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セミコンジャパンの視点を変えてみよう〜部材に価値を見出す展示会へ

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セミコンジャパン2012は、例年通り幕張メッセで開かれた。出展社数は昨年の831社に対して855社と増えたが、小間数は昨年比12%減の1935小間となった。国内の半導体メーカーが製造を軽くする方向に向かっており、製造装置の国内展示会としては厳しい現実を突きつけられる格好となった。

図1 セミコンジャパン2012の会場(幕張メッセ)

図1 セミコンジャパン2012の会場(幕張メッセ)


これまでのセミコンジャパンは半導体メーカーに売り込むための装置や材料、部材の展示会、という性格だったが、肝心のユーザーである半導体製造部門が縮小される傾向から変化を余儀なくされている。筆者は今回ブース巡りをしていて、装置メーカーの方々とは顔を会わせたが、半導体メーカー、あるいは出身者に会うことがなかった。これは初めての経験だった。装置のユーザーはどこに行ったのだろうか。

もし逆転の発想というか、製造装置を最終商品と考えれば、装置を作るための部品や材料のメーカーが中心に出展する展示会となる。そうすると、半導体チップは装置に必要な部品の一つだ。半導体チップ市場として最近、安定で有望なのは産業用と言われている。半導体製造装置は産業機器の中の成長分野の一つと見られている。特に、リニアテクノロジーやアナログデバイス、FPGAのザイリンクスやアルテラといったメーカーは、産業機器市場に力を入れている。半導体メーカーにとってチップを売り込むための展示会という位置付けとして、セミコンジャパンを再定義すれば今後も発展する余地は広い。例えば、ロボットアームなどの装置内搬送システムを設計製造している安川電機は、高速のピック&プレース機械を動かして見せたが、その心臓部には半導体ICがびっしり詰まっている(図2)。安川電機は、半導体ICの高集積化のおかげで制御回路をボード2枚に収められ、高速のマシンができたと述べている。


図2 安川電機が展示、動作デモしたピック&プレース機 制御ボードを2枚に収めたことで高速機を実現したという<br />

図2 安川電機が展示、動作デモしたピック&プレース機 
制御ボードを2枚に収めたことで高速機を実現したという


今回のセミコンジャパンで見かけた、ユニークな部材類をいくつか紹介する。まず、磁気浮上を利用して非接触で純水を送り出すポンプをLevitronix社が開発した。この液体用のポンプは、シールレス、ベアリングレスのため、コンタミが入りにくく、従来の液体用ポンプと比べて溶け出すコンタミの量は極めて少ない。例えば、第三者のR&D技術会社CT Associates社は、ポンプから溶出される金属不純物が従来のポンプと比べて1/1000以下と小さいというレポートを2011年3月に出している。Levitronixは、純水や薬液をくみ取る速度や圧力の範囲を広くカバーした製品ラインを揃えている。

この製品では、ポンプの回転子となるロータの浮上状態のバランスを周囲の磁石ステータで制御し、非接触を保とうとするもの。モータのステータの芯の端においてロータと同じ水平面に合わせることで上下左右のバランスを取ることができる(図3)。さらに、ステータに流す電流をセンサで検出し、DSP(デジタル信号プロセッサ)制御によって磁場バランスをとる。DSPはロータの回転も制御する、とLevitoronix Japanはいう。


図3 非接触・ベアリング無しの液体ポンプの構造 出典:Levitronix

図3 非接触・ベアリング無しの液体ポンプの構造 出典:Levitronix


このポンプは、心臓や肺などコンタミを嫌う医療用にまず使われ、さらに半導体製造装置用の市場を狙い、今回出展した。枚葉式の純水洗浄装置や液浸ArFレーザリソグラフィ装置、CMPなどの応用を狙っている。

水を使う洗浄装置への応用を狙った部材として、半一が設計しメープルが装置を開発中のバブル発生器が展示された。これは、非常に小さな泡を発生させて汚れを落とそうというもの。直径200~900nmの微小な泡(バブル)を発生させる洗浄装置で、従来の10~50μm径のバブルと比べ、寿命が数日〜数十日と長い。このため、浸けておくだけで洗浄効果が高いという。このバブルは400nm程度の細かい穴にガスを通すことで発生させている。超音波洗浄装置と併用すると効果はさらに高まるとしている。

後工程では最近シリコンウェーハを薄く削り、チップ化した後のハンドリングが難しくなってきた。信越ポリマーは、シリコンチップがくっつきやすく粘着性の高いフィルムキャリヤを提案している。このフィルムキャリヤの狙いは、3次元ICの生産性を上げること。 チップとウェーハあるいはウェーハ同士を重ねる場合に一括で処理できる。前工程プロセスを終えたウェーハを薄く削りダイシングした後の個々のチップをトレイ上あるいは300mmの円板上に載せて、一括で積層できる(図4)。チップを仮止めする接着材を塗る必要がない。加えて真空ピンセットでチップを簡単に外すこともできる。


図4 チップに分離したフィルムをウェーハに張り付けられる 出典:信越ポリマー

図4 チップに分離したフィルムをウェーハに張り付けられる 出典:信越ポリマー


信越ポリマーは、このフィルムキャリヤをスティッキーキャリヤと呼んでいる。チップに分けた後にハンドリングしやすくなるため生産性が上がるという訳だ。今回は、単なる粘性の高いフィルムに加えて、250℃のはんだリフローにも耐えるフィルムも展示した(図5)。しかもこのフィルムは使い捨てではない。これまでのテストでは、10回程度使っても粘着率は低下しないという。実験をさらに継続中だ。


図5 250℃の耐熱性を持ち、10回以上再利用できる粘着フィルム 出典:信越ポリマー

図5 250℃の耐熱性を持ち、10回以上再利用できる粘着フィルム 出典:信越ポリマー


半導体製造装置同士をつなぎ、処理するウェーハや処理条件などの情報を流すための通信インターフェースであるEtherCATや三菱電機が力を入れるCC-Linkなどの推進団体も出展した。このネットワークに使うプロトコルを含めた半導体チップ、電源とデータを共有できるPower on Ethernetチップなども強力な産業用半導体市場となる。

いずれのインターフェースもEthernetプロトコルをベースにして、産業機器をつなぐための通信規格である。EtherCATは、100Base-TXの全二重化通信を利用しており、高速という特長がある。サーボ制御や高速性を要求される用途に向く。これはリング構成で親機から多数の子機へ大きなパケットを流し、子機を通過させていくというアーキテクチャを採る。子機はパケットを通過させると共に必要なデータを取り出す。サーボ制御機だけではなく、さまざまなドライブシステムに使われている(図6)。これに対して、CC-Linkは送受信を1回ごとに行うため、スター型、ライン型、リング型などどの構成でも可能である。いずれの通信ネットワーク規格も採用が増えている。


図6 さまざまな機器・器具に使われるEtherCAT規格

図6 さまざまな機器・器具に使われるEtherCAT規格

(2012/12/20)

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