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半導体テスターSTSは再利用と低コスト化のプラットフォーム

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National Instruments社が半導体メーカー向けのテスターSTS(Semiconductor Test System)をリリースしてから2年経った。日本市場での手ごたえはどうか。来日した、PXIプラットフォーム&モジュラー測定器部門担当のTravis White氏にSTSの最新事情について聞いた。

Travis White, Section Manager – PXI Platform and Modular Instrumentation

Travis White, Section Manager – PXI Platform and Modular Instrumentation


セミコンポータル: National Instrumentsが半導体テスターSTSをリリースされて以来、これまでの感触はいかがですか。またSTSシステムで日本のカスタマを回った感想はどうでしょうか?

White氏: 今のところ世界各地を回り、成功したという結果です。ターゲットはアーリーアダプタ(初期に製品を採用する企業)でしたが、彼らともヒアリングを続けています。日本に限ると、もっと大きな企業と話をしており、何がドライビングファクタでどのように影響を与えるものか、テスト戦略を変えることについての考えも常に聞いています。テスターの採用時期については企業の計画サイクルとも絡みますので、いつバリューを生むかを考えて、テスターを切り替えることになりそうです。
STSを従来のATE(自動テスター)と比べた場合、最も大きな違いはコスト構造です。あるデバイスをテストする場合、パイロット生産の利用に向くと言うエンジニアもいるし、生産コストが問題と言う人もいます。つまりいろいろなレベルの投資、さまざまなレベルのリターンやROI(投資効率)を議論しています。

セミコンポータル: 日本でSTSを採用した企業は何社ありますか?

White氏: 日本でSTS採用率の正確な数字は持っていません。STSは新しい概念のテスターですから、アーリーアダプタ―から、そうではない企業まで幅広くもっとディスカッションが必要なのかもしれません。今後2~3年するともっと明確になるでしょうね。

セミコンポータル: 日本のユーザーにとっては、STSシステムを使うモチベーションは何ですか?

White氏: 全ての尺度はコストだと思います。タイムツーマーケット(開発期間)、維持費、装置価格、どのくらいの期間の投資金額なのか、などを考えながら投資するでしょう。開発効率や、開発と生産での再利用を問題にする顧客もいます。
一口に、PXI(PCIバスを基本とするNIのテストシステム)と言っても、私が使っている大型測定器と私が使っているPXIハードウエアとの間には大きなギャップがあると思います。同じ測定器ハードウエアでも、生産中の半導体の特性評価の間でも違いがあると思います。
正直言って、顧客ごとにコスト構造の考え方が全く違います。しかし、開発と量産時のテストやそれに関連する技術のコンシステンシー(開発と量産の一致性)が問題だと見ています。大型コンピュータとよく似た、大きなATEでは、特にアナログやRFでは、コスト構造は当てはまりません。毎回、いろいろ異なるディスカッションの中で、我々が意味するトピックスはシフトしていきます。タイムスケールを見ながらどのように始めるべきか、いろいろな実証コンセプトの紹介、などディスカッションする話題は尽きません。

セミコンポータル: アドバンテストやテラダインと競合していると感じますか。

White氏: 競合かどうかは、顧客が決めることですが、いろいろなタイプのテスター間でキャパシティ(テスト設備の能力)を共有することがよくあります。つまり、既存のテスターを補完するのです。これは、インタラクション(相互協力型)モデルと言えます。もう一つは、トップクラスのRF測定器ハードですが、例えば今年の8月のNIWeekで発表したVST 2(ベクトル信号トランシーバ2)モデルは好例で、既存のPXIシャーシーにRFのテスターを付け足すだけで済むことに、ずいぶん高い関心を持っていただいています。
これが当社の基本戦略であり、ゴールは、科学研究者にベストなテストツールを提供することです。特に半導体エンジニアには、高速で高性能、高品質のPXI測定器を、開発の初期段階からもいろいろな異なるインタラクションモデルで提供します。すなわち顧客が既存モデルに追加したり、STSのように従来のテスターと置き換えたり、あるいは自分でテスターを組み立てたり、するビジネスで対応します。NIWeekではAnalog Devices社がPXIを使って彼らの回りのインフラに自分でテスターを組み立てて、ベストで高性能、高生産性のライン向けアナログテスターとソフトウエアを構築した例を話しました。

