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ソフト技術者を50%まで増員、組み込みフラッシュを追求するスパンション

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組み込み系のフラッシュメモリに特化し、数量を追わない方向で企業を立て直してきたスパンション(Spansion)。同社CEOのJohn Kispert氏はこれからのアプリケーションを見ながら、将来の夢を語る。その夢の実現のためにファームウエアの技術者をここ3年間ずっと増やし続けてきた。

図1 スパンションの狙う市場のTAM(Total Available Market)は65億ドル 出典:Spansion

図1 スパンションの狙う市場のTAM(Total Available Market)は65億ドル
 出典:Spansion


同社のビジネスは、組み込み向けのNORとNAND、フラッシュ部分の多いSoC(同社はプログラマブルシステムソリューションと呼ぶ)、IPライセンスの4分野をコアとして10%前後の成長を確保してきた。「2012年は10~15%、2013年はもっと良くなる」とKispert氏は見ている。この市場のTAM(アクセス可能な市場規模)は65億ドルあるとする。

スパンション生き残りのカギは人であり、ソフトウエア(ファームウエア)に力を入れてきた。製品開発人員の50%が今やソフトウエア開発者だという。応用分野によっては32nmや22nmといった微細化が必要なところもあるが、スパンションは微細化を追求しない。組み込みフラッシュの価値は、量産規模ではなくアルゴリズムやファームウエアに重点が置かれるようになってきたからだ。

例えばクラウド環境では、大容量ストレージがすぐ思い浮かぶが、この市場はNANDフラッシュのストレージビジネスだけではない。クラウドとデータをやり取りしながら作業するような場合は大容量メモリよりは小中容量のメモリを使う。「高速・ランダムアクセス・セキュリティが要求案件だ」(Kispert氏)。高信頼性・高品質の指標となるエンデュアランス(書き換え可能な回数)と寿命時間(メモリ保存時間)もカギとなる。ここにスパンションの組み込みNORフラッシュが入っていく。


図2 スパンションが狙う市場 出典Spansion

図2 スパンションが狙う市場 出典Spansion


例えば、監視カメラの応用では、カメラで映像を捉え、人物だけを特定し、追跡する場合には、映像データを処理する必要がある。その場合にはビデオ映像の書き換え作業が多いため、高信頼性が求められる。メモリ容量が8Gビット以下のNANDフラッシュを使う(図2)。スマホやタブレットに使われているストレージ用NANDフラッシュとは違い、高信頼性が要求される。このため、スパンションは信頼性の高いシングルビットセルのNANDを開発している。監視カメラ市場は世界中多くの国で急成長しており、各地の電柱やビルの屋上だけでなく交通信号機にも設置されるようになる。現在の大市場は中国であり、監視カメラは至るところに設置されている。

加えて、セットトップボックス(STB)やデジタルテレビ、医療機器をセキュアにすることがこれからは求められるとしている。STBは家庭内機器をインターネットでつなげるためのゲートウェイになり、デジタルテレビはインターネット上のYouTubeをはじめとする映像データを楽しむツールとなる。医療機器には患者のプライバシーが入っている。これらの用途ではパソコン以上にセキュアな環境が求められる。こういったセキュリティを確保するため、コンテンツプロバイダと一緒にその技術を開発していく。

プログラマブルシステムソリューション市場向けには、スパンションは音声認識用のコプロセサをまずリリースした。「音声認識は発売される新車のほとんどに搭載されている。当社のアコースティックコプロセッサ(参考資料1)は90%以上の認識率を持っている」(Kispert氏)。現在、クルマ市場にアルファ版、ベータ版のサンプルを出荷しており、特定顧客が評価中だと言う。

アコースティックコプロセッサは、CPUと協調をとりながら動作する。音声認識チップには、メモリ部分が多く占めているがCPUとやり取りするためのロジック機能も集積している。音声認識からジェスチャーや通訳といった機能にも拡張させることが可能である。

スパンションはこういった市場に向けた組み込みフラッシュ製品のロードマップを描き、ユーザーが将来性に渡って夢を実現できるようにしている(図3)。


図3 スパンションが描く組み込みフラッシュのロードマップ 出典:Spansion

図3 スパンションが描く組み込みフラッシュのロードマップ 出典:Spansion


「スパンションは顧客の問題を解くことに集中している。このため、組み込み業界に注力したサービスを提供するため顧客との長期的なパートナーシップを組み、問題を理解する。さらに、ハードウエア製品はメモリが主体だが、ソフトウエアやアルゴリズムも含めたシステム指向を強化していく」とKispert氏は述べている。

参考資料
1. スパンション、音声認識専用コプロセッサを開発、760ビットの内部バス利用 (2012/07/24)

(2013/01/22)

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