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絶えずイノベーションを続ける米Apple社に学べ

米Apple社がイノベーション街道をばく進中だ。Apple Watchと称する腕時計モデルを最近発表しているが(参考資料1)、これは世界でも我が国でも一流時計メーカーが市販する腕時計の機能を大きく越える。筆者が理解する最も大きな違いは本格的にヘルスケアや、医療機器分野への進出を目指す点だ。各種センサを備え、歩いた歩数、歩行距離、消費カロリー、心拍数などを検出し、立ち上りモニターという機能もある。人が立ち上るという行為の頻度は健康を害した時に減るからだ。

その世界市場は、JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)の資料で、2,336億ドルという膨大な規模だ(参考資料2)。ただ、今の段階でApple Watch並びにその競合製品が医療分野に進んで獲得する市場シェアのパイがいくらになるかは、もちろんヤブの中だ。ただ、中国を始め発展途上の国が進展し中流層が増加する傾向は続くと考えられ、2,000億ドル越えのこの市場は、時間とともに間違いなく増加するだろう。次の成長産業がヘルスケァ分野にあることは明確だ(参考資料3)。

ヘルスケア分野進出を支える基礎になる電子技術を下記に羅列すれば、CPUを含む半導体、各種センサ、ロボットそれにAIと称する人工知能だ。これらテクノロジーの実力は劇的に増大する傾向にある。もちろん、半導体技術の貢献も大きい。特に値下がりする傾向が強い半導体は、今後ますますセンサと組み合わせて多く使わるだろう。例えばコンタクトレンズもその光学機能のみならずセンサとして、新しい機構を搭載することは知恵を絞れば可能だと、筆者は期待する。今は、杉花粉が飛散する季節だがアレルギーを起こす人は眼に入る花粉のかゆみに悩まされる。将来のセンサ具備のコンタクトレンズは、その花粉をカウントしCPUに報告できるようになるかもしれない、と筆者は思う。それを強化するためにAIベースのソフトウェアを開発して健康関連のデータを常時モニターする状況に発展すると良い。病状が深刻になる前に、立ち上がり頻度データをもとに医師を訪れてその診断を仰ぐか否か、客観的なデータが役に立つことになる。そのためにセンサのモニター結果をCPUにて計算処理にかけて結果を出し、Apple Watchがアラームを出す。

Apple社の具体的な戦略は企業秘密なのでわからないが大変に楽しみだ。イノベーション街道をばく進する同社に期待している。MacコンピュータのみならずiPod、iTune、iPad、iPhoneなど矢継ぎ早に画期的な新製品やサービスを世に出した。その結果、会社は大きくなった。大きな売上額と利益を計上し、株価が上がり株式市場から調達する資本金も運転資金も莫大になっている。このことが企業成長の基礎になるのだ。株式市場が評価する内容を表す数値は時価総額だ。その計算は容易で(株価×発行株数)である。

米Apple社の時価総額はどうなっているか。4月14日のその値は、7247億7000万ドルである。この値は堂々たる世界一だ。市場調査会社の180社が発行する世界時価総額ランキングによると、3月末時点での世界企業各社の時価総額は表1のようになる。


表1 世界企業の時価総額ランキング 2015年3月末 出典:180社
*バークシャハサウェイが正式名称 時価総額の単位は10億ドル

表1 世界企業の時価総額ランキング 2015年3月末 出典:180社


この時価総額のランキング表は、社名と国名も加えた。長くなるので筆者の興味ある企業のみに絞ったが、圧倒的に多いのはハイテクの業種であり、多い国家はアメリカ、次ぐのは中国だ。韓国の三星電子が善戦し29位、そして我が国トップのトヨタ自動車は20位だ。我が国企業は時価総額でもっと上位に着けてもよいはずだ。願わくは10位以内が望まれる。ちなみに半導体のトップインテル社は、1481億ドルで46位のポジションにある。

Apple社は、世界レベルの経営者を擁すべく努力をしている。残念ながら前任のCEOジョブスは、2011年に病魔に倒れた。ジョブスが自ら指名した後継者のティム・クックは、最初こそ手腕が危ぶまれたが、指名によく応えて時価総額を落とさなかった。即ち、Apple社の経営者の引継ぎは成功した、と言える。その優れたトップの元、マーケッティングをしっかりやって意欲的かつ戦略的な新製品を開発している。そして鴻海科技集団など、アジアの製造会社を使い、低賃金国で量産するビジネスモデルだ。新製品はマーケティングの成果かよく売れる。その新製品を連続して世に出すために優秀なエンジニア群などのミドルも必要だ。設計技師、プロダクトエンジニア、プロセスエンジニア、マーケティングや契約の交渉に力を発揮できるMBA出身者などだ。あらゆるレベルでビジネスは高度な戦略性が効果を発揮する。ゆえに優れたストラテジストも歓迎される。

このように考えると我が国の企業が米Apple社から学ぶ点は多いにあるように考える。日本にでは、創業者が元気だった頃のソニーが戦略性や先進性に於いて今の米Apple社に近い活躍をした、と筆者は考えるが、今の日本にそのような会社が生まれることは多いに期待される。


参考資料
1. 長見「Apple WatchはじめApple新製品発表への即刻の反応、波紋」 (2015/03/16)
2. 桜内「世界の医療機器市場〜医療機器ビジネス 海外展開の可能性」(2011/9)
3. 泉谷「3省共同オールジャパン医療機器開発が離陸!!〜半導体はヘルスケア端末に期待」 (2015/04/07)

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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