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センサとパワーのインテリジェント化に成長の活路を再定義したonsemi

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このところ米国の中堅半導体企業onsemiが好調だ。金融関係の権威あるメディア「World Finance」で最も持続可能な企業に2年連続で選出され、「World’s Most Ethical Companies」の2022年の半導体企業4社のうちの1社にも選ばれ、代表的な成長企業としてS&P 500とFortune 500にも選ばれた。インテリジェントパワーソリューションとセンシングに注力する。林孝浩オンセミ日本法人代表取締役社長に同社の戦略を聞く。

図1 林孝浩氏、オンセミ株式会社 代表取締役社長

図1 林孝浩氏、オンセミ株式会社 代表取締役社長


「onsemi」は、昨年の8月、従来の「ON Semiconductor」から社名を変更した。同社は、旧Motorolaの半導体部門からディスクリート半導体だけを渡されてスピンオフして以来、さまざまな企業を買収しながら差別化製品を揃え、成長を遂げてきた。ON Semiconductorを長年引っ張ってきたKeith Jackson氏が退職し、旧Cypress Semiconductorの若きCEOであったHassane El-Khoury氏が2020年にonsemiのCEOに就任、更なる成長へと出発した。社名変更はその表れである。

El-Khoury氏は、Cypress Semiconductorで製品開発から事業部の管理、ビジネス開発などに携わった後、シリコンバレーの論客として有名なT.J. Rogersに代わりCEOになった。2018年には「Silicon Valley's 40 under 40」に選ばれるなど若手経営者として注目されていた。CypressがInfineon Technologiesに買収されることになりCEOを退任、onsemiに移った。

onsemiはすっかり新しくなり、製品戦略、企業方針はより明確になった。製品はインテリジェントなパワーソリューションとセンシングに注力し、その応用市場も自動車向けと工業用で急成長を遂げている。2021年の売上額は前年比28%増の67億ドル(約8700億円)であり、営業利益率は米国会計基準GAAPで19.1%と好調である。

最新の2022年第1四半期では前年同期比31%成長の19.5億ドルに達し、第2四半期での見通しは19.65~20.65億ドルとなっており、同17.7~23.7%成長が期待されている。同社は、自動車向けと工業向けで現在の日本市場にピッタリの製品ポートフォリオを備えており、日本市場でのデザインインに期待している。22年第1四半期における地域別売り上げでは、アジア59%、欧州18%、北米16%、日本7%となっているが(図2)、日本や北米では顧客の設計を行い、量産はアジアに移しているため、この比率は当分変わりそうにない。外資系企業の宿命ともいえる。


2022年第1四半期売上比率 出典:onsemi

図2 最新の2022年第1四半期におけるonsemiの業績 出典:onsemi


技術的にはパワー半導体では、SiCに力を入れている(図3)。SiCは、結晶成長メーカーのGT Advanced Technologyを買収して手に入れたため、結晶インゴットから、ウェーハ作製、MOSFETウェーハプロセス、パッケージまで一貫生産が可能な状態になっている。このため、SiCパワー半導体に関しては供給を安定にできる。これがSiCの垂直統合の強みといえるという。ただし、ロームやSTMicroelectronicsなども結晶メーカーを買収しており、onsemiだけの強みという訳ではない。


オンセミ シリコンカーバイド製造ライフサイクル 出典:onsemi

図3 結晶インゴット製造からパッケージングまで一貫生産する強み 出典:onsemi


またセンサでは、イメージングに強く、同社は、イメージセンサAR0820で、映画界に貢献したことでエミー賞を受賞している。車載向けのCMOSイメージセンサは市場シェアがトップであり、自動車向けの超音波センサでもシェアが1位だという。車載向けではLiDAR用のセンサにも力を入れている。クルマにはカメラだけでは濃霧や吹雪には対応できないため、レーダーやLiDARも欠かせない。そのためのフュージョンチップも開発している。ASIL-D機能安全を達成するため、インテリジェントパワーとインテリジェントセンサが欠かせないとしている。

工業用ではマシンビジョンやロボット、FA(ファクトリオートメーション)などのイメージセンサにも力を入れている。スマホのような民生向けとは違い、単なる画素数向上だけではなく、広いダイナミックレンジも求められる。さらにLEDの信号や照明ではLEDチップ列ごとにパルスを切り替えていく方式で駆動しているため、フリッカーノイズが出やすい。これは瞬時に画面を捉えるセンサでは、点いているLED列と点いていないLED列を捉えてしまうために起きる。onsemiのセンサはフリッカーを除去する技術を使っているため自動運転での交通信号の点滅状態を正確に捉えることができる。

onsemiは製造工場を持つ垂直統合型の半導体メーカーだが、旧三洋電機半導体の新潟工場を売りに出している。まだ買い手がつかない状況だが、一方、同社は米国ニューヨーク州のイーストフィッシュキル工場をGlobalFoundriesから買収した。ここは300mmウェーハを使うプロセスラインであり、今後の拡張がしやすい工場となっている。新潟工場は拡張できない古い工場のため売却という結論に至ったとしている。


価値観根のコミットメントを反映した受賞歴 出典:onsemi

図4 倫理面での表彰や持続可能な企業としての評価が高い 出典:onsemi


同社は、倫理面のしっかりした企業として選ばれた4社の世界半導体企業であり、Intel、Arm、Micron Technologyと肩を並べている(図4)。多様性(ダイバーシティ)や女性の地位向上などの面でも誇れるものがある。ちなみに世界19ヵ国にデザインセンターを持ち、9ヵ国に製造施設を持つ企グローバル企業であり、全社員3万3000名の内女性が45%で、取締役会の18%が女性だという。また米国法人では、マイノリティの従業員の割合は24.1%もあり、多様性に富んだ企業となっている。

(2022/06/28)

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