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MRAMは商品化と10nmの限界を極める研究の2本立て

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MRAM(磁性メモリ)が実用期を迎え、その基礎技術となるスピントロニクスを研究してきた東北大学の国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)がこのほど第4回CIES Technology Forumを開催した。今回の位置づけは何か、新たな変化点をセンター長の遠藤哲郎教授に聞いた。

遠藤 哲郎教授、東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター長


磁性体の電子スピンをデバイスに利用するスピントロニクスの研究開発フェーズは、さらなる微細化を追求して限界を極め続けるが、一方で実用化フェーズにも入ってきている。AI(人工知能)やIoTなど応用に特化した、MRAM(Magnetic Random Access emory)単体や組み込みMRAMの商用化が始まっている。旧Freescale Semiconductorからスピンオフして設立されたEverspin TechnologiesはすでにMRAMあるいはST-MRAM製品を7000万個以上出荷してきた。ただし、この会社だけがMRAM先行してきたともいえる。

ここにきて、韓国のSamsungのファウンドリ部門とGlobalFoundriesが組み込みMRAM (eMRAM)を今年末から出荷すると今回のフォーラムで発表した(参考資料1)。60nm〜40nmプロセスを使うMRAMではすでに産業への移転が終わったと考えてよい、と遠藤氏は言う。次はメモリからプロセッサなどの下流へシフトするようになろうとみる。これは、プロセッサにはレジスタと呼ばれる一時記憶回路があり、このレジスタはSRAMで構成されているが、それをMRAMに置き換えるという訳だ。プロセッサのレイテンシを短くすることができるようになる。さらに、システムにMRAMを使えば、HDDやNANDフラッシュの起動時のソフトウエアのRAMへローディングしなくても済むようになり、システムを瞬時に立ち上げることができる。

では大学の研究として、どの方向へ向かうのか。遠藤氏は原点に戻って、10nmサイズのMTJ(Magnetic Tunneling Junction; MRAMのメモリセル)を原理から立て直す研究を考えている。今回、シミュレーションでは10nmのMTJはできるという感触が得られたという。MRAMでは10nmに行く前に、30nmに技術の壁があると遠藤氏は言う。磁性体には磁区(magnetic domain)と呼ばれる小さな磁石の塊がずらりと並んでいる。これまでのMTJだと複数個の磁区が1個の磁性膜に存在していた。しかし30nmは磁区の大きさにほぼ等しくなり、30nm以下のMTJでは1個の磁区の中にMTJが作られることになる。このため、MTJを30nmから小さくしていくにつれ、磁力の強さが弱くなっていく。

この壁を乗り越えるための研究が世界中で行われており、物性を見直す必要がある。一つは、磁気異方性の強くなる材料を混ぜることであるが、耐熱温度が低すぎれば使えない。また、MRAMを生産する企業は、できるだけこれまで使ってきた元素以外のモノは使いたくない。できるだけCo、Fe、Bで構成したいという気持ちが強い。MTJは、CMOS回路の上の配線層に形成するため、基本的に3次元構造である。配線層内だからこそ、700°Cのような高温にはさらされないものの、銅配線で必要な400°Cは必要だ。

東北大では、Co、Fe、B系材料を維持しながら、30nmの壁を乗り越える開発を進めてきた。400°Cの熱にも耐える10nmのMTJのメドを立てることができたという。CMOSが最終的に3nmまで微細化できるとすると、MTJはCMOSとの抵抗のバランスからその3倍が限界となる、と遠藤氏は見ている。これは、CMOSと共存できるMRAM技術の限界ということになり、30nm以下のプロセス技術を企業へ提案できるようになる。

東北大ではこれまでもMRAMを開発してきたことから、実用化を支援できるようになり、eMRAMをはじめとして、回路やアーキテクチャなども支援できる。また高速アクセスが可能なことから、MRAMに適したソフトウエアの開発も行われることが期待され、IoTやAIプロセッサへの応用が始まる。

加えて、MRAMをテストする測定器の開発を測定器メーカーのKeysight Technologyと共同で進めてきており、KeysightはNXシリーズのMRAMテスターとしてNX5730Aを2016年にリリースしている。大学としては、産業界の要求に応える研究を行うことで、産業界の下支えをして世の中の役に立つ研究をしていることでモチベーションが上がると遠藤氏は語っている。このCIESは企業との産学共同研究が多く行われており、Keysightだけではなく、もっと多くの企業と協力している。

参考資料
1. 組み込みMRAMを今年末にファウンドリ2社が生産開始 (2018/03/23)

(2018/04/04)

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