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英国特集2010・プラスチックエレクトロニクス実用化のための5つの課題

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英国のプラスチックエレクトロニクスは政府が後押ししているものの、手放しで未来が明るいと思っているわけではない。有機トランジスタがシリコンを置き換える訳でも決してない。大面積で安く、シリコンではできない発光・受光デバイスができないものか、というアイデアをビジネスに結び付けるための試みとして動いている。この特集の最後に英国が考えている問題とその対策を列挙する。

有機エレクトロニクスは携帯電話OLEDから始まり、照明やRFID、太陽電池へと及ぶ/出典:Cambridge University

有機エレクトロニクスは携帯電話OLEDから始まり、照明やRFID、太陽電池へと及ぶ
出典:Cambridge University


英国政府が整理した、プラスチックエレクトロニクス普及のための課題は以下の5つである:
1.実行力のあるリーダーシップと情報共有
2.国内外のサプライチェーンを通したビジネス機会を特定する
3.英国が今でも投資とビジネス成長のために魅力的な環境であることを確認
4.英国の科学技術の知識を積極的に活用することを確認
5.英国での高成長と先端製造技術のニーズに合った熟練技術者の供給

これら5つの課題について、さらに問題と解決策を用意している。まず課題1:実行力のあるリーダーシップと情報共有については、以下の点を採り上げている;

問題1:共通言語と共通のテーマを必要とするほど多様である
問題2:ステークホルダー(株主だけではなくメーカー・ユーザーなども含む広い関係の中で利害を持つプレーヤー)との関係が複雑である
問題3:技術よりの必要性が増すほど、技術を採用するエンドユーザーとのギャップが開く

解決策1:英国PELG(プラスチックエレクトロニクスリーダーシップグループ)を設立し、この分野の必要性を支持すること
解決策2:ビジネス指向ではあるが主要な利害関係グループをメンバーに組み入れること
解決策3:まず実行計画の作成を優先して、カギとなる戦略推薦のための機構を供給すること

二つ目の課題2:国内外のサプライチェーンを通したビジネス機会を特定することについては、以下の点を採り上げている;

問題1:英国内には巨大なエレクトロニクス企業はないが、宇宙航空・スーパーマーケットチェーンなどのエンドユーザーは確実に存在する
問題2:重要な商業化の機会があると大企業・中小企業ともビジネスを発展できるはず
問題3:サプライチェーンのパートナーは従来のもっと成熟した分野ほど密接に集まってはいない

解決策1:PELGとPPE(フォトニクス&プラスチックエレクトロニクス)KTN(知識移転ネットワーク)がステークホルダーグループに働きかけて、英国のプラスチックエレクトロニクスのロードマップに基づいて新ビジネス機会を鼓舞してもらう
解決策2:PELGとPPE KTNが応用分野とサプライチェーンの部品を目標とすること。ここでは英国は非常に効率が良い
解決策3:UKTI(英国通商投資総省)との連絡を緊密に保ち、英国を選択すべきプラスチックエレクトロニクスパートナーとして位置付けること

三つ目の課題3:英国が今でも投資とビジネス成長のために魅力的な環境であることを確認、については次の点を採り上げている;

問題1:現在の経済状況によりプラスチックエレクトロニクス技術の採用は遅れそうだ
問題2:英国の状況をもっと国際競争力が付くようにすること
問題3:新しい製造投資を英国にもたらす政策と優遇策の必要性
問題4:英国のベンチャーキャピタル業界に、プラスチックエレクトロニクスの商業的な可能性をもっと知らしめること

解決策1:現在の支援体制のプロモーションを改善し、ご利益と存在をもっと理解させる
解決策2:PELGは政府とともに働き、投資家業界がR&Dと製造に対する投資レベルと時間軸との差を理解できるように支援すること
解決策3:UKTIなどと国内の投資活動の目標を実行すること

四つ目の課題4:英国の科学技術の知識を積極的に活用することを確認、については以下の問題・解決案がある;

問題1:EPSRC(技術・物理科学の研究委員会)とBIS(ビジネス・イノベーション省)/TSB(技術戦略委員会)の補助金は、プラスチックエレクトロニクスの優秀な地位を築いてきた。今後は商業化へ応用し、その成功を確認すること
問題2:英国の研究センターは新技術を育成すべく活力ある役割を持っている
問題3:PETECは高品質の試作品の提供を支援するのに特に重要な役割を持っている

解決策1:もっと長期的な補助金計画を統合的に配分するプランを開発すること
解決策2:現在のTSBのサポートは、英国がこの分野での富を創造する明らかな道筋を付けたことを確認するカギとなる
解決策3:プラスチックエレクトロニクスの5つの研究センターは、最大のご利益をもたらすような実践的な作業を開発すべきである
解決策4:英国の組織体制は、EUが資金提供するプラスチックエレクトロニクス計画に積極的な参加を促すべきである

五つ目の課題5:英国での高成長と先端製造技術のニーズに合った熟練技術者の供給、に関しては以下の問題点と解決策がある;

問題1:プラスチックエレクトロニクスは従来の分野をまたぐさまざまな業界からなる
問題2:スキルの必要性は研究開発レベルから生産へと移行するにつれ変わっていく
問題3:新しいスキルはビジネスマネジメントであることが多い。さらに起業家精神も重要である。

解決策1:スキルの監査を2011年に用意しておくべきである。各分野のスキル委員会、例えばSEMTA(科学・技術・製造)分野と一緒に作業する。
解決策2:研究センターは戦略で決められた目標の支援を提供すべきである
解決策3:産業界の重鎮は、現実の世界の経験を話して、DTP(博士課程研修プログラム)などの研究者を鼓舞すべきである。
解決策4:学部学生にもプラスチックエレクトロニクスを教える課程を作るべきである

以上のような課題、解決策などの提言を持った戦略を英国国家が打ち立てており、プラスチックエレクトロニクスの開発・発展によって世界のトップを狙っている。こういった戦略設立の手法は、プラスチックエレクトロニクスに限ったことではない。新しい国家プロジェクトを失敗させないようにするためのチェックリストでもある。

(2010/06/21)

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