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超少量多品種のIoT時代を生き抜く方法を提示したUMCのCEO

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IoT市場は、これまで経験したことのないほど少量多品種になる。ITやエレクトロニクスだけではなく、農業から工業、医療、小売商店、社会インフラなどこれまでにない幅広い分野に渡り、各市場は小さいからだ。組み込みシステムに送受信機を付ければIoT端末になる。ここでは低コスト技術がカギを握る。UMCのYen CEOが抱くその秘策を聞いた。

Po Wen Yen氏、UMC、CEO(写真はUMC Technology Forumで講演した様子)

図1 Po Wen Yen氏、UMC、CEO(写真はUMC Technology Forumで講演した様子)


セミコンポータル: 昨年の半導体産業は途中で失速しました。2015年と2016年の違いは何でしょうか。
Yen氏: 個人的な意見ですが、2015年の半導体ビジネスはスマートフォン産業にけん引されてきました。それが第2四半期から在庫が増え、需要が変化しました。これに対して、2016年の前半はエンドカスタマを見ていますと、極めて楽観的です。第1四半期は例年だと前年の第3四半期をピークに第4四半期よりも落ちます。しかし、今年はさほど落ちていません。
また、スマホビジネスの成長が飽和しつつありますが、市場規模は最大です。それでも数%は成長するでしょう。これを踏まえたうえで、インダストリー4.0をはじめとするファクトリーオートメーション(スマートファクトリ)や、自動車など他の分野へも展開していきます。ここが2015年との大きな違いでしょう。
2016年は日本市場にとって良いビジネスとなります。というのは、日本は工業分野ではFAやロボットなどに強く、しかも自動車では世界をリードしているからです。自動車ではトヨタ自動車や本田技研工業など世界に先駆けてハイブリッドカーを生み出し、電気自動車でもリードしています。さらには自動運転車でも素晴らしい技術を持っていますので、日本市場には楽観視しています。

セミコンポータル: 2016年の設備投資計画についてお聞かせください。
Yen氏: 今年は増やします。2015年より以前は、ほぼ13億〜15億ドルを毎年投資していましたが、2015年は19億ドルに増やしました。2016年は現時点で計画しているのは22億ドルです。マクロ経済は今年それほど良くないですが、実際には22億ドルを超えるでしょう。当社は、独自技術の開発と、生産能力の増強のために投資を推進します。

セミコンポータル: UMC Technology ForumでUMCは中国工場を建設し、稼働が始まったと述べられました。中国経済が減速し、さらには台湾では独立指向の新政権が誕生しました。中国のカントリーリスクについてどのように考えていますか。
Yen氏: 確かに中国経済は減速していますが、依然として大きなポテンシャルを持っています。中国には多くのシステム会社やデバイス会社があり、ファウンドリにとっては好ましいビジネスになります。これは欧米や日本・韓国と同様で、システム会社という市場が存在します。だから中国のカスタマをサポートするための工場を稼働させました。 政治的な状況に関しては、UMCは基本的に台湾政府の方針に従います。個人的な意見ですが、新政権の蔡英文総統は経済の安定を望んでいると思います。経済第一だからです。蔡総統はグローバルな感覚を持ち、バランスのとれた政治を行うと思います。ですから新政権だといえ、大きく変わることはないでしょう。

セミコンポータル:中国で工場を建てた時のインセンティブは何かありましたか。
Yen氏: 稼働が始まった、中国福建省の厦門(アモイ)工場は、福建省と厦門市との合弁会社です。UMCは、中央政府からの助成金はもらっていません。すでに工場を運営し生産増強を図っていますが、経営陣のボードメンバーとしては少数派です。工場を建てる時に現金を供出しましたが、中国の子会社にはなりたくありません。今後は(株式を購入して)マジョリティへ持っていきたいと思っています。

セミコンポータル: UMC Technology Forumで、IoT時代には、多様化とタイムツーマーケット、システムインテグレーションの3つの軸で説明されましたが(図2)、システムインテグレーションの意味を教えてくれませんか。
Yen氏: IoT市場は、さまざまな多くの細分化された市場で出来ています。スマホは大量生産の製品でした。スマホの次のビジネスを探す動きはありますが、IoTはこれとは全く逆に少量多品種のビジネスです。スマートビルディングやスマート農業、医療ヘルスケアなど個々に分かれています。農業ではIoP(Internet of Plant)という言葉さえ生まれています。


