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「生産能力はフルに持たない」メモリーメーカーが相次ぐ、アセットを軽く

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メモリーメーカーさえもがアセットライト方針を相次いで打ち出している。増産には外部のファウンドリなどを使い、自社の設備を拡張せずに対応していく。メモリーは本来、微細化を追求し量産効果を求めるデバイスであり、SoCのように機能を追求する少量多品種デバイスではない。メモリーは月産数百万個も生産するのにもかかわらず、自社で増産しないという方針は今後のメモリービジネスにどう影響をもたらすだろうか。

DRAMのエルピーダメモリ、フラッシュのニューモニクスが、メモリーの増産には外部のファウンドリや合弁メーカー工場を積極的に使い、いたずらに設備投資を行わない、というアセットライト方針を相次いで打ち出した。フレキシブルに生産調整ができることをニューモニクスはアセットスマートと呼んでいるが、基本はアセットを軽くすることである。

エルピーダメモリのCEOである坂本幸雄氏は、「設備投資よりも微細化とセル構造の工夫でシュリンクさせることによりウェーハ当たりのチップ数を増やしていく」方針を強調した。エルピーダは重要顧客からの資本、政府系金融からの資本、さらには台湾政府からの資本、株式公募などによって資本増強を図り、必死に生き延びてきた。政府の資本導入に関しては異論の声はあったが、エルピーダにとってはつぶれるか生き残るかの瀬戸際であったからこそ、選択の余地はなかった。坂本氏は可能なものはすべて実行する方針であり、方策を取捨選択する余裕などは全くなかったのである。


DRAM価格


DRAM価格は、長かった原価割れの状態からようやく8月ごろから抜け出せるようになりつつある。エルピーダの2009年度第2四半期(7〜9月期)では営業損益がわずかながら黒字へと転換した。経常損益はまだ55億円の赤字ではあるが。同時にコストダウンのために65nmのシュリンクプロセスを採用し、歩留まり向上と相まって利益を出せるようになった。2009年1〜3月(2008年度第4四半期)は、売り上げよりも損失の方が大きいという常識外れの赤字を計上したが、その危機は脱した。


エルピーダ営業損益


坂本氏は来年、生産数量を50%増やす計画で、50nm、40nmへとさらなる微細化とファウンドリの利用によって生産増強を図る。台湾ではPowerchip Semiconductorと合弁で設立したRexchipはエルピーダ向けに100%生産しており、Powerchipからも8万枚/月のうち1万枚/月を今でもエルピーダを受け取っている。この比率をさらに高め、Powerchipの生産量の半分を今年末には受け取る予定だとしている。

エルピーダはさらに台湾のProMOS社、Winbondとも生産委託契約を交わした。ProMOS は台湾 台中の300mmファブにおいてエルピーダ向けに1G ビットDDR3 SDRAM を製造する。製品の試作は2010 年前半に完了予定で、量産は2010 年後半を計画している。WinbondとはGDDR3およびGDDR5グラフィックスDRAMを2009年末までに生産、来年前半にエルピーダが購入する計画になっている。

NORフラッシュの大手ニューモニクスは、NAND製品に対する需要案件が1年前と比べ4倍に増えているとして、生産能力を上げていく。STマイクロエレクトロニクスとインテルとの合弁であるニューモニクスは、2種類の外部を使う。一つはファウンドリとしてエルピーダ(広島工場)にNORフラッシュを生産委託する。もう一つは、韓国ハイニックスとの合弁の無錫工場でNANDフラッシュを生産委託する。資本関係から全生産能力の33%まで使えるとしている。

ニューモニクスが持つ自社ラインは200mmウェーハを基本としてNORとNANDを生産するが、今年中に48/41nmNANDの本格的稼働を開始する予定である。2010年には45nmのNORフラッシュも稼働を始める。ニューモニクスは、NANDの生産量がNORと比べるとまだ少ないが、市場の動向としてはNANDが増えていくことに対処するため、2009年にはNANDを2倍に増強、2010年にはさらに2倍に増強し、2010年末には全体の45%程度まで増やしていく計画だ。

エルピーダのDRAM生産が手一杯の場合でも、「エルピーダが使っているプロセスとニューモニクスのプロセスとは違う上に、製品も違うため応用市場までが同時に増産に動くことはあり得ない。だから、エルピーダをファウンドリとして使う意味がある」と、同社CEOのブライアン・ハリソン氏は言う。「当社はフルキャパシティを持たない」方針だとする。

いずれのメモリーメーカーも設備投資にはもう巨額の投資をしないため、装置メーカーにとって今後、ますます厳しくなる。装置メーカーの新しいビジネスモデルの構築は必須になろう。

(2009/11/12)

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