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特集:グローバル化を進める (3) ― 海外重視で急成長した東京エレクトロン

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講師:東 哲郎 東京エレクトロン株式会社 代表取締役会長

半導体バリューチェーンの規模を見ると、GDPの3.5%を支えているのが電子機器、その電子機器産業を支えるのが半導体デバイス、さらに、製造装置がデバイス業界を支えている。装置業界は世界の成長を支えていると認識している。ところが、半導体は成熟産業であるといわれる。しかし、技術革新が継続する限り、以前のような二桁成長は難しいかもしれないが、確実にこの産業は伸びる。

電子機器産業、半導体産業の市場構造

図1 電子機器産業、半導体産業の市場構造


その半導体製造装置産業界において、東京エレクトロンはNo1もしくはNo2として事業を継続してきた。その要因は何か。

1996年に社長に就任した当時、46歳であった。当時としては上場企業の社長では異例の若さであった。この時、会社の基本方針として、次の3つを打ち出した。それは今でも変わっていない。

  1. 顧客満足の追求―常に技術が変化している中、どのようにすれば顧客の満足度を達成できるのかを、製造、サービス、営業、すべての面で事業戦略の中心に据えてきた。
  2. 地球規模でのテクノロジーリーダーシップ―日本だけで孤立して、産業、会社を継続できることはあり得ないという状況で、視野を世界に据え、世界の中でみてNo.1であり続けるために何をするかを常に考える。現在、半導体製造装置企業では、規模としてはNo.2だが、製品別に見ると、No.1もしくはNo.2も多い。自社のポジショニングをこの位置でいいと妥協することなく、常にトップを目指す。さもなければ妥協した段階でずり落ちていく。
  3. 若い活力に満ちた企業家精神―技術革新が非常に激しく、経済環境も変化する中、創造性、柔軟性、オーナーシップ、情熱を持ってやっていく、とことんやりぬくという精神でビジネスを展開していく。

以上の3つの精神の結果でもあり、前提でもあるが、「利益志向の経営」が重要である。顧客に役立つ技術、サービス、非常に価値の高いものを提供することによって、利益を得る。利益を得ることは顧客の役に立つ。すなわち、利益が次なる開発への投資、社員へのリターンとなる。これらを継続していかなければならない。これらがグローバリゼーションの基本的骨格になる。

半導体製造装置業界は独立した業界

半導体製造装置業界の特徴として、自動車用の装置業界とは大きく異なることがある。自動車は各社が自社に固有の製造装置を作る、または発注する形で、装置メーカーが育っている。いわゆるケイレツである。これに対して、半導体装置業界は、顧客とは独立して、独自の業界が作られている。半導体関連材料も然りである。その観点で東京エレクトロンの歴史を見ると、最初は、米国からみたグローバリゼーションをサポートする観点で進んできた。この点では、始めから、半導体メーカーから独立した形で展開した。ジョイントベンチャー(JV)の場合も同様である。JVなどは、欧米のメーカーからの仕様に対して、日本のユーザーの仕様はこうだ、という議論を通じて、標準化を進めてきた。他の業界とは異なり、装置業界がひとつの独立した業界として確立され、世界市場で展開できたところが、ユニークな点といえよう。

東京エレクトロンの取り組み

東京エレクトロンの半導体製造装置売上高の変遷をみる。1994年以前は、80%が日本、
20%が世界という売り上げ構成だったが、94年を境に変わっていった。今では70%が海外、30%が日本となり大きく変わっていった。1980年は12%、1995年25%、2000年で71%、2007年で73%と海外比率が推移した。


東京エレクトロンの売上高の変遷

図2 東京エレクトロンの売上高の変遷

東京エレクトロンのグローバル展開の特徴の一つとして、円貨ベースでの取引が挙げられる。取引条件において、多くの会社が欧米と商売する場合には、ドルベースでの取引だった。しかし東京エレクトロンは円ベースである。輸入は外貨であったが、日本の製品については、日本円を通貨とし、新しいやり方を打ち立てた。この点がほかの企業とは異なる。この結果、為替変動に比較的強い形で展開することができた。

もうひとつのユニークな点は、現地に作る会社のトップを現地の人にしたこと。かつ、そのトップのマネージメントは、現地でも最高の能力を持った人であり、高額であっても据えた。その人が次の高いレベルの人を採用し、質を保ってきている。台湾については、パートナーであり、台湾でも定評のある代理店のトップを兼務で据えた。信頼度の高い、能力の高い、その国々で尊敬される人を採用することにより、さらにそのネットワークを使えた。これがビジネスを成功に導く要因となる。

販売網、サービス網、製造開発網、のグローバル化が進む一方で、現在、社員の25%が海外の社員、株主の30数%が海外である。売り上げ面のみならず、会社経営の形態も、世界的にみて信頼されるような形態、透明度の高いコーポレートガバナンス確立にむけた仕組み作りを行ってきた。世界に尊敬されるような会社を目指している。