図2 多様な技術と開発時間の短縮そしてシステム統合でIoT時代に勝つ 出典:UMC

図2 多様な技術と開発時間の短縮そしてシステム統合でIoT時代に勝つ 出典:UMC


IoTシステムでは、それぞれの市場が小さいため、参入バリアが高いのです。だからコストを下げる必要があります。このためにシステムインテグレーションが必要になります。いろいろなアプリケーションに対して、設計やIP、テストやアセンブリ、ファウンドリなど少ない数量に対して、もっと効率よく作れる方法を探さなければなりません。しかも、コスト削減のためにいくつかのプロセスやIPを寄せ集めて、同じプロセスや同じIPをできるだけ使うようにします。このために各分野の小さな企業が集まって低コストで作るための知恵を出し合うのです。いわばサプライチェーン全体の統合が必要になります。それが、マスクやIP、ファブレスなどサプライチェーン全体が集まり、力を合わせるアライアンスです。いわばバーチャルIDMにするのです。
日本はファブライトやキャペックスライトへと進んでいます。しかし日本企業はアイデアが豊富で、素晴らしい製品があります。

セミコンポータル: TSMCは、アセンブリ技術としてFO-WLP(InFO)技術をAppleの将来のiPhone向けに開発しています。この技術はOSATとファウンドリとの中間に位置する技術です。UMCは3D-ICへどのように取り組んでいますか。
Yen氏: 2.5Dや3DのICに対してもUMCはシステムインテグレーションのアプローチで行きます。2.5Dや3DのICもIoTと同様、異なるスペックや異なる応用、異なる大きさで作ります。インターポーザを作る場合にはCPUやGPUなどのメーカーと一緒に開発しなければなりません。UMCはアスペクト比の非常に高い溝を製造できるプロセス技術を持っています。OSATは、UMCがTSVで細くて深い溝を形成した後の工程を受け持ちます。すでにUMCはトップ3のOSATと共にTSVをクォリファイ(品質認定)しています。

セミコンポータル: Technology Forumでは第5世代の通信技術5Gに関するコメントはありませんでした。世界の技術トレンドでは5Gをこれからの大きな流れの一つとして捉えていますが、これをどのように見ていますか。
Yen氏: 5Gは量産レベルからは非常に早期の段階です。5Gに使われる技術としてミリ波通信がありますが、そのプロセスへの対応を準備し始めた所です。ミリ波は3GHzから300GHzまでを定義するようですが、70〜100GHzのミリ波が主流になりますので、設計会社とすでにこれを開発しています。実用化が始まるのは2020年ごろでしょうから、その準備として意識しています。

セミコンポータル: 自動車用エレクトロニクスは、非常に幅広いチップを開発しなければなりません。車体のボディやエンジン回りから、インフォテインメント系のチップまであります。自動車用のチップメーカーにUMCの能力をどのように示しますか。
Yen氏: 自動車用半導体ビジネスは非常に足が長いです。製造を安定にし、信頼性を高く、長く使えて、長期間供給できるチップを製造する必要があり、技術的には成熟したものが求められる傾向があります。しかもビジネスの継続性のために安定供給も求められます。 私がUMCのCEOに就任した、2012年の11月ころは、自動車用半導体とIoTが注目され始めました。自動車用にはアプリケーションプロセッサのような微細な製品ではなく、車載用の特殊な技術(スペシャルティテクノロジー)に重きをおいて開発することにしました。特殊な技術からRF(高周波)やアナログ、パワーへと広げていきました。自動車用の製品プロセスを用意すると、売り上げは早くも立つようになり、それ以来増え続けてきています。
ですから、ネットワーキングやサーバー、通信インフラなどハイエンドなアプリケーションは、プライオリティを下げました。ただし、ベースバンドICやRF製品向けのファウンドリはやっています。というのは、ハイエンド市場以外の方が市場規模は大きいからです。UMCは的確なタイミングで低コストのソリューションをカスタマに届けます。

セミコンポータル: 最後に、日本のメーカーあるいは市場へメッセージをお願いします。
Yen氏: いくつかのメッセージを台湾企業にも発しているのですが、この産業はトップ企業による寡占化が進んでいます。だからこそ、私は(中小)企業にもっとオープンにしてみんなで集まろうと呼び掛けてきました。国によって政府の助成金サポートがしっかりと効いている国もあります。これでは世界的に公平な競争になりません。日本や台湾には巨大な半導体企業がありません。だからこそ、もっとオープンにして一緒に集まって対抗軸にしましょう。寡占企業に対抗するため、日本と一緒のチームを作りましょう。

(2016/06/24)

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