つまり、時には競合メーカーになるし、協力メーカーにもなるという訳です。当社のようなプラットフォーム企業は、競合関係にもなるしコラボレーション関係にもなります。

セミコンポータル: 日本では東芝はNANDフラッシュ、ソニーはCMOSセンサに注力し、その他のメーカーはパワー半導体やアナログ製品にフォーカスしています。アナログやパワー、RFの半導体開発にSTS、VSTは向いていると思います。SiCやGaNなどのパワー半導体用テスターとしてはどう見ていますか?

White氏: NIは常に成長分野と安定分野、衰退分野を見据えておりまして、RFやパワー半導体、パワーマネジメントはこれから成長するデバイス分野です。SiCやGaNなどの新しい材料のデバイスは、顧客の立場から言えば、従来のソリューションでは大変だろうと思います。NIはこういった分野は市場を早く獲得する良い機会だと考えています。

パワーデバイスでは、特にパワーマネジメントICではSMU(Source Measurement Unit)を製品ラインに加えることが重要ですので、早く市場を獲得し早く技術を開発し、製品寿命の長い製品を提供することになります。しかも低電流のSMU、大出力のパワーではウェーハレベル測定も重要です。

NIではPXIのフォームファクターでハイパワーデバイス向けにどのような製品を狙うのか、ということを議論しています。

セミコンポータル: パワーデバイス市場では、扱うパワーが大きければ大きいほど市場は小さくなる傾向があります。どのようなデバイスを狙うのでしょうか?

White氏: 今の段階では、特に狙うべきデバイスはまだありません。ただはっきりといえることは、STSの用途として狙う市場はRF-ICです。これは、従来の測定器と比べて差別化できるからです。もちろん、リファレンスデザインを用意し、デジタルプリディストーション技術などのテスト技法、生産段階でのテスト、などの技術に加え、ハードウエアをFPGAでプログラム変更できるように構成します。これらがNIの差別化技術となります。

NIのターゲットは、エンドツーエンドの特性評価の成功や、ウェーハレベルのテスト、顧客が作るデバイス、CMOSセンサやパワーマネジメントIC、パワーデバイスなどに向け、専用ICから汎用CIまで幅広くカバーします。ただし、パワーデバイスといっても数十WまでのSMUを提供します。

セミコンポータル: VSTのようなワイヤレス通信のテストも重要だと思いますが、そのロードマップは公開していますか。

White氏: 基調講演で見せたようにVSTは周波数帯域幅1GHzと極めて広いVSTバージョン2を発表しました。今後ももっと進化させていきます。ただ、具体的なことはVSTの専門家ではないのでわかりません。

セミコンポータル: 最後に、半導体産業でもプラットフォーム戦略が叫ばれています。NIのプラットフォーム戦略はエレクトロニクスでも役立つと思います。

White氏: そうです。PXIベースのSTSは、キャラクタリゼーション(特性評価)と生産ラインでの間で再利用できることもメリットで、プラットフォームのメリットの一つが再利用といえます。もう一つのメリットは、他の製品ラインをまたがるテストの場合にも使えることです。IPを設定すると、パワーテスト・デジタルテストだけではなくいろいろなデバイスで同じIPを使えることです。さまざまな生産ラインだけではなく、米国と海外の工場でも再利用できることもメリットなのです。
さらにNIWeekでも議論されましたが、顧客からのフィードバックによると、さまざまな業界、半導体業界や民生機器業界などに対しても航空宇宙産業、交通産業でもプラットフォームと標準化は最初に取り上げるトピックとなっています。

(2016/11/24)

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