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Altera CEOが描く2015年の展望〜IoTの思わぬ展開に

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AlteraのCEO兼会長であるJohn Daane氏(図1)が2015年の産業界を展望する。やはり大きな動きとしてIoT(Internet of Things)を採り上げている。FPGAメーカーがIoT分野で力を発揮できるのは、センサとも言われるIoT端末を束ねてインターネットへデータを送信するゲートウェイよりも上のレイヤー、すなわちクラウドの世界である。FPGAはクラウドの中心である、データセンターとネットワークを進展させるドライバとなる (セミコンポータル編集室)。

著者:John Daane , CEO and Chairman, Altera Corp

図1  AlteraのCEO兼会長であるJohn Daane氏

図1  AlteraのCEO兼会長であるJohn Daane氏


近年、ASICやASSPの設計コストの高騰、機能向上に関する不確実性、量産機会の減少といったダイナミックスがプログラマブルロジック業界に影響を与えてきたが、2015年もそうしたダイナミックスが継続するだろう。新たなダイナミックスと「モノのインターネット(IoT)」の進化が、思わぬ展開をもたらす、という不確かな環境を生み出している。IoTの実現に向けて、業界は頑張っているため、2つのトレンドが生じることが予想される。これらは、プログラマブルロジックの強さに直接関係し、FPGAに大きなビジネス機会をもたらす。

IoTの概念
IoTの概念は、「デバイスをエレクトロニクス技術で制御すれば、その制御デバイスをインターネットにつなぐことができる」というシンプルなもの。個別のIPアドレスを持つことで、デバイスは新しい力を得る。例えば、スマートフォンやクラウド・アプリケーションを介して、現在の状況を報告し、データを送信、コマンドを受信することができる。

また、インターネット接続はパラダイムシフトを加速する。設計者はクラウド・ソフトウエアを使用して、デバイスに機能を追加し、ビックデータ分析を活用してデバイスの性能を上げることができるようになる。ポータブルな超音波デバイスを一例として挙げよう。これは、撮像デバイスを自ら調整し、撮影された画像に重い画像処理を行い、世界中の既存の画像、診断、治療成果の巨大なデータベースと比較して、ユーザーに指示を与えられる。

また、インターネット接続を活用することで、インテリジェンスをデバイス上ではなくクラウドに置き、デバイスの低コスト化、ポータブル化を図り、機能のアップグレードを簡単にできるようにもなる。最終的に、デバイス内のすべてのセンサとアクチュエータは、インターネットを介してサーバー上の制御ソフトウエアに接続されることになる。

このプロセスはすでに現実のものとなっている。アップルのSiriなどのスマートフォン・サービスは、デバイス上ではなく、クラウドの中で実行されている。ネットワークの領域では、ネットワーク機能の仮想化(NFV)により、専用のネットワーキング・ハードウェア機器全体が、データセンターのサーバー上で稼働するソフトウエアに置き換えられている。IoTが普及する未来は、インターネットを介して巨大なデータセンターに接続する、とても小さな低コストのセンサとアクチュエータが至る所に存在する世界になるように見える。

しかし、この図式はあまりにも単純過ぎる。FPGAにとっては好ましい、データの高速化とネットワークの高機能化というトレンドは、より高速で予測可能なリアルタイムの性能や、低消費電力のWiFiおよびイーサネット接続、および急速に進化するデバイスのセキュリティ、といったニーズに対応するものである。

データセンターの高速化
データセンターでは、従来、ハードウェアで処理されてきたタスクがサーバー上のソフトウエアで処理されるという変化が起きている。この変化は容易に実現できる場合もあるが、時にはタスクを多くのスレッドに分け、そのスレッドを多くのサーバーに振り分ける必要がある。しかし、 マルチスレッディングでもソフトウエアを十分高速に動作できないことがある。しかし、タスクのリアルタイム要件を満たす場合には、ハードウェア・アクセラレーションが必要とされる。

ウェブ最大手のマイクロソフトのBingと百度のデータセンターは、アルテラがサポートしたものだが、優れた柔軟性と強力な並行処理能力を備えるFPGAにより、サーバーCPUの処理能力、応答時間、エネルギー効率を向上できることを実証している。このトレンドの重要な点は、データセンターのプログラマが慣れ親しんだ言語に、FPGAをプログラムし直すことができる、またはデバッグできるということである。例えば、アルテラのOpenCL™のSDK(ソフトウエア開発キット)ツールを使用することで、プログラマはCPUとFPGAを接続する完全なインタフェースプラットフォームを高級言語で構築し、デバックできるようになる。

ネットワークの高機能化
もう1つの課題は、今日のインターネットが3つの理由からIoTに適さないということです。第1に、デバイスをインターネットに繋ぐゲートウェイであるWiFiとイーサネット接続は、常時接続する必要があるが、消費電力が大きい。つまり、”モノ”である小さなセンサやアーキュレーターとは全く正反対である。だから、現在は無数の低消費電力の近距離ネットワークにより、”モノ”をハブに接続し、そこからWiFiやイーサネットに接続しています。

第2に、デバイスの中には、モーター制御のように、最大遅延の保証が求められるタスクを持つものがある。もし、そのコントローラからのデータをインターネットの一方の側に動かす場合、パケットが時間通りに確実に各エンドに届くことを保証することはできない。結局のところ、この問題を解決するには、遅延のないネットワークの開発など、新しいネットワーク機能が必要になる。しかし、現状では、これらの制御ループを実行するために、IoTのハブ上でリアルタイムにコンピュータ処理を行う必要がある。

第3として、ハッカーは確実にIoTを攻撃してくるだろう。2010年のスタックスネット・ワームを思い起こしてみよう。IoTが市場に出回るにつれ、IoTハブには認証、暗号化、機能安全に対応する責任が生まれてくる。今後、IoTハブは、非常に多くの超消費電力ネットワークプロトコルや、さまざまなアプリケーションに関係するリアルタイムコンピューティングの負荷、さらに急速に進化するセキュリティとセーフティタスクにも対応する必要がある。このような多様で不確定な環境は、ASICや標準SoCにとっては望ましくないが、高速で演算効率に優れたFPGAにとってはごく自然な環境になる。

2015年の見通し
ネットワークやデータセンターといった共有リソースへの投資と、端末デバイスへの投資は、まるで振り子のように揺れることが予想される。今日、急増するスマートフォンへの投資から、4GネットワークやIoT周辺ネットワーク、それらのスマート・ハブ、および進化するデータセンターに対する投資へと、トレンドは移っている。業界がこうした新しいトレンドに直面するにつれ、プログラマブルロジックが新しいインフラ開発をリードする最前線のソリューションになってゆくことは間違いない。2015年は当社にとって、とてもエキサイティングな一年になるだろう。

(2015/01/21)

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