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三洋電機、7.6MWの大規模太陽電池発電所をドイツから受注、イタリアに設置

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三洋電機は、イタリア南部に設置する7.6MWという大規模な太陽光発電所に効率20%のシリコン単結晶型太陽電池を納入することが決まったと発表した。なぜ三洋が採用されたのか。効率が高いだけではない。同社取締役副社長 本間充氏は、大阪での発表会場との中継の中でその理由を冷静に分析する。キーワードはグローバル化だ。


大阪との2元中継の三洋電機記者発表会

大阪との2元中継の三洋電機記者発表会


三洋は、2年前に3MWの太陽電池をスペインに、2.5MWを米国に設置したという実績がある。しかし、今回の7.6MWはその規模を大きく上回る。同社の岐阜羽島の開発センターに設置した太陽電池(上のスライド)の12倍の規模だというから、その大きさが想像できるというもの。

今回、イタリア南部に設置するという計画は、ドイツ銀行資産運用投資部門が長期的な投資効果を狙って太陽光発電所を持つことで進められた。ドイツ銀行は発電した電力を電力会社に売ることで投資を回収していく。この投資回収が年利率に換算して十分高い利率になるとの計算があるのだろう。

なぜ三洋が選ばれたか。三洋の開発したHIT(Heterojunction with Intrinsic Thin layer)構造の太陽電池は効率が20%と高く、ウェーハを薄くしても効率はさほど落ちない。ちなみに今回のシリコンウェーハの厚さは200μm程度だという。HIT太陽電池の評価をドイツ銀行がドイツのフラウンホッファー研究所に依頼した結果、出力はカタログ値に近く、バラつきは他社製と比べ最も小さかったという。加えて、三洋はハンガリーに太陽電池パネルの生産工場を持つ。しかも、自社のグローバルな工場にはインゴット(北米)からセル生産(日本)も可能になっており、太陽電池のサプライチェーンが確立していた。すなわち安定供給できるという強みもあった。


大阪との2元中継の三洋電機記者発表会

欧州のハンガリーで生産しているHIT太陽光パネル


単結晶シリコンは、設置面積当たりの発電量が多く、しかも太陽光をトラッキングすることで発電量をさらに20〜30%増やせる。今回、トラッキング駆動架台1台につき18枚の太陽電池パネルを搭載し、太陽光を日の出から日没まで最適な向きに追いかける。この架台を1789台設置する。太陽電池パネルは合計3万2202枚にも上る。パネル1枚の出力電圧は35.1Vで、出力電力は235W。このパネルを18枚直列接続し、632Vまで昇圧する。1年を通じて、他のトラッキングパネルが陰にならないように設置間隔を計算しながら設置する予定だとしている。

このトラッキングシステムは、ドイツのIdeematec社製のST-25という製品。1軸式で垂直方向には30~38度の範囲で固定されるが、水平方向には日が出ている限りその向きに追従できる。追尾角度は現地で調整する。

三洋電機が開発したHITは単結晶シリコンの両面に、波長の短い太陽光も吸収するためアモーファスシリコン薄膜を付けている。単結晶シリコンは波長の長い光を吸収する。研究レベルでは23%まで行っているが量産レベルでも20%に達しており、単結晶シリコン太陽電池は、薄膜や有機、化合物など、競合の太陽電池と比べて圧倒的に強い。開発途上の太陽電池は研究レベルと量産レベルの効率は全くと言ってよいほど違う。しかも大面積でバラつきを減らすことは至難の業だ。多結晶シリコンはまだ単結晶の競合相手になるが、薄膜系は今のところ全く歯が立たない。しかもHIT構造は70℃の高温でも変換効率が20℃の時のそれと比べて1割しか落ちない。多結晶だと2割も落ちるという。太陽電池の電圧は、温度とともに直線的に落ちていくが、元々電圧の高いアモーファスシリコンは落ち方のパーセンテージで表せば多結晶シリコンよりも落ちにくく見えるためだ。

ハンガリーで開発している太陽電池パネルでは、シリコンの面積を有効活用するため、丸い5インチウェーハを、丸みを付けた六角形に加工し直し、ハニカム構造でパネルに張り付けている。ハニカム構造だとシリコンの切りシロが少なく、シリコン面積を有効に活用できる。円形ウェーハで計算するため円の大きさを100とすると、ハニカムは83だが、従来の四角形は64になる。パネルに設置する方法が両者で異なるため、厳格な比較計算はしていないという。本間副社長は、2013〜14年ごろをメドにグリッドパリティにできると見ている。

(2010/05/28)

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