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好調Infineon、ブレーキとアクセルを交互に踏む経営で黒字を増やす

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ドイツのIDMであるInfineon Technologiesが好調だ。先日、発表された2013年度第4四半期(会計年度は10月〜翌9月)の決算では、売り上げが前年比7%増の10億5300万ユーロ(約1442億円)、利益率14%だった(図1)。IDMとして事業の応用分野を絞り込み、メモリの苦しい債務を乗り越えて達成した。キャッシュフロー重視経営を鮮明にしている。

図1 Infineonの2013年度業績 年度末は2013年9月 出典:Infineon Technologies

図1 Infineonの2013年度業績 年度末は2013年9月 出典:Infineon Technologies


Infineonは、かつてDRAM部門をQimondaとして切り離し独立させたものの、2009年にQimondaは破たんした。この結果、資本を注入していたInfineonは、Qimondaの借金を背負った経営を余儀なくされた。急きょ、事業を振り分け、周辺環境と自社の強みを明確に定義し直した。競争の激しい無線通信のモデム部門をIntelに売却し、力を入れる事業を、自動車、産業&電力制御、パワーマネジメント&マルチマーケット、カード&セキュリティの4つの応用分野に絞った。ここにはデバイスからの切り口はない。事業売却により一時的に売り上げは落ちるものの、強い事業を伸ばすことができるため、数年後の結果に期待した。最近のIC Insightsの世界ランキングでは、昨年の14位から今年は12位になりそうだという見通しだ(参考資料1)。

2013年度は第1四半期(2012年10〜12月)に売り上げ8億5100万ユーロ(1166億円)で利益率(売り上げに対する営業利益の割合、以下同)5%と最低の四半期から始まり、利益率を第2四半期7%、第3四半期11%と徐々に上げてきた(図2)。もちろん、売り上げもそれに応じて上げてきた。このように着実に業績を上げられたコツは、市場を見ながら常にブレーキとアクセルを交互に踏むことだ、とインフィニオン テクノロジーズ ジャパンの代表取締役社長である森康明氏は言う。例えば、産業&電力制御部門では、ドイツやスペインなどの政府がソーラーシステムのフィードインタリフ制度を停止させたため、「ソーラーバブルは終わった」と考え、この分野にブレーキをかけた。


図2 2013年度のInfineonの売り上げと利益 出典:Infineon Technologies

図2 2013年度のInfineonの売り上げと利益 出典:Infineon Technologies


ドイツでは、不況期には従業員を解雇しないが、自宅待機で給料は払わなくてよい、というシステムがある。国のセイフティネットとして政府がその期間分だけ援助するという。この制度は、景気の立ち上がり期が見えるとすぐに会社に来て働いてもらえる、というメリットがあり、企業判断を俊敏にできる。優秀な従業員を解雇してしまうと、生産ラインはすぐには立ち上がらない上に、新規採用のための経費は数百万円のオーダーにも上る。今回のソーラーバブルでもこの制度を適用したという。この結果、産業&電力制御分野が立ち上がり始めた第3四半期は即、黒字に転換できた(図3)。


図3 4事業部門の売り上げと利益の推移 出典:Infineon Technologies

図3 4事業部門の売り上げと利益の推移 出典:Infineon Technologies


2013年10月から2014年度が始まるが、その第1四半期の見通しは、売り上げは9億6000万〜10億ユーロ(1320〜1370億円)、利益率は8〜10%と見ている。2014年度全体の見通しは、売り上げを前年比7〜11%増、利益率は11〜14%と見積もっている。目標は15%だという。投資額は6億5000万ユーロ(890億円)程度を予定している。

同社がフォーカスした4つの分野の今後の成長率は、自動車7%、産業&電力制御10%強、パワーマネジメント&マルチマーケット10%強、カード&セキュリティ5%、と見積もっている。産業向けはこれからEtherCATやCC-Linkなどの工業用通信ネットワークやコンピューティングが浸透し、オープン化が鮮明になり発展していくことは明らかだ。パワーマネジメントはあらゆる電子機器に欠かせない。マルチマーケットとしては携帯インフラやスマートフォンなどのRF回路やMEMSマイクなどにフォーカスする。

Intelに売却した無線通信事業はモデムが中心であり、RF回路は残している。スマートフォンなどの携帯モデムは4G、LTE-Aへと方式がほぼ決まっており、モデムメーカーはQualcommやMediaTek、中国のHiSiliconなど限られている。Texas Instrumentsもここは捨てた。しかし、RF回路は、スマホだけではなく、センサネットワークをはじめとするIoT(Internet of things)、カーエレクトロニクス、ヘルスケアなど、多くの成長分野の無線通信機器に使う重要な回路である。受信・送信ともここを握っていれば成長のエンジンとなりうる。だからインフィニオンは手放さない。常に成長分野を見ながら、ブレーキとアクセルを常に交互に踏みながら投資するというスタンスを今後も続けていく。

参考資料
1. メモリメーカーが潤っている2013年〜半導体世界トップ20ランキング (2013/11/11)

(2013/11/26)

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