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我が国で始まった自律型全自動運転車の路上試験

よく知られているようにグーグル社は、全自動運転車の最初の試験を、2009年に始めて既に成功裡に終えたようだ。カリフォルニアの車道を10万マイル(約16万km)走ったとのことだ。その自動車旅行は通常の旅と比べて事故はより少なく信頼が置けて効率的だった、としている。東京(東名高速道路東京IC)から大阪(名神高速道路豊中IC)までの往復距離が1,048kmなので往復153回ということになる。筆者が考えるに相当まじめに走ったな!と思っている。当然ながら、路上試験は東名のような高速道路も必要だが、それだけでは駄目で、一般道路を含むあらゆる車道を走行試験する必要がある。グーグルは最近12件の事故の例を示していて公平な態度を示した(参考資料1)。

その全自動運転車の路上試験が我が国でも始まった。不覚にも筆者は、日本の規制当局が正規運転を行わない全自動運転など許可を出すはずがないと思っていた。

あにはからんや、石川県珠洲市(すずし)は、県の北東部、能登半島の先端に位置する市だが、金沢大学機械工学系の菅沼直樹准教授(ロボット工学)のチームに自律型全自動運転車の走行を許可した。この試験車はグーグルカーと同様、1秒間にほぼ10回転するレンズを装備し、その乗員は周囲の状況をそのレンズを通して見ることができるようになっている。珠洲市の市街地を通る公道でこの3月から、乗用車の自動運転走行の実証実験が行われることになったと、金沢大と珠洲市がこの2月に会見して発表した(参考資料2)。

市街地での長期にわたる自動走行実験は、国内で初めてのことだ。過疎・高齢化が進み、地下鉄などの公共交通が行き渡らない地域の足として期待されるだけではない。菅沼准教授の研究チームが、トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」に周囲の状況や信号を把握するセンサーやカメラを取り付け、ハンドルやアクセル、ウインカーを自動で操作する。現在試験中なので乗員の一人が、ハンドルに手を添えるだけで運転はしない。最速で時速60km出る。人間が乗るのは、あくまでも安全運転を確認するためだ。

試験運転コースは、鉢ケ崎総合公園(同市蛸島町)と市総合病院(同市野々江町)結ぶ6.6kmだが、もちろん、交差点や信号、横断歩道があり、他の車や自転車、歩行者が通行する中で走る。テスト走行は2020年ごろまで続け、そして実験コースを広げていく計画だ。 金沢大は1998年ごろから、自動運転の研究に取り組んできた。路上の歩行者や他の車の動きを予測する人工知能の分野で「世界最先端」の強みがあると、している。

公道の信号が青から黄を通じて赤に変わる場合、黄色時間は2〜4秒だが、試験車はうまく止まれるか?人間が運転する場合を考えれば、人が信号に反応する時間の空走と、「クルマはスグに止まれない」、というクルマの制動距離がある。時速50km走行では、前者の場合10.4mで後者は、14.1m、合計は24.5mだ。試験車も同じ空走と制動距離を仮定することができるか?優れたドライバーはこの合計値が頭に入っていて直感が働くので反応時間内に判断して黄信号の時間を使って走り抜ける場合がある。それは、上記の24.5mが目安で手前の信号が黄になり、渡り切るまでの距離を目測し24.5m以内ならブレーキを踏まずに走ってしまう。優れたドライバーはこの値が24.5mを越えると判断すれば手前で車を止める。このように交通信号だけでも重要な試験項目があって試験車は、事故にならずにうまく乗り切れるだろうか、が問われるのだ。

試験車に行先を入力する必要があるだろうが、これはカーナビの技術があり、グーグルの地図はネットから入手でき、かつGPS信号で試験車の位置がわかる。だから目的地情報を入力すればGPSと地図を頼りに試験車は走ることができる。専用コンピュータと連動するアクチュエータを使ったテストでは、間違いなく動作したか否かを観察して結果を記録するのが試験員の仕事だ。究極の入力方法は、音声での指示だ。そのためには音声認識技術を発達させる必要がある。

地方の過疎地では、タクシーの需要が大きい。この技術が完成した暁には、無人タクシーが実用化する日も近いはずだ。無人ならタクシー業者の最大のコスト要因である人件費がほぼなくなるが、これは朗報だ。よって、無人タクシーが繁盛するように料金は例えば3割引などと安くすることができるだろう。無人タクシーの場合、最初はサービス員が必須で、タクシー乗場を定位置に設ける必要があるだろう。例えば駅にタクシー乗場を設けて乗客が来た時に、「次のタクシーは無人ですが、あなたは乗りますか?」とサービス員が尋ねれば、客が「いや、普通のタクシーにします」と答えるときは、普通のタクシーに乗せる。仮に無人タクシーを経験したい客が来れば「どうぞ、お乗り下さい。どちらに行かれますか?」と、サービス員は言うだろう。客の言う行先をサービス員が音声などで入力しタクシーを発車させることができる。問題は到着点で客は、ハッキリかつゆっくりと、「ここでOKです」と言うと、音声認識でタクシーが道脇に止まるような仕組みが必要になる。これがうまく行けば、次は大型輸送トラックだ。今や人手不足に悩む業界の経営を救える。大型トラックの場合、定点間を走るので行先の指示は容易になるだろう。

筆者が考えるに、上述のようなタクシーや大型輸送トラックへの応用を考えれば、何も珠洲市に限らず他の都市でも自動車メーカーが先を争って無人運転車の実用化を競うべきだ。噂では多くある大手自動車会社も菅沼准教授と同様の試験を秘密裡に行っている。表に出て来ないのには訳がある、当局の許可を取らずにやっているからだ、もちろん社内の私有地で試験をするには許可は不要だ。彼等の準備は着々と進んでいるのだろう、と考えれば自動車会社がクルマ専門でないグーグルなどに負ける訳にはいかない。

全自動運転車は多数のセンサーの情報を半導体がデータ処理するなど新しい半導体技術を必要とするので、多数の半導体の搭載とそれに伴う需要が大きく増加するものと期待する。全自動運転に必要な技術は、認知、判断、制御(操作)に集約される。例えば、信号のある交差点では信号が黄から赤になると、この変化を認知する。次に上で述べたように時速50km走行では、渡り切るための境界距離24.5mの目安を越えているか 否かを判断し、その結果でブレーキ操作をする、あるいはブレーキをかけずに走り去る、ことになる。そのために色センサー、色の結果を通信で伝える通信手段、判断のためのコンピュータ、さらにブレーキをかけるアクチュエータ などを利用する。全て、半導体を駆使して行う技術の例であると言える。

参考資料
1. Google Releases More Details on Self-Driving Car Accidents (2015/06/05)
2. 「珠洲に自動運転車 金沢大路上実験へ」、中日新聞、2015年2月22日

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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