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NXP、ON Semiが買収を完了、決意を語る

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日本法人を持つ、二つの外資系半導体メーカーが仕掛けた企業買収が完了し、それぞれNXP SemiconductorsとON Semiconductorの日本法人が買収後の新生企業方針について語った。ただし、共に細部についての協議がまだ終わっていないため、これから始まる。

図1 NXPセミコンダクターズジャパン代表取締役社長の原島弘明氏

図1 NXPセミコンダクターズジャパン代表取締役社長の原島弘明氏


NXPはFreescale Semiconductorを400億ドルでFreescaleを買収した。売上額60億3000万ドルのNXPと同45億9000万ドルのFreescaleが合併することにより、単純計算で100億ドル企業が誕生した。従業員は4万5000名、エンジニアの数は1万1000名、特許所有数9000以上の半導体企業となった。

新生NXPにより、Freescale Semiconductorの名前は消えることになる。オランダのPhilipsから独立したNXPは、セキュリティ通信、クルマに特化する非メモリの半導体企業。かつてPhilipsはパナソニック(当時は松下電器産業)との合弁で松下電子工業を運営していた。また、FreescaleはMotorolaから独立した半導体メーカーでマイクロプロセッサやマイクロコントローラに強い。NXPセミコンダクターズジャパン代表取締役社長の原島弘明氏(図1)は「Freescaleとは製品がダブることはほとんどなく、相補的な関係を構築できるため、合併により、相乗効果を生み出せる」という。唯一の例外が車載レーダー製品で、これはNXPよりもFreescaleが強かったため、Freescaleの車載レーダー部門を残し、NXPのレーダー部門を中国の政府系ファンドJAC Capitalに売却することを決めた。

製品では、車載半導体と言ってもFreescaleはプロセッサやマイコンが強く、NXPはカーラジオやステレオ、セキュリティが強かった。これらを合体することでクルマ用半導体ではルネサスエレクトロニクスを抜き、トップに躍り出ることになる。クルマはこれからの成長分野の一つであることから、NXPはクルマについて多くを語った。特にセキュアなコネクテッドカーを実現する半導体が揃っていることが強みとなり、今後に期待できるとしている。ミリ波レーダーやビジョンシステムなどのセンシング、プロセッサやセンサフュージョン、セキュリティの演算、パワートレインやシャーシー、ブレーキというアクチュエータ、そしてデジタルネットワーキングやセキュリティなどのビッグデータインフラを狙う。他社にない強みとして、クルマのセキュリティ技術がある。これまでNFCやモバイル決済、パスポート、カードなどのセキュリティ技術をクルマに持ってくることができるという強みだ。セキュリティがIoTでも重要になることは明確である。

一方、半導体の老舗Fairchild Semiconductorを買収したON Semiconductorは、Fairchildが得意であった高電圧製品を手に入れ、低電圧から高電圧までのパワー半導体製品を揃えた。両社を合わせると、2015年の売り上げは50億ドル弱となり、非メモリ分野での第10位に位置することになるという。ON SemiもFreescaleと同時期にMotorolaから独立したがディスクリート主体であったために、華やかなFreescaleに対して地味なON Semiは成長するための戦略を描き、いろいろな半導体企業の一部門などを買収しIC技術を手に入れ、成長してきた。

Fairchildを統合した後、ON Semiはどこに行くのか。産業の中で今後の平均年成長率(CAGR)が5〜9%のカーエレクトロニクス、同7〜9%のワイヤレス、同5〜7%の工場などの産業機器の3本柱を成長分野と定義している。実際、ON Semiの売り上げ構成は、カーエレ、通信、産業の合計が2012年の61%から2014年は71%へと増えた。逆に先細りの民生とコンピュータは合計39%から29%へと低下した。

既に合併前のON Semiでもカーエレに強く、特にヘッドランプがハンドルの向きと同期して前方を照らすシステムでは、ほとんどのICやLEDドライバのパワー半導体を持っている。また、クルマ用のCMOSイメージセンサでも市場シェアは40%だと同社Corporate Strategy & Marketing担当VPのDavid Somo氏(図2)は述べる。


図2 ON Semiconductor Corporate Strategy & Marketing担当VPのDavid Somo氏

図2 ON Semiconductor Corporate Strategy & Marketing担当VPのDavid Somo氏


さらにIoT端末向けのセンサ、パワーマネジメント、MCU、モータコントロール、通信用半導体など持っている製品や開発中の製品は多い。IoT端末のエネルギーハーベスティング化に対してもチップセットソリューションを持つ。

日本では、旧三洋半導体の新潟工場を全社の製造工場として使い、富士通との合弁の会津富士通セミコンダクターマニュファクチュアリングも自社工場のファウンドリとして位置付けている。新潟工場ではWLP(ウェーハレベルパッケージング)を量産しており、ウェーハの生産量は1万枚/週という。会津富士通工場でも現在はまだ7000枚/月しかないが、2016年末までに1万5000枚/月を計画している。

(2015/12/11)

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