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InfineonはInternational Rectifierをなぜ買うのか

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パワー半導体が得意なInfineon Technologiesが、パワー半導体だけに特化しているInternational Rectifierを買収することで合意した。なぜ、パワー半導体同士で買収合併するのだろうか。そもそもIR社は現在の縦型パワーMOSFETの源流であるHEXFETを開発した会社である。

図1 インフィニオンテクノロジーズ・ジャパンの森康明社長(左)とInfineon TechnologiesのBoard memberであるArunjai Mittal氏

図1 インフィニオンテクノロジーズ・ジャパンの森康明社長(左)とInfineon TechnologiesのBoard memberであるArunjai Mittal氏


共にパワー半導体を持つメーカーであるが、Infineonは、かつてドイツのSiemensから半導体部門だけスピンオフした企業。IRはトランジスタが発明される直前の1947年、セレン整流器製造を目的として創立されたパワーマネジメントICの老舗企業だ。Infineonは更なる成長に向けて、M&Aの機会を狙っていた。

Infineonが力を入れているのは3つの柱。エネルギー効率を上げる、モビリティ(自動車などの輸送ビジネス)、セキュリティである。これらを強化するのに必要な「M&Aの機会を常にうかがっている」と同社Region、Sales、Marketing、Strategy Development and M&A担当でボードメンバーである、Arunjai Mittal氏は述べている。同社では、3本の柱に沿った各分野で各社の強みを示した表を作成している。この表を見ながら、Infineonの弱点を整理し買収先を決める。この一環として、今回InfineonはIR社へ最初のコンタクトを今年の3月に行った。

InfineonのM&Aポリシーは、三つある。1) 戦略的な根拠、2) 合併後の成功へのシナリオ、3) 財務上の根拠、であるとMittal氏は言う。

戦略的な根拠として、製品が補完関係にあり、買収したことで成長できる相性があるかをチェックしてみる。製品分野として、両社ともパワーMOSFETとIGBT、IGBTモジュールを持っている。しかしいずれもInfineonが高電圧、IRが低電圧の製品ポートフォリオを揃えており、まともに競争する製品は少ない。新技術として、ワイドギャップ半導体ではInfineonがSiC、IRがGaNを利用しているため、ここでもバッティングしない。デジタル電源技術もともに持っているが、これは応用が違う。Infineonがサーバ利用に対して、IRはデータ通信利用にそれぞれ強い。販売方式も大きく違う(図2)。Infineonが大口ユーザであるキーアカウントのチャンネルに強く、IRは代理店利用の一般売りに強い。


図2 Infineon、IR両社の強み 出典:Infineon Technologies

図2 Infineon、IR両社の強み 出典:Infineon Technologies


2)では、両社の製品ロードマップを見直して一つにまとめる。特に顧客が合併をネガティブに見ないように注意を払っているとする。InfineonもIRもアウトソースを使っているため、これも互いに議論し、例えばIRの製品をInfineonの300mmウェーハラインで製造することでコスト競争力を付けることができる。

3)の財務に関して、IRは2011年に12.3%の営業利益を得ていたが、2013年、13年とそれぞれ-6.5%、-7.7%の赤字を計上していた(図3)。しかし、14年にはすでに6.8%の黒字を出せるようになった。すなわち、リストラが終わり利益を埋める体質になったとみなせる、とMittal氏は言う。目標は15%であるが、2017年度までには15%に戻せると見ている。


図3 IRはリストラ後、利益を出せる体質に 出典:Infineon Technologies

図3 IRはリストラ後、利益を出せる体質に 出典:Infineon Technologies


Infineonが開発してきたSiCデバイスはショットキダイオードとノーマリオンの接合型FET(JFET)。IRが開発しているGaNもノーマリオン。使いにくいノーマリオンFETのゲート入力回路をカスコード接続することで実質的にノーマリオフ動作が可能なことをInfineonは実証している。このゲートドライバは多少改良する必要はあるものの、基本的にはノーマリオン動作のGaN FETにも使えそうだ。シナジー効果を生み出せる。

IRは数年前、経理上の不祥事を起こしたことで大きな混乱に陥った。その後、新しい体制でリストラを行ってきた。Mittal氏によれば、「デューデリジェンスを行った時にはもはや悪い点は何も見つからなかった」と述べる。

両社とも日本法人がある。日本法人の今後については、まだ何も決まっていないという。これから徐々に決めていくとしている。

(2014/09/02)

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