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新生CMOS on SapphireのRFチップで携帯電話市場のGaAsを置き換えていく

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Rodd Novak氏、米Peregrine Semiconductor社 チーフマーケティングオフィサー

CMOS/SOSのSOSはSilicon on Sapphireの略だが、CMOS/SOSはサファイヤ基板の上にシリコンをエピタキシャル成長させたデバイスである。懐かしさを感じる人もいるだろうが、米国のベンチャーPeregrine Semiconductor(ぺリグリン・セミコンダクタ)が高性能・低価格を売り物に高周波トランシーバスイッチやパワーアンプを設計している。このほど180nmプロセスでIBMと提携した。SOSビジネスを急成長させている同社のCMOであるRodd Novak氏にその狙いを聞いた。

米Peregrine SemiconductorのRodd Novak氏

米Peregrine SemiconductorのRodd Novak氏


Q1(セミコンポータル編集長): サファイヤ基板上にCMOSデバイスを作ろうとされたのはなぜですか。
A1(ペリグリンセミコンダクタ ロッド・ノバック氏): 当社がUltraCMOSと呼ぶ独自のCMOS技術は、携帯電話や基地局で使う高周波(RF)のフロントエンド技術をさらに高性能、低消費電力を実現することがわかったからです。特にSOI基板を用いる場合、基板シリコンの高抵抗部分によってリニアリティが悪くなり、その結果混変調歪みが改善されません。SOS技術はRF回路ではSOIよりも性能が高く、十分なアイソレーション性能が得られ、チューナの性能を改善できます。私たちはSOIの先を行くRF技術がUltraCMOS技術だと認識しています。

Q2: CMOS/SOS技術と呼ばないで、UltraCMOSと呼ぶのはなぜですか。
A2: CMOS/SOSだと、昔の古い技術というイメージがあります。しかも用途は宇宙航空・軍事用の耐放射線デバイスとしてのイメージです。当社のデバイスは、これまでも累計で6億個出荷してきており、これからも3G、LTEといった最先端の携帯電話やその基地局応用を狙うデバイスです。新しい意味を込めてUltraCMOSと名づけました。

Q3:  従来、GaAsで作られていたRFスイッチやパワーアンプの置き換えを狙っていますが、サファイヤ基板を使うとこれまでの製品と比べて何が良いのでしょうか。
A3: これまで当社はRF CMOSとして1μm、0.5μm、さらに0.35μmとアナログ回路を微細化してきました。0.5μmから0.35μmへの微細化によって、チップ面積の縮小とウェーハ当たりのチップ数すなわち収率は向上させると同時に、RFスイッチとしての挿入損失を2/3に低減し、10倍のリニアリティ改善を果たしてきました。
今、0.35μmプロセスで比較すると、従来のGaAsスイッチの場合、GaAsチップとCMOSデコーダコントローラが必要でした。この2チップソリューションを1パッケージに収めようとすると、29カ所ワイヤーボンドが必要となり、パッケージ面積は3.0mm×3.5mm程度になりました。これを0.35μmプロセスで1チップの設計製造すると、1.36mm×1.28mmと83%も削減され、17%と小さくなります。

Q4:  このほどIBMと技術提携しました。0.18μmプロセスで提携された理由は何でしょうか。
A4:  さらに微細化するともっと性能は上がります。0.18μmという微細化によって0.35μmデバイスと比べ面積は半分になり、挿入損失も半減します。しかもリニアリティは100倍向上します。当社はサファイヤ基板のCMOSをプロセス出来るファウンドリをパートナーとしてやってきており、しかも6インチまでのサファイヤウェーハを生産に使ってきました。しかし、0.18μmでは8インチウェーハに移行してさらに収率を上げたいと思います。0.35μmプロセスの6インチサファイヤ基板で9000個のチップが取れましたが、0.18μmで8インチウェーハだと3万個以上取れます。
一方のIBMはRF CMOSのSOIプロセスではリーダー格のファウンドリでした。IBMのSOIプロセスは改善されてきていましたが、SOSプロセスはできませんでした。少し前からぺリグリンとIBMは一緒にSOSプロセスを開発してきますと、性能が格段に上がることがわかりました。そこで、IBMも180nmのRFプロセスはSOSでやることにし、共同で開発することに至りました。特許はもちろん取得しています。

Q5: サファイヤ基板を使うとコストアップになりませんか。
A5: サファイヤ基板を使うこれまでの0.35μmプロセスは歩留まりが高く、性能も上がるため、結局は低コストにできます。大量生産できるため、携帯電話でビデオを見られるように性能を上げても低コストで作れます。

Q6: 市販のサファイヤ基板は白色LEDなどGaNデバイスの基板としてたくさん使われるようになりました。しかし8インチの市販品は入手できるのでしょうか。
A6: サファイヤ基板を使った白色LEDは日本のメーカーやサムスン電子が使っていますし、TSMCもサファイヤ基板を使ってLEDを製造することを最近表明しました。サファイヤ基板はなじみやすくなってきています。価格はSOIウェーハ並みになってきています。6インチウェーハは市販品が入手可能ですが、当社は9社のサファイヤ基板を品質認定しました。GaN白色ウェーハ製造のためにTSMCは今、2インチですが6インチ化へと動くでしょう。
しかし、8インチサファイヤ基板はまだ商用化されていません。そこで、当社はサファイヤ結晶メーカー3社とパートナーを組み、中には出資しながら開発しています。この3社は名前を明かせませんが、米国、日本、ロシアのメーカーです。ロシアのウェーハは日本でポリッシュしているようです。

Q7:  デバイスとしての特長は何ですか。
A7:  これまで述べたような混変調歪みやリニアリティの高さに加え、最適な周波数を選択し、インピーダンス整合のとれたRF回路を提供できることも特長です。このためにDuNEと呼ぶデジタルチューニングキャパシタを開発しました。チューニング周波数をキャパシタを使って合わせるわけです。これは31個のキャパシタを並べることで5ビットのデジタル信号(00000から11111まで)を作り出し、キャパシタ値(例えば100MHzで0.7〜7.0pF)を変えられるように設計しました。
アナログだけのチューナだと、インダクタも集積しなければなりませんが、インダクタはその面積が大きくなりすぎるため、トランシーバチップが大きくなってしまいます。アナログとデジタルを組み合わせることで小さなチップが出来るという訳です。
キャパシタ値を替えることでチューニングさせる周波数をリコンフィギュラブルに変えることができるため、マルチバンドのチューナに向くという訳です。2012年ごろにはソフトウエア無線にも対応できるようになります。
加えて、パワーアンプに使うことを考慮して、DC-DCコンバータをオンチップに搭載しています。これはパワーアンプの消費電力を下げるため、電源電圧を一定にせず、パワーアンプ出力の包絡線(envelope)をフィードバックし、電源電圧を変えていく方式をとっています。
RFスイッチでは1GHz、50WのRFパワーを切り替えるスイッチとしての混変調歪みは45dBmのRFパワーで-85dBcと小さく、ポート間のアイソレーションは90dBcと十分な性能です。


図 不況の年でさえ成長したペリグリン社

図 不況の年でさえ成長したペリグリン社


Q8: 最後に、御社の業績を教えてください。
A8: 2009年度(1月〜12月)は過去最高の7000万ドルの売上高でした。2010年は1億ドルに到達しそうです。

(2010/06/30)

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