セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

NI、「アドバンテストとは競合しない」測定器で半導体テスターを強化

|

研究開発用のフレキシブルな測定器を開発している米National Instruments社が半導体テスターを充実させてきた。8月にテキサス州オースチンで開かれたNIWeek 2016において、抵抗変化型メモリ用のテスターをはじめ、テストパターン発生器とその開発ツール(ソフトウエア)、RF半導体用テスターVST2.0、2年前に発表したSTSの進化状況などを発表した。

図1 抵抗変化メモリを効率良くテストする 出典:National Instruments

図1 抵抗変化メモリを効率良くテストする 出典:National Instruments


新しい抵抗変化型メモリ(図1)のテストでは、従来の半導体パラメータ・アナライザに代わり、PXI(PCI eXtensions for Instruments)ベースの汎用機でテストする方が短期間に結果がわかる、と同社Automated Test Marketing担当ディレクタのLuke Schreier氏(図2)は述べた。従来だと、DC/AC特性を調べるのに、SMU(ソース測定ユニット:電源を供給して電圧あるいは電流を測定する装置)やAWG(任意波形発生器)と同期を取りながら、測定していた。

ここにPXIベースの測定器を使えば、DC測定も高周波測定もずっと速く行える。同期をとる回路がPXIシャーシ内部のバックプレーンに搭載されているからだ、とLuke Schreier氏は語る。初日の講演では、従来のパラメトリックアナライザをベースに測定するシステムでは6カ月かかっていたテストがPXIベースにするとわずか2週間で済むとしている。「これは、FPGAベースのI/Oカードを使っていることも高速テストを可能にしている」と言う。「従来だと最も遅いループ速度の工程で何かを設定する場合でも、FPGAを使ってハードウエアでループが構成されているため速い」とする。このことは、もっと多くのデータを取得できるというメリットに通じる。


図2 National Instruments社Automated Test Marketing担当ディレクタのLuke Schreier氏

図2 National Instruments社Automated Test Marketing担当ディレクタのLuke Schreier氏


半導体デバイス測定用のモジュールとして、最小電流10fAと微小電流を測れるSMUであるPXIe-4135、7 1/2ケタのDMM(デジタルマルチメーター)PXIe-4081も発表した。

デジタルIC測定用の新製品では、新しいデジタルパターン計測器NI PXIe-6570とパターンエディタNI Digital Pattern Editor(図3)をリリースし、これまで以上にフレキシブルにいろいろなテストに対応できるという。従来だとテスト用のプローブカードをもっと大きくしてほしいとか、消費電力が大きいから液体冷却を要求する、多チャンネルへの対応などの要求があった。今回のPXIベースの測定器では消費電力は低いうえにFPGAでカスタマイズできるため、これらの要求に答えることができるとしている。しかも、FPGAのプログラミングはグラフィカルなLabVIEWソフトを使ってできる。


図3 デジタルICのテストパターンを開発し実行する 出典:National Instruments

図3 デジタルICのテストパターンを開発し実行する 出典:National Instruments


以上のような新製品に加えて、進化を遂げているSTS(Semiconductor Test System)も紹介した。2年前にセミコンポータルは、DC/ACテストや高周波RFテスト(sパラメータ測定)などを行える量産用のテスターとしてSTSを紹介したが(参考資料1)、今回は特に無線通信測定機能を充実させている。

先月リリースしたRF測定用のモジュールVST(Vector Signal Transceiver)2.0のPXIe-5840 (参考資料2) もPXIシャーシに搭載できるためSTSに内蔵する。また最大26GHzのミリ波用sパラメータも測定できるほか、RFパワーアンプの測定にも対応し、最大+38dBmの送信パワーを測定できる。パワーアンプでは消費電力を下げるため、パワーアンプの電源電圧を一定にせず信号強度に応じて変化させるというエンベロープトラッキング機能も追加した。この技術は、任意波形発生器を使ってパワープロファイルを作り出し、スマートフォンやIoTデバイスなどのバースト通信と整合を図りながら消費電力を下げるもの。これによってバッテリ寿命を延ばすことができる。STSではエンベロープトラッキング技術の特性を正しく評価する。

パワーアンプは大電力を送信するため、出力を増すにつれ歪が増加する傾向があるが、「歪を抑えるデジタルプレディストーション(DPD)も重要だ」、とSchreier氏は言う。先月、発表されたVST 2.0では、出力を上げていくにつれ、線形性が失われ歪が大きくなっていくことに対して逆の歪を加えることで線形性を補償するというDPDを紹介したが、NIはプレディストーションのアルゴリズムを開発、それをFPGAに組み込んでいる。STSにVST2.0を組み込むことで、高出力パワーアンプを正確に評価できるようになる。

2年前にSTSを紹介した時はファブレスのCirrus LogicとIDTが採用した事例を紹介していたが、Schreier氏は「実はもっと多くのカスタマを持っているが、名前を公表できなかった」と言う。今回の講演ではInfineon Technologiesが使っていることを明らかにしたが、カスタマの数は毎年2倍のペースで増えてきたとする。この中には日本のユーザーも含まれているが、名前を明らかにできるのは上記の3社だけ。ユーザーとしてはIDM(垂直統合型半導体メーカー)やOSAT(後工程の請負メーカー)、特性評価するR&Dセンターなどがある。STSの最大のメリットは、アナログやRF、パワーマネジメントICのテストを開発から量産までスムースに移行できることである。STSはPXIシャーシ用のビークル(Vehicle)だとしている。

Schreier氏は、アドバンテストの製品はSTSとは競合しない、という。「アドバンテストのテスターは、むしろメモリやマイクロプロセッサなどSoCの量産テストに向いており、競合するのはNIではなくTeradyneでしょう」と語った。

参考資料
1. NI、RF/ミクストシグナルIC向けフレキシブルなテスターをリリース (2014/08/07)
2. 5G通信、802.11axに対応可能なソフトウエアベースのRF測定器をNIが発売 (2016/07/13)

(2016/08/19)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.