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XilinxのPeng CEO、ハードとソフトの両輪で顧客の価値を高める

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独立系のFPGAメーカーのXilinxは、2018年10月に適応型コンピューティング戦略を発表したが(参考資料1)、このほどCEOのVictor Peng氏がその進捗について語った。その戦略の一つはAIやCPUなどを集積した2.5D IC「Versal」であり、もう一つはC/C++やAI標準言語のPythonで書ける総合ソフトウエア「Vitis」である(参考資料2)。ハードとソフトの両輪で適応型コンピューティングを推進する分野はどこか。

図1 オンライン会見で答えるXilinx CEOのVictor Peng氏

図1 オンライン会見で答えるXilinx CEOのVictor Peng氏


ハードとソフトの両輪とAIを準備した、適応型コンピューティングの戦略は三つ;データセンター第一、コア市場での成長を加速、適応型コンピューティングの推進、であった。しかもそれぞれが関係する。最初に戦略を発表してから2年半、大きく変わったのは5Gだろう。5G基地局におけるシステムがオープンシステムへと大きく変わり、Xilinxだけではなく、NECや富士通なども参入しやすくなった。特に基地局のワイヤレスアクセス側のシステムにO-RAN(Open Radio Access Network)仕様が出てきたことだ。

O-RANは、基地局の内部を、無線部分(RU)とベースバンドの中でも無線に近い部分(DU)、そしてコア局とつながるCU部分に分け、それぞれ専用機ではなくオープン仕様で構成するというもの。これまでの専用機だとNokiaやEricsson、華為などのメーカーに独占されていたが、インターフェイスをオープン仕様にすることでさまざまな企業が参入できるようになる。さらに、ベースバンド部分をDU、CU共仮想化することで、1台のサーバーでDU、CU機能をソフトウエアだけで実現できるようになる。


通信の価値を向上させ、成長を促進

図2 5G基地局向けの半導体を揃える 顧客を増やせるO-RAN環境で機会を拡大 出典:Xilinx


O-RANは世界各地の基地局で使えるため、ここにXilinxが参入した(図2)。Xilinxは無線回路となるRF SoCを1年前にリリース、すでに50万個出荷しているが、このほど適用型のカスタムSoCとしてのRFSoC DFEを最近発表した。これは5GのRF回路である。また、マッシブMIMOを使って高度なビームフォーミングを行うチップとしてVersal AIを出荷した。

Xilinxが注力している分野は、自動車と産業向け、航空宇宙向けであるが、車載用のADAS向けに出荷した自動車グレードのユニットは8000万個に達したという。

同社が適用型コンピューティングとしている製品は3種類ある;1) Alveo演算アクセラレータカード、LSIサブシステムをスムーズにつなぐためのSmartNIC、2) 組み込みエッジ向けのSOM(System on Module)、3) ビデオシステムなど応用機器に最適化されたチップやカード、である(図3)。


プラットフォーム、モジュール、ドメインに最適化されたシリコン

図3 Xilinxはチップだけではなくカードも提供することでソリューションの価値を上げる 出典:Xilinx


さらにこれらのハードウエアに搭載するソフトウエアの開発ツールVitisも充実させ、言語としては普及しているC/C++やPythonで書ける。HDLやVerilogなどのLSI設計言語は必要ない。さらにAI用のフレームワークはTensorFlowやPyTorch、Caffeとこれも標準的なものが使える。利便性は上がった。

AIエンジンを搭載したVersal製品は、従来のUltraScale+SoCと比べると画像分類(GoogleNet)で20倍、マッシブMIMOで5倍の性能を示すが、AIはソフトウエアにも大きく左右される。ニューラルネットワークをモデルとする機械学習では行列演算を並列にしかも層ごとに次々と演算していくが、行列成分の多くが0(ゼロ)×重みという形をとる。答えはゼロなのにもかかわらず計算しなければならないため無駄が多い。このゼロ成分の多いスパース性をいかに計算せずに済ませるかで、AIの実行速度が違ってくる。そこで、優れたスパース性のアルゴリズムを開発したNumenta社と提携し、そのアルゴリズムを採り入れることで、同じハードウエアでもAI性能上げている(図4)。この図のDSAはDomain Specific Architectureの略である。


INT8性能

図4 ハードウエアの微細化やアーキテクチャだけではなく、アルゴリズムでもAI性能を上げる DSA: Domain Specific Architecture 出典:Xilinx


XilinxはAMDによる買収提案を受け入れ、合弁の準備を進めているが、CPUとGPUを持つAMDと、FPGAの得意なXilinxは互いに補完し合う関係であるため、最強のコンピューティングが可能になるとしている。ただし、Xilinxは自動車向けに力を入れているがAMDは自動車には参入していない。これに対して「AMDと一緒になると、自動車メーカー(OEM)にとっては大きなチャンスとなり、このためにAMDにも自動車向け市場のノウハウを教えられる。将来はGPUが必要になる場面も出てくるだろう」とPeng氏は語った。

参考資料
1. Xilinx、超高級2.5D-LSIの全貌を明らかに (2018/10/12)
2. Xilinx、AIを含めた統合ソフトウエアプラットフォームVitisを発表 (2019/10/02)

(2021/05/18)

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