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英市場調査会社から見た日本の半導体産業、コラボレーションの勧め(1)

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Malcom Penn氏、英Future Horizon社 CEO

英国に居ながら世界の半導体市場を見ている、市場調査会社のフューチャーホライゾン(Future Horizon)社。日本の半導体産業を復活させるために必要なことは何か。海外の眼から見て、日本に欠けているもの、強化すべきものについて聞いた。インタビューが長時間に及んだため、今回は第1部としてお伝えする。

英Future Horizon社CEOのMalcom Penn氏

英Future Horizon社CEOのMalcom Penn氏


Q1(セミコンポータル編集長): 現在日本の半導体産業はエルピーダメモリが会社更生法の適用を受けました。ルネサスエレクトロニクスも構造改革に向けて奮闘中です。まず、日本の半導体産業の現状をどのようにみていますか。

A1(Future Horizon社CEO Malcom Penn氏): この10年間の日本は全体的に失望しました。2000年のドットコムバブル以来、相変わらず市場の拡大や、製品ポートフォリオの拡大、などを続けました。こういった動きはダウンサイジングやアウトソーシング、コアコンピタンスへの集中、といった戦略とは正反対です。

売上やシェア、利益率などを改善する方法として、古典的な方法は合併でした。しかし、半導体業界では合併はうまくいきませんでした。唯一の例外はSTマイクロエレクトロニクスでしたが、最近は同社もうまくいっていません。大企業同士の合併は、基本的なシステム本体部門、セールス部門、IT部門など全てがうまく行きませんでした。組織が複雑になり官僚的になり、コスト構造やオーバーヘッド構造なども中庸を採ろうとするからでした。

日本ではかつては日立製作所と三菱電機の合併、2年前はさらにNECエレクトロニクスも加えた合併、という形を採りましたが、1+1=1にしかなりませんでした。2年前ルネサスエレクトロニクスは期待されましたが、100日プロジェクトには失望しました。成長戦略、人的なマネジメントなどの戦略がなく、野心的なプランもベンチャースピリットもありませんでした。

最近は、従業員の1/3に相当する1万5000人規模のリストラをするようですが、その後の展望が全く見えません。今のところ、コストカットだけに集中しており、負のスパイラルを繰り返すように見えます。このままではさらに工場を閉鎖し、さらに5000人カットや1万人カットといった繰り返しに終始するようになり、出口が全く見えません。

Q2: 日本の半導体チップ産業を復活させるためにどうすればよろしいのでしょうか。

A2: 日本の外から見ていまして、産業界は、目的もポリシーも方向性もなく、戦略的な目標や狙いもなく漂っている漂流船のように見えます。しかもリーダーシップに欠け、エコシステム全体に渡って調和を図ろうという動きもありません。次の障害物に衝突し続けるようにも見えます。

半導体産業がどこへ行こうとしているのか、リーダーシップがなく、エコシステム全体を通じた協調性に欠けています。世界的には日本が孤立しており、世界とコラボレーションしてプラットフォームを作ろうとしていません。これでは効率が悪く、うまくいきません。

欧州はかなり前にコラボレーションすることを学びました。当時は、とても輝いており、力強く、アグレッシブな日本の半導体産業と向かい合っていました。欧州はバラバラの市場で、このまま死を待つか反撃するかという選択肢しかありませんでした。そこでみんなが協力し合うという道を探りました。このためには、組む相手にオープンで、正直で、信頼するといった関係を築くことが重要で、これによってリスクを共有しマキアベリアン(目的のためには手段を選ばない策略家のような)的にならずにコラボレーションできるようにしてきました。

ここ3年間、日本にやってきてかつての欧州半導体が直面したような思いを持っています。コラボレーションや成功事例などのお話を差し上げ、半導体産業、装置産業、材料産業をより良くしていこうと提案してきました。しかし、話を聞いてくれた人たちは何も動こうとはしませんでした。このままでは欧州と同様に、座して死を待つか、反撃に転じるのか、しか選択肢はありません。

では何を行うべきか。二つあると思います。一つは従業員と経営層が一緒になって解決に向かうことです。日本には50万人の半導体およびその関連産業で働く人たちがいると見積もっています。そのうち1万人が経営層でしょう。こういった人たちが立場を捨ててみんなで方向性を見つけることです。これまでは経済産業省や大手企業の一握りの経営陣が決めてきたことが間違っていました。日本が進むべき道をみんなで探るのです。

もう一つはエコシステムを作ることです。このエコシステムで話し合うことも重要になります。エコシステムは各社がそれぞれ得意なところにフォーカスし、各社が組織的に協力しあうシステムです。

半導体製造に関しては今やTSMCだけが低コストで製造できると考えてはいけません。東芝は強いし、サムスンもTSMCと競争できます。われわれの未来はTSMCの顧客になることではありません。

もう一度活力を取り戻し、みんなの声を聞き、水平的に協力することを考えなければなりません。材料、製造装置、半導体チップ、セットメーカーとコラボレーションすることでバーチャルな垂直統合システムを作ります。強い東芝やサムスンは垂直統合企業です。アップルでさえバーチャルな垂直統合企業です。彼らに対抗できるようにするためにバーチャルな垂直統合システムで、研究開発により最新の半導体チップを作り世界的なセットに組み入れます。今はグローバルな視点でパートナーを組み、孤立を突破しましょう。TSMCの独占を許すべきではありません。
(続く)

参考資料
1. 英市場調査会社から見た日本の半導体産業、コラボレーションの勧め (2) (2012/06/27)

(2012/06/27)

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