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「サプライチェーンと半導体応用に強い日本の参加を求む」

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Luc Van den Hove氏、ベルギーIMECのCEO

ベルギーの半導体研究開発会社IMECが今年も日本でセミナー「IMEC Technology Forum(ITF)」を開いた。半導体製造よりもファブライトやファブレスを志向する日本の半導体産業に何を求めるのか、IMECのCEOであるLuc Van den Hove氏に会場で即興インタビューを行った。

図1 IMECのCEO Luc Van den Hove氏

図1 IMECのCEO Luc Van den Hove氏


Q1(セミコンポータル編集長): IoTは産業界をドライブすると、基調講演の中で言われましたが、IoT端末は、センサとMCU、送受信回路があればよく、どれも微細化は必要ありません。IMECはIoTで何を推進しようと考えておられますか?

A1(Luc Van den Hove氏): 確かにIoTそのものはプロセスノードとは直接関係ありませんが、IoTにはたくさんのコンポーネントが含まれています。産業界を牽引すると言ったのは、さまざまなコンポーネントが係わってくるからです。まずセンサとしてMEMSセンサがあります。例えば、センサの中にDSPを集積することが可能になります。これにより、消費電力を下げることができます。センサはこれからますますインテリジェントになります。またセンサは、フォトニクスや3次元積層技術とも関係します。最先端のフォトニクスや3次元積層技術はこれまでは開発に力がそそがれてきましたが、これからはこれらがセンサと組み合わせるようになるでしょう。フォトニクスやマイクロフルイド(微細な流路)などのプラットフォームにセンサが載ることが可能になります。すなわち、さまざまなレイヤーにいろいろなセンサチップを集積することになります。
今後、センサはさまざまなデバイスやクラウドとデータのやり取りをするようになります。そしてIoTは新しいインフラや通信ネットワーク、データセンターなどを牽引します。これらは最先端技術が求められる分野です。例えばデータ量の多いビデオは通信トラフィックを増やすため、それを解決する半導体の需要を牽引します。データセンターやサーバ、クラウドなどの需要をさらに増やすことにつながり、それに必要な最先端の半導体も求められるようになるのです。だから、IoTが産業をドライブするとIMECでは考えています。こういったIoTとその周辺の成長は、スマートフォンの更なる成長も促します。


図2 基調講演を行うLuc Van den Hove氏

図2 基調講演を行うLuc Van den Hove氏


Q2: 材料の重要性についても触れられていましたが、どのような材料開発を進めておられますか?
A2: 周期律表を見ながら、実に様々な材料を検討します。半導体用のGeやIII-V化合物材料だけではなく、高誘電体などメモリストレージのキャパシタに使う材料、パワーデバイス用のGaN材料、バッテリストレージ用の材料(陰極、陽極、固体電解質)、なども研究しています。
材料開発は、あらゆるプログラムに欠かせません。CMOSの次のデバイスを求めて、グラフェンだけではなく、MoSe2(セレン化モリブデン)などについても研究しています。

Q3: ヘルスケアにも力を入れておられますが、日本からどのようなパートナーを探していますか?半導体メーカー、ヘルスケア・医療機器メーカーですか?
A3: 現在、深くコラボレーションしている日本企業があります。IMECのプログラムのコアはCMOSで、このプロジェクトにパナソニックやソニー、富士通、東芝などが参加しています。さらに、日本には東京エレクトロンやSCREENをはじめとする製造装置メーカー、JSR、富士フィルム、住友化学などの材料メーカーが参加しています。後工程に関しても新光電気工業が参加しています。
半導体の応用に関してもパートナーを求めており、医療機器ではオムロンやパナソニック、ワイヤレス技術では村田製作所やパナソニック、再生可能エネルギーではカネカ、センサはパナソニックやオリンパス、IoTでは超低消費電力プログラムでルネサス、ワイヤレス通信プログラムで東芝が参加しています。
私たちは、日本企業にもっと参加してほしいと考えています。IoTや、これに関連する分野がこれから成長するからです。ヘルスケアだけではなく自動車やエネルギー関係の企業も含まれます。というのは半導体の応用がIoTをドライブし、成長する企業が日本にますます増えてくるからです。

Q4: 日本の半導体メーカーは製造分野を縮小していて、半導体企業はIMECに参加するでしょうか?
A4: IMECは、半導体をコアにした全てのエコシステムを考えています。IMECの研究は半導体チップの製造技術だけではありません。日本には特に材料が極めて強い企業が集まっています。材料をはじめとするトータルサプライチェーンに渡って、強い日本企業とパートナーシップを組みたいと考えています。応用側でも医療や自動車やといった強い分野があります。欧州にはサプライチェーンが乏しいですが、応用は多いです。トータルのエコシステムを考えると、日本が得意な所をもっと強くして伸ばしていけばよいのです。日本の半導体はこれからファブレスに向かおうとしていますので、ファブレスも増やしていきたいと考えています。ですから、私たちは、大きなエコシステム全体像(Big picture)を描いておりまして、単なる半導体だけにとどまっていません。

Q5: どのようにして新しい応用を見つけるのですか?
A5: 半導体だけではなく、他の異なる産業とも一緒にコラボレーションしてエコシステムを構築していますが、こういった人たちとのディスカッションを通じて、IoTのような次世代のドライバとなる新しい機会を見つけます。
時には病院の医師や薬品企業の人たちとも話をします。これらの人たちをIFTのようなセミナーにも招待して、彼らのビジネスに半導体やナノエレクトロニクスを導入します。IMECは半導体、ナノエレクトロニクスで最も先端的な研究所です。同様に医学の分野でも最も進んだ研究所を探し、一緒に研究する機会について話をします。例えば、Johns Hopkins Medicineはそのような研究機関の一つです。医師や手術医、薬剤師など様々な専門家たちとディスカッションし、革新的に医療を変えるコンセプトを探っていきます。これが新しい未来の応用につながります。

(2014/11/28)

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