98年には取締役と執行委員会を切り離した。また、報酬委員会を日本で初めて設置、ストックオプション制度も導入した。

社員と株主の利害が一致できるような仕組みが必要である。現在は、株主への配当と還元については、当期利益の20%、社員への還元については、連結の全体営業利益の15%を社員にボーナスとして還元、経営者は当期利益の3%還元としている。こうして、Stakeholderと利益を合致させる方向でいる。

また、2000年には取締役会の中に指名委員会を設置、取締役と代表取締役を指名委員会で選考している。海外では当たり前の話だが、日本は代表取締役が決めていくことが多く、決定プロセスが不鮮明である。「会社は誰のもの」という点で、株式会社である限り、株主のものであり、経営者のものではないという一線を画した。経営者は経営という観点で評価される側に立つものである。会社は株主のためにあるということに同意しない社員がいるかもしれないが、経営者のための会社というのは、不透明な部分が多い。こうした施策によって、海外の顧客や従業員から、弊社への信頼関係を構築することに結びついた。

半導体産業の変化

グローバリゼーションというと、欧米を中心に見たグローバリゼーションというのが今までの流れである。95年以降、デバイスの出荷個数は激増してきたが、単価は95年以降、半減している。単価が落ちながら、デバイスの出荷数が増えている。同時に微細化に向けた開発は休みなく続いている。


半導体デバイスの出荷は増えるが単価は下がる

図3 半導体デバイスの出荷は増えるが単価は下がる


現在は、資金的に厳しい状況にある。90nmと32nmを比べると研究開発費が2.4倍、設備投資が2.1倍となり、少数の企業しか対応できなくなっている。

一方で、装置市場の70%はアジア圏にシフトしている。どの地域で投資が継続されているのかを見ると、アジアが大きくなっていることがわかる。

デバイスメーカーの上位ラインキングでは、大型投資を継続しているメーカーのほか、ファブライト型モデルが増加し、さらに、最近はファブレスが半導体メーカーのランキングに台頭している。

設備投資では、90年代は日本が隆盛していた。95年は米国のロジックメーカー、韓国のメモリーメーカーが台頭し、2000年に入ると台湾のファンダリが急成長した。そして、現在2008年、アジアメーカーへ量産拠点がシフトしている。

さらに、半導体メーカーと装置メーカーの役割についても大きな変化が見られる。
90nmでは、既存技術が8割、新技術が2割であったのが、32nmは既存技術が2割、新技術が8割と逆転した。デバイスメーカーは、アーキテクチャ、ソフトウエアなどにリソースを集中している。一方でプロセス技術は装置側にシフトしている。これに伴い、32nmではプロセス開発は装置メーカーの役割が8割となるとIBMの方が話されたが、実際、現実としてその状態が起きている。

装置メーカーのトップランキングを見ると日本メーカーは以前と変わっていない。日本は製造という観点でみると頑張っている。日本は製造が得意な民族である。これは材料も同様である。しかし同時に、開発投資などで、資金が必要となっていることから寡占化が進んでいる。


東京エレクトロンの成長に向けた取り組み

グローバリゼーションにどう取り組むか。単独では難しい。膨大な投資、開発のリソースなど世界的な能力を結集していかなければならない。

東京エレクトロンは、オルバニーのIBMや、他の装置メーカーと共同で、次世代の装置を開発している。また、IMEC、SEMATECH、東北大学、京都大学、ロームなどと共同開発を行っている。従来は先端的な顧客1社もしくは2社と装置開発を行っていくことが主であったが、現在はそれだけではすまなくなっている。装置メーカーが中心になって、各方面と協力しながら、開発力を高めていくことが必要となっている。その意味で、顧客、異業他社、大学、国家プロジェクト、コンソーシアム、材料メーカー、同業他社などと戦略的なコラボレーションの展開が必要となる。


東京エレクトロンが係るさまざまなコラボレーション

図4 東京エレクトロンが係るさまざまなコラボレーション


同時に製造という観点で考えると、同業の競合企業は、アジアに大きくシフトしている。東京エレクトロンはどうするか。日本製造業の強みを生かして、日本でコアの技術を製造していくことを念頭に置いている。日本は製造を重視する文化を持っている。

だがそれだけではいけない。米国は景気の変動に合わせて、社員を切り捨てるなどフレキシブルに対応していった。一見、人件費が高いようにも見えるが、低コストの職種もあった。日本の場合は、人材派遣、外注などをふんだんに使いながら、現在までやってきた。しかし、今後、それだけで、アジアに対抗していけるだろうか。高性能・高品質などコア技術を見極め、コアの部分は日本で開発し、製造していく。

成長へのキーワード

成長するためのキーワードは、1)Innovation 2)Collaboration 3)Global Operationである。さらに、真の製造力を身につけるために、日本の製造力を強化し、アジアと競争し、アジアと協力しながらリーダーシップをとってやっていかなければならない。


(2008/09/22 セミコンポータル編集室)

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