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ファブレスに進むならシステムとソリューション充実が不可欠、VIAの戦略

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かつてIntelのx86互換機のチップセットメーカーとして、世界的に名をはせていたVIA Technologiesがファブレス半導体から、マザーボード、組み込みシステム、ソフトウエアも含めたソリューションへと業界の壁を超えた新業態に挑戦している(図1)。しかし、視点をテクノロジーに据えると、ファブレスもソリューションもさほど変わらなくなっていることがわかる。まず言葉を定義しよう。

図1 半導体からボード、システム、ソリューションへ広げているVIA 出典:VIA Technologies

図1 半導体からボード、システム、ソリューションへ広げているVIA 出典:VIA Technologies


ファブレス半導体メーカーは、QualcommやBroadcomで代表されるように、複数のユーザーが求める仕様の最大公約数を求めて、半導体チップに落とし込むことのできるメーカーである。デザインハウスは、顧客のいう仕様をそのままプログラムしてRTLに落とし込む作業を行う設計作業担当企業である。SoCとはプロセッサ(CPU)を内蔵してソフトウエアを組み込み、独自のハードウエア回路(周辺)も盛り込んで差別化できるICのことを指す。組み込みシステムとは、コンピュータと同じCPU、ROM、RAM、周辺回路、インタフェース、ストレージなどのハードウエアを持ち、ソフトウエアで独自性を生み出すシステムのこと。そしてソリューションとは、ハードウエアシステムを動かすためのサービスやソフトウエアも含めて顧客に提供するトータル製品のことである。

このように定義すると、VIAはパソコンのチップセットを設計していたファブレス半導体から、CPUを搭載したSoCも設計している。ボードも全く同じような仕組みである。CPUもメモリも周辺回路もインタフェースも全てボード上に載っており、1チップのSoCとボードとは規模が違うだけである。ボードを筐体に入れ、スイッチや液晶パネル、コネクタなどを追加すればシステムになる。その中には、顧客に向けた独自仕様のソフトウエアや汎用的なアプリケーションソフトやミドルウエア、小規模なハードウエアが入っているから、システムを動かすためのノウハウや最大の性能を得る方法などをVIAが最もよく知っているため、トータルのソリューションとしても提供できる。

このようなVIAがこのほどタクシー大手の日本交通の子会社であるJapanTaxiと協力して、GPSとタクシー無線を一体化したシステムAMOS-825(図2)を開発、日本交通だけではなく、他の国内タクシーメーカーにも販売し始めている。JapanTaxiはタクシー車載機器やソフトウエアを設計しているファブレス企業である。


図2 VIAがJapanTaxiと共同で開発したGPS/タクシー無線システム 出典:JapanTaxi

図2 VIAがJapanTaxiと共同で開発したGPS/タクシー無線システム 出典:JapanTaxi


JapanTaxiは当初、AMOS-825を開発するのにあたり、タブレット単体でシステムができると思い、タブレットやそのボードなどを手掛けているVIAにたどり着き、共同開発を持ちこんだ。VIAはこれまでの実績から、GPS/タクシー無線一体化システムの開発を引き受け、NXP Semiconductorの1GHz動作のi.MXマルチコアプロセッサを使ってシステムを組んだ。このプロセッサは元々Freescaleが開発してきたCPUで、Cortex-A9クワッドコアを集積している。オンボードメモリはDDR3 1GB SDRAM、ストレージは16GBのeMMCフラッシュメモリなどである。さらにWi-Fi、GPS/GNSS、Bluetooth4.0も搭載しており、インターネットとは車内のWi-Fiルータを経て、LTEモバイルネットワークとつながっている。


図3 AMOS-825筐体 出典:JapanTaxi

図3 AMOS-825筐体 出典:JapanTaxi


電源電圧は9〜36V直流で、消費電力は標準7Wだとしている。タクシー無線として送信する場合の電力はかなり消費するため、放熱フィン付きの筐体(図3)にし、タブレットと分離した。AMOS-825本体はダッシュボード内のエンジンルームに設置し、タブレットだけをダッシュボードの上に置く。

VIAは、ファブレス半導体からSoCを企画・設計できるメーカーに変貌したことで、システムやソリューションを提供できる企業へと変身した。組み込みシステムにトランシーバ(送受信機)を加えると、IoT(Internet of Things)そのものになる。IoTをビジネスにするなら、ソリューションまで手掛けなければ顧客をつかむことはできない。VIAのアプローチはIoTへの道を示している。

(2016/03/16)

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