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IntelがリテールIoTに取り組む理由(わけ)

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パソコン向けプロセッサを推進してきたIntelは、パソコン市場の減衰が続く中、プラス成長を達成してきている。2016年は前年比7%増の594億ドル(6兆円強)、オペレーティング利益129億ドルという超優秀な業績を残している。市場環境が悪い中、勝ち組になれる秘訣は何か。

図1 インテルジャパン代表取締役社長の江田麻季子氏

図1 インテルジャパン代表取締役社長の江田麻季子氏


Intelの凄さは実は今始まったことではない。パソコンが成熟する産業であることは10年前からわかっていた。だからこそ10年以上前から手を打ってきた。ワイヤレス充電、セルラーネットワークの高速モデム(LTE、LTE-A、5Gなど)、不揮発性メモリ、ファンドリサービス、FPGAなど、成長できそうな分野や製品に向けありとあらゆる手を打ってきた。こういった地道な技術開発の努力が今、実を結びつつある。もちろん、IoTにもいち早く手を打ってきた(参考資料1)。今は、AI(人工知能)、クルマ、5G通信と、新しい分野にも積極的に研究開発投資を行っている。

元々、Intelが狙うIoTは、センサノードそのものではなく、ゲートウェイより上のデータセンターやクラウドインフラなどのレイヤーだった。最近ではARMの独壇場と見られていたIoTデバイスそのものにも取り組んでいる。IoTシステムの中で企業が最も稼げるものは、「データの価値」である。だからこそ、ソフトウエアプラットフォームベンダーやサービスベンダー、ITハードウエアメーカー、部品メーカーなどが参入している。センサからのデータを収集・蓄積・分析した結果、データは価値ある情報に変化する。Intelの狙いはまさに、価値ある情報を顧客に提供することにある。だから、Intelがさらなる成長に向けた戦略として、インテルジャパンの代表取締役社長の江田麻季子氏(図1)は「データカンパニーになる」と言明している。

そして、Intelが狙うIoTの2大市場は、工業用IoT(IIoT)と、リテール(小売商店・店舗)分野である。これまで同社の展示会出展のデモでは、IIoTがほとんどだった。3月7日から東京ビッグサイトで始まった「リテールテックJAPAN 2017」において、同社は初めてIntelが考えるリテールソリューションを見せた。

例えば、IntelブースにはIntel製品ではなく、協力企業の展示が多く、さまざまなRFID認証システムを展示している。Smartrac社やAquabit Spirals社などは、洋酒や洋服、ポスターなどにRFIDやNFCを置き(図2)、スマートフォンで読み取り、商品情報や購入画面を表示することで支払いまで済ませることが可能になる。東急ストアの実験では牛肉パックに張り付け、スマホで読み取ると、その料理のレシピの画面を映し出す。NFCではフリーマーケットでの決済手段にもなる。RFIDが商品についていると在庫も管理できる。


図2 Aquabit社のRFIDのバッチやボタン Smartrac社がフレキシブル基板上に作製(左のロール)

図2 Aquabit社のRFIDのバッチやボタン Smartrac社がフレキシブル基板上に作製(左のロール)


また店舗にデジタルサイネージパネルを設置すると、顔認識カメラによって、顧客の欲しがる情報を過去の履歴と紐づけされて表示することができる。ここでは、Intelが開発してCreative Technologyなどのメーカーが製造する360カメラ、RealSenseで顔を撮影する。さまざまな客が何人、何時から何時まで来ていたかというデータもクラウドに上げ分析する。決済には指紋認証と顔認証の併用などのデモもあり、手ぶらで決済が可能になる。

大型のデモでは、島精機製作所が編み機を設置して、セーターやワンピースなどを製作していた。これはコンピュータ上で、色や柄、パターンなどをデザインし、そのデータを元に編み機で糸を編んでいくというデモだ。世界で一つだけのワンピースや洋服を1時間以内で製作する。まさにオンデマンド洋服である。島精機はプリント服を製作するための機械も製造している。

なぜIntelが小売店舗(リテールショップ)か。小売店舗は売り上げをもっと上げたいと思っているが、これまでの手法では人をたくさん採用する、店舗を拡大して品物数を増やす、程度のことしかできなかった。要はいたずらにコストがかかり、利益を生むことが難しくなっている。この分野はIT化が大きく遅れている市場である。

ここにITを導入するとどうなるか。初めての客と常連客の差、客ごとの行動パターン、在庫のリアルタイム管理、顧客のセキュリティ、顧客へのコンテキストアウエアネス(行動パターンから今後の望みを先取りすること)、スタッフの最適配置など、これまでできなかったことができるようになる。顧客の店に対する愛着度(Fidelity)を上げられるようになると、当然売り上げ増につながる。店側は、1回の投資と、少ない人的リソースですむようになる。


図3 Intelのイメージするレスポンシブ・リテールプラットフォーム

図3 Intelのイメージするレスポンシブ・リテールプラットフォーム


テクノロジ的にはRFID、サーバー、クラウド環境、センサ、Bluetoothビーコン、Wi-Fi、ゲートウェイ(エッジコンピューティングも可)など組み合わせて使える技術が揃ってきた。図3のようなIoTショップでは、来店した顧客の今の行動と、過去の履歴データから得られる深い知見を元に購買行動を支援する。例えば、前回店に現れた時に手に取りながら、商品棚に戻した商品に対して、5〜10%割引の情報を顧客のスマホに送る、ことが可能だ。インターネットのeコマースサイトで見た商品への誘導や、欲しい洋服の色や柄、サイズの在庫情報をリアルタイムでの表示など、購買に直結するソリューションを提供できる。もちろん店の商品にはRFIDラグを付け、人認識可能な360度カメラ、店内の行動の動線を管理、これらのデータを収集・蓄積・分析するためのエッジコンピュータなどを設置する。

こういったソリューションにはIntelのプロセッサチップが不可欠で、エッジコンピューティングをはじめ、センサデータの収集・管理から解析に至るデータ処理を行う。


参考資料
1. IntelがIoT分野に参入、セキュリティ重視のハイエンド市場を開拓 (2013/11/18)

(2017/03/09)

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