xilinx社のFPGAからAltera製を使うことになるのだろうか。これに対して、Ilcisin氏は「Intel、Xilinx共に当社のサプライチェーンのパートナーで、長い間パートナーシップを構成してきた。共に究極的なゴールは共に顧客のニーズを重視すること。IntelもXilinxもイノベーティブな企業で、共に顧客を支援してきた。NIは共に評価している」と述べている。

Alteraがもっと良いFPGAを開発したらどうするか、との質問に対しては、「IntelもAlteraもロードマップをもっとオープンにする企業だろうから、NIはそのロードマップを待っている」とIlcisin氏は答えている。オープン化を強調するNIとしては、おそらくXilinx、Altera両方を使うようになる可能性がある。むしろ、「シングルベンダーを顧客が嫌うのなら、2社のFPGAを使うかもしれない」とTun氏は推測する。

CPUベンダーとしてIntelと親密な関係だが、HPCではARMコアとメモリを1チップに集積するような構成も提案されている。今後、ARMコアを使う予定はあるだろうか。これに対して、「NIのテクノロジーチームは、ARMアーキテクチャも評価している」とIlcisin氏は言う。「今のところ、高性能を優先していると言っているが、顧客のメリットが特別のアーキテクチャの限界を決めるだろう」とする。

その根拠として、FPGAをよく使うのは超並列な演算ができるからで、高速処理が可能になるからだという。「高速性を評価してLabVIEWの高速性につながれば、FPGAを使った高速の測定システムになる。高速の測定アルゴリズムをARMのマルチコアアーキテクチャで作成し、エコシステムの有無や利害得失に関してその測定アルゴリズムをFPGAで作り評価してほしいとカスタマは要求している」とIlcisin氏は述べる。

PXIシャーシにFPGAを使っているが、プログラマビリティと同時に高速性の両方の特長を使うようになっている。例えば、VSTを内蔵したPXIでテストすると、デジタルプレディストーションもパワーアンプのエンベローピングも超高速で評価できるという。

STSテスターは未来志向のテスターでもある。PXIプラットフォーム上で作られているためだ。NIのPXIシャーシは半導体産業だけではなく(むしろ半導体産業は後発)、通信や民生、産業、宇宙・航空、ロボットなどさまざまな案業の研究開発部門で使われてきた。これらの分野で半導体化を進めていれば、STSにそのまま移行できる。だから今後5G、民生(モバイルやIoT)、運輸、交通、安いモバイルフォンなどのICをテストするようになる。このため、需要はかなり増えてくるとみている。

また、半導体産業は、リーマンショックの2008〜2009年以来ずっと、安定成長してきた。Tun氏は、「半導体産業は世界のGDPとの相関を持つようになり、リーマンショックの時に半導体産業も沈んだが、それ以来、GDPと半導体は相関を持ちながら安定成長をしてきた」と認識している。

(2017/06/07)

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