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会社更生法から再建・復活を果たし、成長への軌道を明確に描くスパンション

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メモリメーカーの米スパンション(Spansion)がニッチ市場にフォーカスしながらもNORフラッシュ製品ポートフォリオを広げつつある。スパンションは2009年に会社更生法にあたる連邦政府のChapter11に申請し再建処理を委ねた。その1年後に自力再建が認められた。スパンションが復活して2年たった。シリアルメモリ、さらにパターン認識向けの組み込みチップへと拡大している。

図1 Spansion社長兼CEOのJohn Kispert氏

図1 Spansion社長兼CEOのJohn Kispert氏


会社更生法適用、裁判所管理下での再建、自力再建、独自市場の形成へと歩み、スパンションはさらに成長路線を強く打ち出した。汎用メモリでは体力的にサムスンや東芝にはまずかなわない。フラッシュメモリにおける汎用市場とはストレージ応用だ。ストレージ応用では、高集積しやすいNANDフラッシュはNORフラッシュに比べて絶対的に有利である。しかし速度ではNORフラッシュの方が速い。高速でありながら不揮発性であり、さらに低コストという応用こそ、NORフラッシュが生き残っていける市場となる。

この高速・不揮発性・低コストの市場の規模がストレージ市場などに比べて小さいため、スパンションはファブライト戦略を採る。ファブが有利なのは大規模市場である。スパンションは、さらに成長するため製品ポートフォリオを広げていく。2011年10月にシリアルアクセスメモリの強化を発表した(参考資料1)のに続き、今回、PSS(programmable system solution)と呼ぶパターン認識処理に進出すると発表した。この分野も、大容量・不揮発性・高速というNORフラッシュの特長を生かすことができる。

スパンションの財務は改善されてきた。2011年の第4四半期は、マクロ経済が弱含みで赤字を計上したメーカが多い中で、利益は330万ドル(売り上げの1.5%)とわずかながらも確保した、と同社社長兼CEOのJohn Kispert氏は述べる(図1)。今は汎用的なパラレルNORの128M〜4Gビット品を65nmプロセスで生産中であり、2013年はじめには256M〜8Gビット品を出していく(図2)。車載向けが多い。次に128M/256MビットのシリアルNOR製品も生産中だ。組み込み向けにNANDフラッシュも開発中で1G〜8Gビット品を今年の後半に出荷する予定である。現在、新規のデザインウィンが450件もあるとしている。


図2 製品ポートフォリオを広げていく 出典:Spansion

図2 製品ポートフォリオを広げていく 出典:Spansion


Kispert氏によると、従来のSoCはCPUやSRAM、アナログなどが比較的大きく、NORフラッシュは小容量ですむため面積の20%しか使わない。しかし、同社が次に狙うのは、音声やジェスチャー、顔、画像などの認識エンジンとなるICである。チップ上の面積の80%を占めるのがメモリであり、セルを最適化し高集積化に備える必要がある。パターン認識システムは、対象とする音声やジェスチャーなどの見本を予め作っておき、そのパターンと、入力された音声やジェスチャーとのマッチングを採って認識するかしないかを判断する。このため見本用のパターンをメモリに保存しておく。当然、不揮発性が望まれる。


図3 パターン認識市場へ 出典:Spansion

図3 パターン認識市場へ 出典:Spansion


NORフラッシュの基本となるメモリセル技術はMirrorBit技術と呼ぶ、生まれながらに2ビット/セル方式である(参考資料2)。製品の80%にこの技術を使っている。これはMNOSトランジスタ構造のドレイン側、およびソース側の窒化膜にそれぞれ電荷を貯める方式で、イスラエルのSaifun Semiconductorを10年前に買収して手に入れた。現在、65nmから45nmへ移行するための認定作業中で8Gビットの設計品と並行してプロセス開発を進めている。45nmでは低コストにするため液浸露光を使わず、65nmプロセスからの工程数の増加を6%に抑え、さまざまな工程を最適化しているという。

MirrorBit技術に加え、43nmのCT(charge trapping)NANDフラッシュ製品も出す予定だ。これはフローティングゲート構造のシングルセル方式のNANDフラッシュで、高品質・高集積を特長とするが、東芝・サムスンとは違う市場を狙っているとしている。NANDフラッシュを手掛けるのはあくまでもユーザーからの要求によるという。

「スパンションのビジネスを推進するバックボーンとなるものは、サービスすなわち人である。生産会社というよりエンジニアリング会社になっている」(Kispert氏)。日本のスパンションチームは「素晴らしい陣容(tremendous team)」と絶賛する。というのは、NORメモリはソフトウエアコードやアルゴリズムを格納するために使うものだからである。

現在6800社の顧客を抱え、2012年末にはこの数を8000社に増やすという目標を掲げている。Kispert氏は、顧客のシステムがもっと効率良く働くようにするための製品を出していくという。メモリメーカーとして、2011年第4四半期現在、450件もの新規のデザインウィンを勝ち取ったため、さらに勢いづいている。

参考資料:
1. スパンション、シリアルNORフラッシュを高速化、66MB/秒の読み出し実現 (2011/10/12)
2. 65nmNORフラッシュから4G NAND、省ピンSPIまで攻めに転じるスパンション (2011/02/25)

(2012/03/06)

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