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「産官学の問題点を整理し、考え、行動しよう」日立の桑原氏がSeleteシンポで提言

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「これからの技術開発のあり方として、サービスを含むいろいろな日本の産業の出口を重視しなければならない。つまり、売上と利益、生産性、持続性というごく当り前のことが科研費をはじめとする産官学のプロジェクトにはない」。元総合科学技術会議議員であり日立製作所代表取締役副会長も経験した、日立特別顧問の桑原洋氏は、Selete Symposium 2009の基調講演において、これまでの産官学連携の問題点を整理した。

Selete Symposium 2009 桑原洋氏の基調講演


「これまでのプロジェクトで日本経済に大きな影響を与えたものがほとんどない」と一喝し、問題点を整理し、考え行動しようと呼びかけた。特に科研費は7万件も出されるのにもかかわらず、日本経済に影響をえる研究はほとんどないとする。

官だけではない。日本の産業界も技術に対する考えが経済に影響を与えるものでなくてはならない。「技術があるからその技術を使おうという考えは間違い」、と桑原氏は指摘する。要は、マーケティングをせずにユーザーの声を無視して技術を開発するから、使われない技術になってしまうのである。経済産業省への注文として、「次にどのような家電製品が欲しいのか、秋葉原などでヒアリングしてマーケティングのデータベースを作ればいい」とする。

一方、ベンチャー企業の中にも成功したといえるほどのところがない。開発した商品が経済を揺さぶるほど売れないのである。その理由はマーケティング出来ていないからだと見る。産官学のプロジェクトも同様で、はじめに産官学連携があるのではなく、目的がまず始めにあり、それを実現するために産官学連携が必要としなければ意味がない。

半導体やナノテク、MEMSなどの産業では、世界の頂点に立っていた「1980年代に再び持って行けるか、と考えると韓国・台湾と比べて足りないものが多すぎる」とする。特に、LSIエンジニアリング力、設計力、スピードなどが足りないとし、ならば利用者に徹するという手もあるとする。一方で、モノづくりに徹する世界最強の半導体ファブがあってもいいだろうという。ナノファブともいうべきファウンドリを作り、魅力ある設計力を揃え、スピード経営を目指すべきだと指摘する。

そして半導体メーカー、装置・測定器メーカーなどは国際展開を進めるべきで、東京エレクトロンはグローバル化を進めているが、もっと進めるべきだという。さらに、同社に対する研究開発支援も必要だとする。

「これまでの半導体メーカーは言われるものを作ってきただけにすぎない。ナノファブは一つの例だが、設計力とシステム理解力、ソフトウエア技術が重要であるからこそ、人材育成に重点を置くようにしなければならない」と結ぶ。要は、ある仕掛けやビジョンを国が出し、産業界はユーザーの声に耳を傾けてマーケティングを踏まえてモノづくりを行うことがこれからの日本の再発展に必要だとしている。


(2009/05/29 セミコンポータル編集室)

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