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ソフトバンク、128本のマッシブMIMOを商用化、容量20GB/月を可能に

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ソフトバンクが第5世代のモバイル通信技術(5G)の一つである128アンテナを用いるマッシブMIMO(Multiple Input Multiple Output)のサービス商用化を9月16日に開始する。5Gは2020年の東京オリンピックの開催に合わせて商用化を予定しているが、この技術は一足先に今あるLTEでそれを利用したもの。

ソフトバンクはこの技術を実用化できたおかげで、毎月の使用容量20GBを月額6000円で提供できるようになった。同社は従来の最大5GBの容量を5000円で提供しており、20GBにすると1万6000円にもなった。アンケートをとると毎月最大5GBは満足できないレベルの顧客が多く、容量を増やしたいが価格が高いため、容量を増やすことに多くの顧客は二の足を踏んでいた。


図1 モバイルデータのトラフィックは10年間で2300倍に増加

図1 モバイルデータのトラフィックは10年間で2300倍に増加


ソフトバンクによれば、モバイルデータのトラフィックは、2006年と比べ、10年間で2300倍も増加しているという(図1)。この傾向はこれからも続く。VRコンテンツや、ライブ中継、4Kテレビ、動画投稿などデータトラフィックがさらに膨らむ傾向がはっきりしているからだ。通信オペレータとしてこのまま指をくわえている訳にはいかない。このような大トラフィック時代を予測したのが今回のマッシブMIMO技術だ。

これは、アンテナを128本使って大容量化に対応したもの。10年前と比べ、ソフトバンクの基地局は、12倍も増えたという。特に都市部では、10〜50メートルごとに基地局があるとしている。過密な都市部では基地局をこれ以上増やさずに容量を増やさなければならない。そこで、ソフトバンクが進めている5Gプロジェクトは128本のアンテナを使うマッシブMIMOを開発した(図2)。


図2 商用化する128本のマッシブMIMO 出典:ソフトバンク

図2 商用化する128本のマッシブMIMO 出典:ソフトバンク


従来、FD-LTE方式ではアンテナは2本、TD-LTE方式では4本または8本使っていた。今回はそれを128本使うという訳であり、最大10倍のトラフィックに対応できるとしている。マッシブMIMOが都市部で混雑緩和に役立つのか、都内4カ所(浅草、新橋、飯田橋、新宿)で実験もしている。それによれば、マッシブMIMOを使わない場合と比べ、データレートは平均6.7倍高かったことを確認した(図3)。


図3 都内4カ所での実験では平均6.7倍データレートは速まった

図3 都内4カ所での実験では平均6.7倍データレートは速まった


このシステムでは、128本のアンテナを利用して、モバイル通信利用者に向けてビームを絞る、ビームフォーミングと空間多重技術も使っている。モバイル通信では移動することが当たり前であるから、使用者を追いかけるビームトラッキングを使っているか、というセミコンポータルの質問に対しては、「当初から移動する場合の問題も検討してきた。そのメドが立ったから今回商用化に踏み切った」と答えるだけにとどまった。ということは、ビームトラッキングしながら、基地局から基地局へのハンドオーバーの問題もクリアしているのであろう。ソフトバンクは、TD-LTE方式で実績のある唯一のオペレータであり、TD-LTEでの経験が生きた、と語っている。

同社は16日から国内43都市、100基地局からサービスを開始するという。ただし、13日から顧客へのサービス開始を受付していく。iPhone 7購入者には優先して9日から受け付けるとしている。

(2016/09/09)

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