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NI、プラットフォーム戦略を追求して40年、さらに磨きへ(前編)

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プラットフォーム戦略をDr.Tが1976年の創立時から追求してきたNational Instrumentsが計測向けプログラミングツールのLabVIEW(ソフトウエア)を世に出して30年を迎える。いわば、ハードもソフトもプラットフォーム化して時代を先取りしてきたNIの戦略は、超少量多品種に対応しなければならないIoTを作る半導体メーカーの指針になろう。

図1 NIWeek 2016で講演するJames Truchard社長(通称Dr. Tで親しまれている)

図1 NIWeek 2016で講演するJames Truchard社長(通称Dr. Tで親しまれている)


NIは計測するためのグラフィカルなブロック図で構成されたシステムをテストするツールLabVIEWをソフトウエアとして、PCIベースの計測・制御モジュールを搭載するPXIプラットフォームをハードウエアとして持っている。測定器のデータを採り込むハードウエア部分をモジュールとし、採り込んだデータをコンピュータ処理し、見える化するのはパソコンである。例えばオシロスコープ用モジュールを差し込めばオシロに、スペクトルアナライザ用モジュールを差し込めばスペアナに早変わりする。

NIの最大の特長は、フレキシブルで拡張性のあるプログラム可能なソフトとハードを持ち続けていることだ。だから設計者(測定器のユーザー)がシステムのコンセプトを実行・確認するのは速い。規格が次から次へと出てくるような流動的な時代でもフレキシブルに対応できる。少量多品種の決め手になる。しかもソフトもハードもプラットフォームとしているため、一から作り直す必要はない。LSIチップの設計にも通じるところがある。

研究・開発向けの測定器を開発しているNIだからこそ、最先端のテクノロジートレンドがどこに向いているか、というテーマを常に追いかけている。今、NIが注目するテーマは、5G、ビジョンシステム(カメラとその画像解析含む)、半導体(IoTや少量多品種向け)、クルマ(輸送機器)、エネルギー、宇宙・航空という6つの分野である(図2)。


図2 NIが注目する研究開発の6大分野 出典:National Instruments

図2 NIが注目する研究開発の6大分野 出典:National Instruments


測定器は従来なら、センサやプローバなどからのデータ収集、波形解析などのデータ解析、ディスプレイでの見える化表示、という流れだけだった。これだけでは研究開発現場からの要求に答えられない。今はさらに、信号波形の同期化・高速データ収集、高性能CPUやフレキシブルなFPGA、オープンな接続性、という要素が加わる。いわば合計6つの要素を計測器に持たせている。計測器にはこれらの要素を持たせながら、顧客層にはエコシステムを構築している。顧客には企業だけではなく大学、サプライチェーン、コミュニティを支え機能の追加に簡単に対応する。だから標準化して誰でもが接続して使える測定器を目指す必要があった。オープンな仕様はエコシステムには欠かせない。


図3 初代のLabVIEWが載ったMacintosh SE

図3 初代のLabVIEWが載ったMacintosh SE


測定器を動かすソフトウエアこそがLabVIEWであり、測定すべき対象物を接続回路情報で表現し、データ波形を表示する。さらにデータの加工や、統計処理なども加わる。当初は、図形表示が得意なパソコンとしてMacintosh上でLabVIEWを動かした(図3)。LabVIEWを発明したJeff Kodosky氏(図4)は講演中、冗談めかして、エンジニアはMacを買う口実ができ、ずいぶん買ったようだ、と述べていた。今回のイベントでは、新製品LabVIEW 2016を発表し、チャンネルワイヤーと呼ぶ機能を紹介した。これにより、並列に動作する二つのブロックA,Bを非同期にデータを流す場合には、ブロックA内のあるノードから配線を外に出してからブロックBの中のノードへ配線する必要があったが、そのような面倒な配線ではなく、ブロックA中のノードからブロックBのノードへと単純に指示するだけで済むように改善した。


図4 Father of LabVIEWと言われるJeff Kodosky氏

図4 Father of LabVIEWと言われるJeff Kodosky氏


NIWeek 2016では、大きなメガトレンドの動きを紹介するのではなく、昨年のイベントでメガトレンドとして紹介されたIIoT(工業用IoT)でのエッジコンピューティング、5G(第5世代の携帯電話通信)を実際に装置にインプリメントした実験例が発表された。これらについては次回、紹介する。

(2016/08/04)

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