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太陽熱発電も再生可能エネルギーとして海外では力が入る

お金は空から降ってくることはないが、燃料が降って来る発電は3つあり、それは水力と2種類の太陽発電である。太陽発電の一つは半導体を応用したPV(http://www.semiconportal.com/archive/blog/insiders/oowada/post-100.htmlおよびhttp://www.semiconportal.com/archive/blog/insiders/oowada/pv.html)であり、もう一つは太陽熱を用いるSolar Thermal Power 発電である。水力発電は将来発展しない。太陽熱発電に挑戦する人々は、私の知る限り日本に存在しないため、我が国では太陽熱発電を知る人が少ない。

とはいえ、太陽熱発電を実用化しようとする国々は少なくない。米国もその一つだ。化石燃料は高騰を続け、最近、市場では石油が1バレル当たりで120ドルを超えた。石炭、石油、LNGなどの化石燃料は、今や高額な上に地球温暖化の元凶と見なされている。

太陽熱発電の原理は素直でわかりやすい。砂漠に多数の鏡を設置する。北半球では太陽が東から出て南を回り西に沈む。その光を受けて反射させ標的に焦点を結ばせるために、鏡は西側−北側−東側と半円の弧を描くようにして内側に向けて置く。焦点の位置には黒いチューブ状の容器に入れた媒体になる液体を設置する。媒体液としては化学的に安定なある種の油を使う。媒体油は容易に摂氏数百度に昇温する。媒体油を循環させ水と接する熱交換器を通せば水の温度はグングン昇って150度を越え高圧蒸気が発生する。水は消耗してなくなるが、その前に蒸気タービンを回転させ直結する発電機が回り発電が行われる。

良好なデザインのシステムはパラボラの凹面鏡を用いる。小さなサイズにすると製作上は容易でその数は10万個を越える。一つずつ独立に角度を変えるようにセットしている。太陽は動くからその動きに合わせて刻々と追跡してベストの加熱ができるように調整する。容量を大きくするためシステムは上に伸び、結果としては焦点部分の容器は搭を形造り、パワータワーと称している。円弧状に置く鏡の壁も空に向けて高くする。その他の詳細はノウハウの塊であって書くことはできない。

起動時に少々ガソリンを使うことを除けばシステムで補給するものは原理上、水だけだ。水蒸気はタービンを通過後に空気中に放出し、そして地球規模で循環し雨になり再びどこかで水に戻る。起動プロセスは意外に重要である。一日の終わり、日没の後にシステムを正しく停めて翌朝には再び起動する。突然、にわか雨が降りそれが本降りになる場合さえある。システムは余熱で数時間は稼働させることができる。天候の変化を予測する作業が相当に大事になる。

米国は陽光に恵まれ太陽熱発電がPVを追い駈けている状態だ。カリフォルニア、アリゾナ、ネバダの各州で太陽熱発電の試験研究が加速している。この3州は砂漠が多く、他に使える用途はなくとも太陽熱発電には適している。

太陽熱発電は屋根上が標準のPVと違い家庭向きでない。理由は、広い場所が必要な上に設備投資が高額だからである。ただし、数百MW(メガワット)クラスの発電ができる。カリフォルニアのモジャブ砂漠の試験機は数年前に354MWを記録した。東京電力での標準家庭では16kVAなので354MWは2万2000世帯を給電できるという大きな規模になる。太陽熱発電機はその6倍の2000MWが可能とされる。2000MWではおよそ12万世帯にサービスできるため、人口20万7000人で世帯数8万2000のつくば市の家庭向けなら発電機は1台で事足りる。それほど太陽熱発電の規模は大きく太陽の力は偉大だと言える。

華氏100度(37.8℃)を越える夏の真昼のシリコンバレーでは停電の発生は稀ではない。交通信号が機能せず赤信号のみが点滅することもある。電力消費には波があるものだが停電は歓迎されるはずはない。日本ではどうか?真夏の昼間の高温下で家庭が一斉にエアコンを回しTVをオンにし甲子園での高校野球に熱中し、その間洗濯機を稼働させ全電化の台所で主婦が調理をしたら電力消費はフルになる。平成19年、電力会社は夏の節電を呼びかけ一部の工場は稼働を70%くらいに下げた。このような時、太陽熱発電が稼働すれば好都合なのである。

グローバル化が進展し今やあらゆる競争が激化する時代でテクノロジー間でも競争が避けられない。太陽熱発電の実力はkWH当たり20セント程度だが、技術改良で間もなく10セントになるだろう。最新の石炭火力が7セントの実力である。日本は負けていて、私が払う東京電力の家庭向け販売単価は最低の第一段で、約16円もする。米国で太陽熱発電が研究されるのは地球温暖化対策のためで、2010年以降の新設発電設備は20%以上を再生可能エネルギーとする法規制がある。この事情からPVと太陽熱発電は競合関係にある。

現在先進国では、IT機器が急激に増え膨大な電力が消費されていて電力需給が逼迫している。『データセンター完全ガイド2008春号』によれば、日本の2006年のIT関連の電力消費は500億kWHで全体の5%に達した。この勢いで増加すれば、2025年にはその5倍に達する。データセンターを発電所のそばに建設する時代が来る。

ここまで書いて多いに心配になった。日本は京都議定書の目標を達成できるのか?できないと心配する声が多い。サンシャイン制度を日没させて、なくしてしまった日本は、今や再生可能エネルギーに関する法律もなく、一方で原子力発電は種々の障害で頓挫している。土地と天候の制約から太陽熱発電も適さないのだろうか。風力発電にも力が入っていない。日本はどうするのか?日本に住んでいて見えて来ない。


エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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