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ルネサスのMCU、MPU製品ポートフォリオ拡充から見えてくる戦略の転換

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ルネサスエレクトロニクスは、スマート社会に向けた半導体ソリューションを提供するという戦略を進めているが、注力していく応用分野を明確に示した。コネクティビティ、ヒューマンインターフェース、センシングそしてドライブ/パワー、である(図1)。これまではマイコンや、アナログ、SoCといったデバイス側からの切り口しか見えてこなかった。

図1 スマート社会に必要な4つの分野 出典:ルネサスエレクトロニクス

図1 スマート社会に必要な4つの分野 出典:ルネサスエレクトロニクス


顧客にとっての価値を提供するという視点から、戦略を練り直したもの。これら4つの重要な差別化可能な分野の中で、共通するデバイスがマイコンであり、マイクロプロセッサであるという認識である。コネクティビティでは、通信機能はもちろん、セキュアな通信、エコフレンドリな無線技術、マルチプロトコルに対応できる柔軟性を備えた通信などという技術に向ける。HMI(ヒューマン-マシンインターフェース)でもマイコンを使う。センシングやドライブにはそれぞれアナログ、パワーが欠かせない。それらとの情報処理をインテリジェントに制御するためにマイコンが必要となる。

こういった応用分野を意識したマイコンの製品ポートフォリオを拡充するために、汎用的なマイコンを増やし、「ASSP的な展開を進める」とルネサスエレクトロニクスMCU事業本部MCUシステム統括部部長の渡辺照一氏は述べる。それも8/16ビットから32ビット、ローエンドからミッドレンジ、ハイエンドまでカバーする。8/16ビット系のRL78は、2013年に静電方式タッチセンサ用マイコン、USBやアナログ拡張用、無線リモコン用、電力メータ用など広げていく(図2)。


図2 8/16ビットマイコンRL78シリーズのロードマップ 出典:ルネサスエレクトロニクス

図2 8/16ビットマイコンRL78シリーズのロードマップ 出典:ルネサスエレクトロニクス


製品ポートフォリオを見ていると、ルネサスはSoCと呼ぶフルカスタム製品を見限って、プログラマブルなマイコン、ASSP的に量産しやすいプラットフォームを用意する戦略に切り替えたことがわかる。この戦略こそ、世界の半導体メーカーが採っている戦略そのものだ。ようやく世界と一緒に成長していくという意思が見えてきた。

ミッドレンジのRX系では低消費電力のRX100 (32MHz)からRX200 (50MHz)、RX600 (100/120MHz)に、RX700 (240MHz)を追加する。RXシリーズは産業用サーボやインバータなどモータドライブ用途を意識しており、産業用イーサネットの規格であるIEEE1588やセキュリティ規格IEC60730準拠のインターフェースも集積する。アナログの世界をつなぐためのA-Dコンバータやオペアンプ、コンパレータ、温度センサなどに加え、セミプログラマブルなI/Oも集積する。ここで重要なことは、RXシリーズという一つのアーキテクチャでプラットフォームを作り、同じ開発環境を提供していけることである。ユーザの視点に立つと、次世代デバイスに対しても共通のプラットフォームがあればソフトウエア開発において拡張が容易になる。またメーカーの視点ではアーキテクチャが一つしかないため低コストで製造できる。


図3 ミッドレンジマイコンのRXシリーズのロードマップ 出典:ルネサスエレクトロニクス

図3 ミッドレンジマイコンのRXシリーズのロードマップ 出典:ルネサスエレクトロニクス


ルネサスはマイクロプロセッサファミリとしてRZシリーズも揃えることにした(図4)。ARMのCortex-A9という性能の高いCPUコアを搭載、さらにサーバやルータなどコネクティビティ向け製品(2000 DMIPS)にはマルチコアを集積し、ギガビットイーサネットやPCIe、USB3.0などの高速インターフェースを集積する。産業用のHMI向け製品(1000 DMIPS)にはXGAのようなディスプレイ対応やOpenVG1.1のようなグラフィックス用のソフトウエア仕様に対応する。RZシリーズは組み込み用途向けのマイクロプロセッサであり、携帯機器のクアルコムやnVidiaなどのアプリケーションプロセッサチップと違い、コンピュータ系のインテルやAMDのCPUチップとも違う、産業用の組み込みプロセッサとしての市場を狙う。面白い挑戦といえそうだ。


図4 組み込み系マイクロプロセッサRZシリーズを追加 出典:ルネサスエレクトロニクス

図4 組み込み系マイクロプロセッサRZシリーズを追加 出典:ルネサスエレクトロニクス


プロセスは、RX100シリーズが130nm、RX600シリーズは40nm、マイクロプロセッサのRZシリーズは40nmを使う。すべて2013年にサンプル出荷する予定である。

(2012/10/24)

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