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スパンション、汎用品をやめ特定用途向けNORフラッシュ戦略で再起をかける

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米スパンション(Spansion)がチャプター11から脱却し、自力経営の道を歩めることが確定したが、本日、攻めの経営戦略について発表があった。米国からジョン・キスパートCEOが来日し、米スパンション社は日本の旧子会社であったスパンション・ジャパンから販売関連部門を取得しそれを日本スパンションとする旨を述べた。

米スパンションのキスパートCEO

米スパンションのキスパートCEO


現在、スパンション・ジャパンは会社更生法の適用を受け、再建途上にあり、「親会社のスパンションとはほとんど関係がない」(日本スパンション代表取締役社長 鈴木伸二氏)。スパンション・ジャパンはファウンドリ企業としてウェーハ製造を続けており、米スパンションはファウンドリサービスを受けた格好になっている。それも2011年半ばまでの18カ月にわたるファウンドリ契約にすぎないという。このため、スパンション・ジャパンが米テキサス・インスツルメンツに工場売却するといううわさ話は出ているものの、米スパンションはその成り行きには全く関知しないという。例えば、米スパンションがチャプター11を適用する3月1日に先んずること、2月10日にスパンション・ジャパンが会社更生法適用を申請したとき、「サニーベールにいてびっくりした。キャッシュがなかっただけなのに」、とキスパートCEOが言うくらい、スパンション・ジャパンは米スパンションとは距離があった。

米スパンションはこのほか富士通(FSET)、中国SMICもファウンドリとしてパートナーを組んでおり、アセンブリにはアジアのサブコントラクタを使っている。日本スパンションは販売と同時に顧客サービス、デザインセンターとしての役割も担う。米スパンション自身は米テキサス州オースチンに200mmウェーハ工場を持っているが、ウェーハプロセスに関してはあくまでも「ファブライト、アセットライト」に注力し、プロセス工場はできるだけ持たない方針だ。

このようにして、米スパンションはコスト負担を軽くする一方で、製品戦略も見直した。成長戦略は、「組み込み系応用に特化する少量多品種の不揮発性メモリーとして、顧客が直面するアプリケーションやサービスを提供していく」、ことだ。提供する応用分野は、コンピューティングと通信、家電とゲーム、車載と産業・医療機器、ワイヤレスとM2M、さらにLED、ホームネットワーク、スマートグリッド、である。スパンションは3,500種類ものNORフラッシュメモリーを持っており、しかもシリアル、パラレル両方のアクセスが可能な製品群である。顧客によってバンド幅や容量、アクセスビット数などさまざまあり、これらに対応するような少量多品種のNORフラッシュを提供する。

フラッシュメモリーはNORからNANDへとシフトしてきているように見えるが、これはフラッシュメモリーをあくまでも汎用のストレージデバイスと見る応用に限られている。しかし応用は音声や映像、画像を貯めるストレージだけではない。例えば、SoCの開発システムにはFPGAでロジックを組み、その接続情報をフラッシュメモリーに蓄えるが、そのような用途にはNORフラッシュは使いやすい。こういったブレッドボードとしてのFPGAの応用にはNORフラッシュメモリーは欠かせない。

米スパンションはコストを軽くするとともに売り上げが減少してきたが、これはチャプター11によってユーザーの発注が抑えられてきたためだとしている。「2010年第1四半期は売り上げの底であり、これからは成長していく」とキスパートCEOは語る。2009年第1四半期は売り上げ4億ドルに対して粗利益は4%しかなく営業損益は1億3200万ドルの赤字であったが、再建処理に入ったチャプター11後、売り上げは減少していったがコストもそれ以上に下がり、2009年第2四半期から利益が出るようになった。この2010年第1四半期には売り上げは2億7700万ドルまで下がったが、粗利益率は32%、営業利益は2000万ドルと四半期連続でわずかながら利益を出し続けてきた。販売管理費が売り上げに対して17%と高いのは弁護士への支払いが大きく、チャプター11から脱却できた今、この第2四半期には販売管理費はもっと下がり10%くらいになると見ている。


財務体質も強化

財務体質も強化


日本スパンションの代表取締役社長となった鈴木伸二氏は初代のスパンション・ジャパンの社長を務め、2006年6月に退職していた。今回、キスパートCEOに呼び戻され、日本法人の社長に返り咲いたという訳だ。鈴木氏は、組み込みシステム応用では日本がリードしているため、組み込み応用フラッシュでは日本市場は極めて重要になる、と述べる。車載向け、ファクトリーオートメーションやロボティックス、エンタープライズ向けルーターやスイッチなどを狙う。

販売流通チャンネルには富士通エレクトロニクスの販売ネットワークを利用する。NORフラッシュメモリーと富士通のロジックをまとめて売る、といった戦略が成り立つ。「エンジニア、マーケティング、営業が一体となった総合力で販売サポートができるのは日本スパンションだけ」と自信を見せる。

(2010/05/24)

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